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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

気丈な姑 7

2017年05月08日(Mon) 05:47:47

妻の献血相手の吸血鬼は、もとは息子の嫁の愛人だった。
首尾よく息子をたぶらかし、まだ婚約中に嫁の新床までゲットしてしまった男。
それでも息子は彼のことを憎んでいるようすは、さほどない。
むしろ、大切なものをプレゼントするほどの、大切な関係なのだと割り切っていて、
吸血鬼が嫁に手を出したことさえも、「うちの美那子がお目にかなって嬉しい」とまで、受け取っているようだった。

なにも知らずに二人の間を咎めに行った妻は、それまでの貞淑なレディとして帰宅することはできなかった。
ストッキングを穿いたご婦人の脚に好んで咬みつくというこの吸血鬼は、
嫁の浮気を咎めに来た姑の穿いているストッキングにまで、見境なく目の色を変えたのだった。
妻は四十代ぎりぎりの熟れた血潮をたっぷりと吸い取られ、
その見返りに、スカートの奥を濡れ濡れにするほどに、愛情のこもった淫らな粘液をたっぷりと、そそぎ込まれて戻ってきた。
「私の血まで、気に入ったみたい」
妻はきまり悪げに、そう言ったものだった。

気丈な妻はそれでもくじけることなく、新婚の息子のために、嫁と吸血鬼とを別れさせようとした。
けれどもそれは、空しい努力に終わってしまった。
そう、さいしょのときにもう、勝負はついていたのだから。
「きょうも叱ってやりますわ」
そういいながらウキウキとおめかしをして出かけていっては、吸血されて抱かれてしまう日常が、くり返されただけだった。
怒ったり嫉妬したりするいとまもなかったのは、夫のわたしまでもが、早い段階で仲間に引き入れられてしまったから。
滋養分補給のために私までもが献血を強いられて、
もーろーとなって居間の隅っこで横倒しになったまま、
息子が未来の花嫁の純潔をプレゼントしてしまったときと同じように、
妻が生き血を吸い取られ、あげくの果てに犯されてしまうのを、
そしてその行為が単なる凌辱行為にとどまらず、熱っぽい愛の劇場と化してしまうのを、
さいしょはばかみたいにぼう然としながら、
さいごのほうでは、不覚にも。
妻がヒロインのエロシーンを、ただの男として堪能し尽してしまっていた。

きょうも「あのひとを叱ってやるの」と言い残して、妻はウキウキと出かけていった。
「口にするのも恥ずかしいことだけど。彼、ストッキングフェチなのよ。
 美那子さんも、もう何足も破かれているんですって」
口では憤然としながらも、自身も真新しいストッキングを脚に通して、出かけていった。
さいしょにお逢いしたときは、穿き古しだったの。そういう恥は搔きたくないの。
あなたもヤでしょう?奥さんが恥掻くの。
そういいながら、すでに彼女が破らせたストッキングは、もう1ダースにもなっただろうか?

「美那子さんよりも罪は軽いわ。だって、私もう子供を産む齢ではないんだもの」
そういって、ご近所の評判になっても恥ずかしくないと公言していて。
いや、こっちのほうがよほど、恥ずかしいんだけど・・・
さいしょのうちこそそう言いたくてたまらなかったわたしさえ、いまでは彼女のペースに呑み込まれてしまっている。
世間では、わたしのようなのを、だらしのない夫と後ろ指を指すのだろうけれど。
むしろわたしは、わたしの倍くらいは齢をとっているらしい彼のため、
妻への老いらくの恋を好意的にかなえてやるほうに、心を傾けはじめていた。
近田家の名誉に多少の傷がついたとしても、
妻が若返ることのほうが、ずっと貴重な気がしてきたから。

「私は身代わりなのよ。貴志には早く、後継ぎをつくってもらわないとね」
女は自分を正当化する天才だ。
息子のために嫁の貞操を守るため、身をもって犠牲になろうというわけだ。
そんな姑の気遣いとは無関係に、浮気な嫁は姑のいない隙を狙って情夫と逢っているのをわたしまで知っているし、
息子さえもが、「彼の子だったら育てるよ」などと、のん気なことを口にする。
それに今では、妻のほうが。
彼のお召しの回数がじつは多いのだと、嫁はこっそり教えてくれた。

