fc2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

狩られた男女

2006年07月07日(Fri) 07:46:45

日本人ばなれした彫りの深い横顔に冷たい笑みを滲ませながら、
その美少女はハンドル片手に携帯電話を離さない。
「そう。ひとりは女。残念ながら、いつものだよ。
 それからもうひとりは新人さん。男の子だけど若いから、そこそこ愉しめるかも」
凛と響く澄んだ声色は、後部座席の二人の運命を冷酷なまでに淡々と伝えている。
「女のほうは問題ないわ。男のほうは・・・そうね。
 口止めできそうだったら放してやることにするわ」
電話を切ると少女はこちらをふり向いて、ニッと笑った。
軽トラックのなか、はめられた鉄格子を隔てて。
荷台に載せられぐるぐる巻きに縛られた二人は、
たがいに干渉し合うこともなく、それぞれ離れ離れになって、
冷たいシートに腰を落としている。

「さあ、連れてきたわよ。好きになさいね」
女とは思えないほどの強い力に引っぱられて、
二人は荷台から引きずりおろされた。
女はそうしたあしらいに慣れているのか、かろうじて膝を曲げ、
服を汚さないように着地したけれど。
初めてだった男のほうは、もろにひざを突いてしまっていた。
「運動神経に問題ありそうだな、兄ちゃん」
二人の周囲に群がる影どもから、哂いが洩れる。
「いいじゃないの。優しくしてくれるんだから」
美少女は口を尖らせて影どもを黙らせると、
持っていたバックから注射器を取り出した。
「動かないで。痛くないためのおまじないをしてあげる」
そういってまず、ノースリーブのワンピースを着た女の二の腕を掴まえると、
おもむろにぐいっと針を刺し込んだ。
女は反射的にキュッと目を閉じて、それでもなされるままにしている。
なかの透明な液体が体内に注入されて、見返りに赤黒いものが、ぐぐっ・・・と抜き出される。
注射針を口に含んだ美少女は、唇をすぼませて。
ちゅうっ。
音を立てて旨そうに、中身を吸い出していた。
道端で摘み取った果物をほおばるように、こともなげに。
「おい、華・・・お前ひとりだけ、ずるいじゃないか」
口を尖らせるのは、今度は影どものほうだったけれど。
華と呼ばれた美少女は、「役得よ」といわんばかりに、相手にもしていない。
「つぎはあなたの番よ。暴れないでね」
華の美貌に浮いた清らかで無邪気な笑みのなかに、
抗いがたい魔性を見出して。
男はびくっと立ちすくみ、行為が終わるまで身じろぎひとつできないでいた。

「夫婦ものかい」
年かっこうの似ている二人を見比べて、影のなかの頭だったのが華に訊いた。
「ううん。べつべつのとこで掴まえてきたもの」
「じゃあ、兄ちゃんにいちいち断る必要はないわけだな?」
「ウン、そうする必要はないわけだよ」
華は男口調で応じると、
「そのほうが、よほど愉しめたかな?こんどは夫婦づれを狙おうか」
影どもがざわっ、と陰気な哂いをはじけさせる。
「じゃ、手っ取り早く、済ませようか」
ぞんざいな口調が、手慣れたようすを見せつける。

影どもが女をとり囲んで、そろそろとにじり寄る。
女はこれからわが身に訪れる受難を見まいとして、キュッと瞼を瞑っていた。
厭うような面持ちが、影どもをいっそうそそらせたらしい。
ノースリーブのワンピース姿はたちまち彼らにおし包まれて、男の視界から遮られた。
「あっ、痛うぅ・・・っ」
女のうめきを、確かに聞いて。
ふと振り返ると華がふふん・・・と笑った。
「おまじないのこと?かわいいわね。あなた。信じてたの?」
ひいっ・・・ひいっ・・・
喘ぎながら咬まれてゆく女を横目にちらと見やって、
「あれはね。血が美味しくなるおまじないなのよ。あなたも観念してね」
ちょっとだけお茶しましょ。
そんなふうに聞き違えるほどさりげなく。
「血を吸わせてね」
美少女はスッ・・・と、寄り添ってきた。
そのときだけは、恋人のように、慕わしそうに。

