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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

回帰。

2017年05月06日(Sat) 09:32:29

今朝の夜明けも、迎えたのは他人の家。
おなじ寝床にいるのは、他人の妻だった。
スーツ姿のまま転がった女は、俺に弄ばれるままに衣装を乱して、
上品なタイつきブラウスのえり首のすき間から、おっぱいをだらしなくまる見えにさせている。
夜明けのことだから、旦那はとっくに帰宅しているはず。
それでも気配さえみせないのは、すべてを察して別室で寝(やす)んでいるからなのだろう。
あるいは案外、俺たちがまぐわう様子を、隣の部屋からのぞき見して愉しんでいたのか。
そういえば。
ふすまが細めに開いているのは、女が大雑把なためではないのかもしれない。
大雑把な女はあそこの締まりも悪く、その旦那は寝取られマゾ。
いや、彼らを責める資格など、俺にはない。
俺も夫婦にとりついた吸血鬼の欲望のまま、妻を諦めざるを得なかったのだから。

夫婦ながら血を吸われた俺は、妻に真剣に惚れたという相手の言いぐさを話半分に聞きながらも、
妻が俺の側ではなく愛人の傍らに恋人然として腰をおろした現実に、ちょっとだけショックを受けていた。
これからは、妻を邸に迎え入れ、住み込みのメイドとして雇い入れるという。
だから今、妻は家にはいない。
出勤の支度のために戻る家は、がらんどうの空間。
その見返りに俺は、おおぜいの女をあてがわれた。
よりどりみどりだぞ。
吸血鬼は好色な男という、俺と同じ高さの目線を俺に注いできた。
人から妻を奪いながらも、ヤツは妻のことを賞賛し尽して、そんな妻を勝ち得たきみを尊敬する、とまでいった。
そして、妻以外の女を相手にするのは妻が貧血を起こさないためだと弁解した。
尊敬も弁解も話半分に聞き流したが、ヤツに悪気がないのだけは、認めてやってもいいような気がした。
いいじゃないか。人妻熟女、よりどりみどり。それ、ちょっと面白そう。
あんたが飽きたら女房をうちに帰してやる。
捨て台詞のように用意された逃げ道に知らん顔をしながらも納得をして、俺は新しい環境を受け容れた。

訪ねていった家では、つねに歓待された。
なかには、亭主まで歓待する側に回っていた。
ある家では亭主自ら自慢の手料理でもてなしてくれて、
自分は自分で用意した上質のワインで酔っ払ってぐーすか寝てしまい、
その間にこちらが奥さんを押し倒す・・・という段取りまで用意してくれたりするのだった。
今朝目ざめたこの家の旦那は、堅い勤め先のサラリーマンのせいか、さほど人好きはしなかったけれど。
自分の妻が他の男と寝るときには、決して邪魔だてしない節度を持ち合わせていた。

だれもいない自宅をそそくさと後にして、勤務先に向かう。
いつもどおりのおざなりな会議、ミーティング。そのあとは得意先への訪問。
きょうの行き先は、地元の名門校だった。

この学校は吸血鬼の受け入れを表明していて、校内には生徒の生き血を求めてなん人もの吸血鬼が出没するという。
そう聞くとひどくブッソウなところのように聞こえるけれど、なんのことはない、一見した限りはふつうの学校で、
いやむしろ、ふつうの学校よりも清潔感があふれていた。校舎にも、生徒たちにも。
窓口をつとめる数学の先生も、妻と年頃の娘とを、吸血鬼に奉公させているという。
いや、そればかりか、先生の奥さんとはなん度か、寝たことがある。
銀ぶちメガネの似合うカッチリとした顔だちのこの先生と、どうやって知り合ったものか、
奥さんはお目目ぱっちりの色白女で、むっちりとしたおっぱいや太ももがたまらない、セクシー人妻。
この顔で40かよ?という雰囲気で、俺はいっぺんに魅了された。
当然希望者も多く、ひと晩に2~3人相手をすることもあるという。
「本命の吸血鬼さんがモテてモテて、なかなか相手してくれないの。
 だからあたしも、いろんな男にかしずかれるの」
輪姦もOKよ、と、あっけらかんと語る能天気な笑顔が、
目の前でこまごまとした商談をつめているその夫の几帳面な顔に、二重写しになった。
いかん、いかん。もっと仕事に集中しよう。