嫁がわたしにそんなことを囁いたのは、女ならではの悪意からかもしれないけれど。
「どうせなら、深く愛してもらったほうが良いじゃないですか」
と答えたわたしに、口をぽかんと開けて、あっけに取られているようだった。
「返り討ちにしたのね。あなた、やるじゃない」
帰宅してきた妻にそのやり取りを利かせると、ティーカップ片手に小気味よさそうに彼女は笑った。
ひざがまる見えになるほど伝線しているストッキングと、ぬらぬらした粘液を光らせたスカートのほうが、
わたしにはよほど、気になっていたのだけれど。

姑の気遣いも空しく、嫁の行動はエスカレートしていった。
吸血鬼の愛人の座を降りた彼女は、法事の手伝いと称して、お寺通いを始めていた。
そのお寺に集まるのは、街に出没する吸血鬼たちに妻を寝取られた、数多くの夫たち。
彼らの気をまぎらわせるために、吸血鬼が用意した気晴らしの場。
彼が希望者を募ったとき、嫁は真っ先に手を挙げたという。
「新婚妻は貴重だって言われたの」
息子の貴志にそう告げたときにはもう、なん人もの男に抱かれた後帰宅してからのことだった。
妻が嫁の身代わりにと潔(きよ)かった貞操を捧げつづけているあいだ、
嫁は大勢の男性にかしずかれる愉しみに耽ることで、その好意を浪費したのだった。

妻はきょうも、お誘いを受けて出かけてゆく。
わたしはそれを、「彼によろしくね」といいながら、送り出してゆく。
「私――美那子さんから、彼を奪っちゃったのかしら?」
そんなことを口にしながらも、嫁のことも夫のことも、さして気には留めていないようだった。
妻は、新婚の息子のために嫁のことを身をもってかばおうとした、淑女のかがみ。
わたしは、吸血鬼が人妻に寄せた老いらくの恋を好意的にかなえてやった、夫のかがみ。
このごろはどうやら、そういうことになっているらしい。

吸血鬼の呼び出しに応じる日でも。
それが平日ならば、勤めに出かけるわたしを送り出してから、出かけることにしているようだ。
けれどもこちらは、エプロンの下に着ている服がきちんとしていれば、彼女の意図が容易にわかる。
今朝のエプロンの下は、結婚記念日のプレゼントにしたワンピース。
わたしの稼ぎで買った衣装に包まれて、その衣装もろとも愉しまれてくる妻を送り出すわたしは、
きょうも彼女のストッキング代を稼ぐため、何食わぬ顔で出勤してゆく。
「あなた、行ってらっしゃい」
「あとをよろしくね」
どこの夫婦も交し合うような、そんな言葉を口にしながら。


あとがき

ちょっと前にあっぷをした、「気丈な姑」シリーズです。
息子の嫁の身代わりにと貞操を差し出した悠子さん。
そんな悠子さんのちょっと片意地でひたむきな恋に理解を示すご主人。
前々作では、吸血鬼と連れ立って歩くところを目撃された知人の女性の嫌味を軽く受け流した悠子さん。
「でももう、何も怖くない。私は平気」
と開き直っています。
(「気丈な姑 5」 http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3439.html
かたや嫁の情夫との奇妙な恋を穏やかに受け容れている夫さん。
できてしまった事後ではあるけれど、
「末永い交際を」と、吸血鬼と奥さんとの仲を自ら取り持とうとしています。
(「気丈な姑 2」 http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3435.html
「私よりもよほど逢っている」と告げ口をしたお嫁さんに対しても、「深く愛されたほうが良いと思う」なんて、お応えになっています。
夫唱婦随(婦唱夫随?)というべきか。「どっちもどっち」というべきか。
なんにせよ。
仲の良いのは、なによりであります。
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