はじめてのキスは、首筋だった。
「あら。案外弱いのね。もうノビちゃうの?」
華は興ざめ・・・といわんばかりに、男の体をつよく揺すぶる。
「もう少しくらい、がんばってね。ほかにもお友だち、おおぜいいいるんだから」
女は口許を赤く濡らしたまま、男が楽な姿勢を取れるようにと、草地に寝かせてやっている。
血の味はいろいろなことを嗅ぎ分けたらしい。
「へぇ。その年で童貞なんだ。かわいいわね」
華は男の顔をのぞきこんだ。
可愛い笑みは、さっきから変わらない。
ちらちらと妖しくなってきた視界に美少女の笑みをとらえると、
男は半分の恐怖と、半分の愉楽を滲ませて、女の顔を仰ぎつづけている。
「ちょっとだけ、いい気持にしてあげるね。お礼のつもりだから、遠慮なく受け取って」
くつろげられた腰周りに、生暖かくすべすべとした肌が、ぬるりと慕い寄ってきた。

絞り取られるような・・・
しつようなうごめきに酔わされながら、男は周囲を虹が彩るような錯覚を覚える。
女のなかにびゅうびゅうと吐き出してしまいながら。
それを女がさっきむしり取った血とおなじくらい、ひどく歓んでいるのを感じていた。
怒張したものがほどよい硬さに収まるまで。
華は絞り取ることを、やめなかった。
なおもすがりついてこようとする男の腕からするりと抜け出すと。
「お愉しみはおしまい。あとはお仕事、つづけてね」
そういうと、自分の場所を影どもに譲っている。
大の字になった無防備な半裸に、影がふたつもみっつも、群がってゆく。

頭の芯が、じんじんとしている。
宿酔にちかい頭の重さを感えたが、決して不快なだけではない。
身体じゅうをぐるぐると、火の玉のようなものがかけめぐり、
涸れかけた血管を火照らせている。
傍らの女も同じ気分らしい。
ちょっとウットリトしたような顔をして、
力の抜けた肢体を男に寄りかからせている。
「さあ、ここだ。じゃあな」
また迎えに来たら、ちゃんと大人しく乗るんだぞ。
軽トラックを運転してきた影のひとりはそう呟いて。
男も女も無表情に頷くのを確認すると。
ぶおおおん。
軽くエンジンを轟かせて、瞬時に視界から去っていた。

間の悪いひと刻が流れた。
女も男も、互いにどうあいさつしてよいのか、戸惑っている。
ともに、あの妖しい儀式が通り過ぎた身をさらし合った仲。
並んで寝かされた草地のうえ。
いくたりもの衝動が、ふたりの上におおいかぶさってきた。
たがいの身じろぎを身近に感じながら。
助けることも、声をかけることすらかなわずに。
熱っぽく過ごした、忘我の刻・・・
見ると、女のワンピースはところどころ裂けている。
服を着たまま身体のあちこちを咬まれたのだろう。
かすかな血を滲ませた衣裳の裂け目からのぞく素肌が、ひどく妖しく白く艶めかしい。
さらりと肩を流れる黒髪に、女を感じていた。
「あの・・・」
男は瞬間、女の肩を捕まえた。
「エ・・・」
女は意外なくらい抵抗なく、力の抜けた手を男に預けていた。
男は女の手を取って、傍らの草むらへといざなってゆく。
まだ、夜のとばりがすべてを塗りこめていた。


あとがき
「夫婦ながら襲えるじゃん」
ティーカップを片手に、華は嬉しげにうそぶいていました。
前の記事
再あっぷ分を元のさやにおさめてみたら。^^;
次の記事
夜の女と吸血鬼

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/346-46170ff6