先生は俺と奥さんの関係を知っている。
だって毎晩、妻の痴態を覗いているんだから。
でもお互いにそんなことは、もちろんおくびにも出さない。とくに仕事中は。
それでも俺は帰り際、意外に酒好きな先生の好みの銘柄を確かめるのを忘れなかった。
せいぜい、贈り物くらいは奮発しないとな。

その晩の奥さんは、真向いに住んでいるご一家の主婦。
吸血鬼に魅入られる前から、きれいな奥さんだな、とは思っていた。
いや、妻に気取られ冷やかされる程度の関心を持っていた。
隣家の奥さんと浮気するというのは、男のロマン・・・と、勝手な理屈をつけてあがり込んだのは、
うちに続いて向かいのお宅も吸血鬼を受け容れたと知ったから。
もちろん、妻を預けっぱなしにしている吸血鬼に仁義を切ったうえでの話だが。
隣家は便利だ。
夜明けを迎えたらすぐ、出勤の支度に戻れるのだから。
奥さんのきれいな家は来たがる人も多いから、そうそう入りびたりになるわけにはいかないけれど。

「ゴメンね。外でできないかな」
まだぎりぎり20代の奥さんは、ちょっと恥ずかしそうにそういった。
折よく、隣家のそのまた隣は、空き地になっていた。
放置された空き地は恥ずかしくなるほどオープンで、周りの家からもまる見えになるはず。
ちょっとスリルがあって、良いかも。
俺は即座に承知をすると、スーツからふだん着に着替える手ももどかしく、
自宅の玄関前に佇んで俺を待つ奥さんの手をひいて、裏の空き地にまわった。

もうちょっと暗くなるまで、待とうよ・・・
まだ夕闇がじゅうぶん濃くなっていないのを気にした奥さんが、うろたえたような顔をして、周りをきょろきょろと見回している。
自分から言い出したことなのに、なにをいまさら小娘みたいにためらっているのか。
せめて、エプロン取らせてください。
精いっぱいのそんな時間稼ぎすら、俺にとってはもどかしい。
だって股間はもうギンギンに逆立ちをしているのだから。
いいじゃないか。俺もいちど、エプロン妻を犯してみたかったんだ。
こんなの、旦那が見たらはらはらするだろうな・・・と思いつつ、
しきりにご近所の視線を気にかける奥さんの手や肩をつかまえて、強いてその場に寝転がさせた。
やだ・・・みんな視てる・・・
もう、あんたの言いぐさなんか、俺をそそる効果しかないんだよ。
重ね合わせた唇は、本人のためらいとは無関係に、熱くほてっていた。
俺は余裕しゃくしゃく、パンツを脱ぐと、女の穿いているパンストを脱がせにかかった。

「そろそろいいかな?」
俺の下で女が囁いたころには、あたりは真っ暗になっていた。
1時間、いや、2時間くらいいっしょにいただろうか?
周囲の家々からの視線も、もう感じられない。
さいしょのうちは好奇の視線を送っていても、夕刻はどの家も忙しい時間帯。
そんなことばかりにかまけてはいられないのだ。
人のことなどに構っている暇もない日常が、どの家庭にも待ち受けている。
案外その日常とやらも、そのうちの何軒かでは、吸血鬼を交えた日常かも知れないけれど。

女のくぐもった声が、もういちど俺の欲情に火をつけた。
「もう一回だけ、いいかな?」
女は俺に、逆らわなかった。
むしろ進んで受け入れて、熱っぽいほとびを俺が吐き尽してしまうまで、積極的に腰を振って応えてきた。
だんなともいつもこんなふうにしているのかな。
俺のたわごとには答えずに、女は言った。

そろそろいいかな?じつは主人、熱を出して寝ているの。


それから長いこと、俺はひとり残った空き地で大の字になって、星空を見あげていた。
女はとっくに家に戻って、いまごろ主婦の日常に戻って夫の看護をしているらしい。
家から洩れてくる細々とした灯が、そんな想像を容易にさせた。
さいごにあんなに腰を振ったのも、決して男好きな人妻だからではない。
手っ取り早く俺にフィニッシュさせて、旦那のつききりの看護に一刻も早く戻りたかったからなのだと、
いくらぼんくらな俺にもすぐにわかった。
なんだか、ただたんに女の身体と身体を重ね合わせているだけの日々が、むなしくなってきた。
さてと、帰るか。
だれもいなくて灯もついていない、自分の家に。


