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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

はしたないですよ。

2017年05月06日(Sat) 07:34:37

はしたないですよ。
貧血をこらえながら、わたしはやっとの思いでそういった。
愛人を作ったらしい妻。
真夜中になってからおめかしをして出かける妻の後をそっと尾(つ)けていって、
相手の男の邸を突き止めて。
施錠されていないのをよいことになかにあがりこんで、二人のいる現場を抑えてみたら。
相手は、吸血鬼だった。
その場で血を吸われたわたしは、尻もちをついたまま。
くり広げられるふたりの愛の劇場を、否応なく見せつけられるハメになった。
夫のまえでヒィヒィ喘ぎながら、お尻を突き出す妻を見て。
わたしがそうたしなめたのは、むしろとうぜんのことだろう。

はしたないですよ。
吸血鬼の愛人は移り気で、始終ほかの女の尻を追いかける。
待ちぼうけを食わされた妻は不満そうだったが、
とことんつき合いつづけたら吸い尽されてしまうという現実だけは、よく理解していた。
相手もそれを慮って、相手を多数確保しているのだ。
「私一人を見てほしい。それが無理なら、せめて私も大勢にかしずかれたい」
思わず本音を口走った妻に、わたしはまたも同じ言葉をくり返すだけだった。
きっとまた・・・上の空で受け流されてしまうだろうことを、承知のうえで。

はしたないですよ。
望みどおり、なん人もの男をあてがわれた妻は、きょうも夫以外の男を夫婦のベッドに引き入れている。
自宅の玄関の前、夜這いの男がひっそりと佇むと。
妻は男を家にあげて、男にわたしを縛り上げさせて。
わたしは間男の欲求を遂げさせてやるために、夫婦のベッドを否応なく明け渡させられる。
そんな境遇にガマンできたのは。相手の境遇を知ってしまったから。
彼らもまた、吸血鬼に妻を寝取られたもの同士だったから。
たしなめたのは、妻のほう。
たしなめられたのは、わたしのほう。
奥さんを目のまえで犯されているのに、あなた勃っちゃっているのね。
ことさら眉を顰めて非難を向けるそのまなざしは、むしろ楽しげだった。

はしたなくは、ないかもね・・・
大勢の男が自分の身体を通り過ぎて。
妻はひとつのことを学んだらしい。
女に群がって来る男の大半は、たんに身体目あてなのだと。
いまでも、吸血鬼の犠牲となった人妻の夫たちのため、妻は週一でお勤めに励んではいるけれど。
昼間をいっしょにすごすのは、さいしょに作った愛人と、そして夫であるわたしだけ。
真剣交際なんだね。
吸血鬼との仲を冷やかすと、妻は「そういう言い方は、はしたない」と、言葉を切って断言したけれど。
「あなたと同じくらいにね」と、向こうを向いて呟いた。
「はしたないって、言うんでしょう?」
恐る恐る問いかけをした妻に、わたしは呟きかえしていた。

はしたなくは、ないかもね・・・


あとがき
ちょっと前に描いた「一体多数の関係。」の関連作です。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3443.html
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