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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ひとりを耐える。

2017年05月06日(Sat) 08:03:04

妻が、吸血鬼に犯された。
相手は、わたしのことをなん度も咬んだ男だった。
顔色を悪くしているわたしを気遣って、あとを尾(つ)けてきて、巻き添えのように難に遭ったのだ。
貧血でくらくらしてしまっていたわたしは、卑猥な猿臂から妻を救い出すことができなかった。
血を吸い取られてぐったりとなった妻がスカートをたくし上げられ、ストッキングをずり降ろされてゆくのを、
なすすべもなく、見せつけられてしまっていた。

つぎの日の夜から、妻は真夜中になるのを見はからって、わたしに黙ってひっそりと出かけていった。
スカートを着けるのは、裏地に淫らな粘液で濡らされるため。
ストッキングを脚に通すのは、卑猥な唇で舐め心地を愉しませるため。
そうと知りつつも、よそ行きの装いに身を整えて、しっかりとメイクまでして出かけていった。
あとを尾(つ)けたわたしは、ふたりの逢瀬を遠くから見守るだけだった。
血を吸う相手に過ぎなかったわたしの身体を気遣っていた吸血鬼は、妻にも親切だったから。
妻の身を気遣って血を吸う量を手かげんする愛人を、妻はさらに気遣って、「もっと吸って」と懇願していた。

吸血鬼が妻を誘うのは、週一の頻度だった。わたしのときで、懲りたのだろう。
毎日呼び出されていたわたしの機会はめっきり減って、妻と同じ週一に「格下げ」されていた。
健康を取り戻したころ、勘定が合わない理由にやっと気づく。
ご近所の主婦たちがなん人も、妻と同じ目に遭っているとわかったから。

彼はほかの女を大勢、相手にしている。
お前は彼だけでもいいの?
はしたないと思いながら、妻に訊いた。
隣の奥さんは、それが嫌だといって、ご主人の了解を取り付けたうえで、なん人もの男性を交際相手に選んでいた。
彼の話題になると、いつも目を伏せながら本音を語る妻。
そのときも羞じらいながら、口ごもりながら、直截な問いにたどたどしい答えを返してきた。

私はひとりで、いいんです。
だって、真剣交際のつもりなんですもの。

そのいじらしさを相手に伝えたわたしは、思い切ってつけ加える。

妻が自分の意思で始めた交際だから、わたしは咎めようとは思わない。
けれども、どうか妻を粗略に扱わないでもらいたい。
わたしにとっても、たった一人の妻なのだから。

それ以来。
妻の命がけの恋の逢瀬は、週一から週二に、格上げになった。
週に三度の逢瀬は貧血をもたらすもの。
時にはそれが三度訪れることに、いまでは夫婦ともに満足を感じてしまっている。


あとがき
前作との関連作です。
吸血鬼との交際を、晴れて夫に認めてもらった妻たちの身の処しかたを描いてみました。
相手は人の生き血を欲する身。
ひとりの女を守ろうとすれば、必然的に相手を吸い尽さなければならないことになるという宿命。
だから吸血鬼は、毎晩女を取り替えます。
けれどもひとりひとりの女には、女それぞれに意思を持っています。
命がけでもある交際をつづけるほどの真剣さを、相手にわかってほしいと願い、
あるものは大勢の男にかしずかれることを選び、
あるものはそれでも耐えて男の招待を待ち続けます。

本作では、そうした妻のいじらしさを、夫みずからが妻の愛人に伝えています。
妻が吸血鬼の目に留まって召されるということは、妻の生命を危険にさらすことでもあります。
同時に、本作のように吸血行為に愛の好意が伴う場合、夫が妻の願いをかなえようとするということは、
妻をほかの男にみすみす抱かせるという意味にすらなってしまいます。
そういう意味で本作の夫の行動は、あり得ない設定かもしれません。
でもそのいっぽうで、「妻のしんけんさを相手に伝えたい」という部分は、夫としてはまっとうな部分のような気がしないでもありません。

「夫ですらかなえてやりたくなるほどの、妻の真剣交際」
やっぱり、あり得ない設定ですね。 (^^ゞ


「一体多数の関係。」
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「はしたないですよ。」
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