家のなかは真っ暗で、いつものようにがらんどうな感じがした。
妻が置いていった読み止しの女性雑誌が、そのときのままにマガジンラックに突き刺してあった。
家を出ていく時、羽織っていた緑のカーディガンを脱ぎ捨てて、
ソファに畳んで置いていったのが、まだそのまんま置きっぱなしになっている。
テレビの台には観ないまま行ってしまったDVDが積み重ねられ、
キッチンには俺のためにまとわれることのなくなったエプロンが、抜け殻のようにぶら提げられている。
きょうにかぎってどういうわけか、妻のものばかりが、目につくのは、どうしてだろう。

リビングの隣の和室に並べてあるのも、妻ゆかりのコレクション。
初めて襲われたときに着ていた、襟首に血のついたままのブラウス。
その時に妻の脚から抜き取っのだと自慢をしながら、ヤツが俺に手渡してくれたストッキング。
俺に隠れて逢いに行っていたとき、好んで身につけて行ったよそ行きのスーツたち。
結婚記念日に買ったスーツも例外ではなかったし、喪服なんかも着ていきやがったんだ。
玄関には、きちんとそろえられた黒のパンプス。
外出先から戻ると決まって置く癖になっていたイスには、気に入りのハンドバッグ。
台所仕事をする前には、いつも身に着けている結婚指輪を必ず外して、テレビの上の小皿に、こんなふうに入れていた。
―――?
ふとわれに返って、傍らを観ると。
真っ暗な部屋でひとり、出ていったはずの女が無言で佇んでいた。
「さっき戻ったのよ。ただいま」
妻はリビングの灯りをつけて、いった。
「遅くなったけど、晩御飯作るわね」
そして、ソファに置かれた緑のカーディガンをいつものように羽織って、台所に向かおうとした。

どういうことなんだ?
愚問と知りながら、訊かないわけにはいかなかった。
帰ってきてあげたのよ。しょうがないから。
強がりの時にはいつもそんなふうに言いっ放す、投げやりな調子。
ああ、そういうことか。
飽きられたんだよな?
面と向かって投げつけた言葉に、妻は口をへの字に曲げて、フンとふて腐れた顔をして、
それでもいつものように口ごたえしないで台所に向かってゆく。

蛇口からひねった水が勢いよく流れる音をたてながら、妻はいった。

捨てられたんじゃ、なくってよ。
そろそろ帰ってやれって、言われたのよ。あのひとああ見えて、案外気を回すのよね。
こんどから、通いで来いって。
でも、気が向いたらまた戻るかもしれないわあ。
メイドさんって言ってもたいしてやることなくて、うちのほうがよっぽど忙しいんだもの。
それに、旦那に追い出されたらまた戻って来いって言われているの。
私・・・悪い奥さんだし・・・追い出されちゃうよね・・・?

いや、いてもいい。
俺はとっさにそう返した後、すぐに言い直す。

いてくれ・・・・・・いて下さい。

気がつくと、俺の腕のなかに妻がいた。
どうして抱きしめてなど、しまったのだろう?
ちょっと不安げな面差しが、ちょっぴりいつもらしくなかったから?
いやきっかけというのはしょせん、引き金でしかないのだろう。
抱きしめると抱き返してくるその女は、まだ愛し合っていたころの妻そのものだった。
やっと戻って来てくれるまで。
やっと戻ってくるまで。
この夫婦は、入り組んだ迷路を遠回りしなければならなかったのだろう。

かん違いしないで。
私、あのひとの愛人なんだから。
気が向いたらお誘いに乗るし、抱かれてくるわ。
それでもあなた、私のこと愛してくれる―――?

言葉の代わりに重ね合わせた熱い接吻は、さっき空き地でしたそれとは、まったくちがうのものだった。
妻は「ずるい」と言いながらも、いちど離れた唇をもういちど、重ね合わせてきた。


あとがき
思わず長くなっちゃいました。 (^^ゞ
描いている最中に、「杜子春」みたいなお話だなあと思いましたが、いかがなものか。 (⁻_⁻)
今朝のお話はすべて、入力画面にじか打ちで描きました。
こういうスタイルで描いているときは、ノッているときなんですね。
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