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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

「いいとこをみんな持っていかれる」と、ひとは言うけれど・・・

2017年08月23日(Wed) 07:33:36

会社の同期、島原郁代は、ぼくの婚約者――
彼女が社長室に呼ばれた・・・と聞いたみんながヒソヒソ声で、それでいてぼくに聞こえよがしに囁いている。

「聞いたかよ?島原が社長室に呼ばれたって」
「ウチの社長、女子社員が結婚すると初夜権を行使するんだろ?」
「初夜権・・・って、何?」
「知らねーの?花婿より先に、花嫁を姦っちゃう権利のことだよ」
「うそー。今でもそんなのあるの?」
「ウチの会社、体質が古いからな」
「あぁ~、郁代ちゃん姦られちゃうんだ!花町のやつ、それ知ってんの?」
「あらかじめ聞かされてんじゃない?因果を含められて、社長に婚約者の処女を進呈・・・」
「それ、なんだかいいね・・・ウフフ・・・」

社長に申し渡されたのは、きのうのこと。
「結婚おめでとう。
 わかっていると思うが、 わが社の社則で社員同士の結婚の際は
 女子社員に社長から特別の贈り物がある――わしの精液だ。
 きみは終始、知らん顔しているんだぞ。
 みんなもそうするのが、社内のルールになっているんだからな」

「花町さん、社長がお呼びです」
秘書室の桜貝姫子がぼくのところにきてそういうと、みんながいっせいに、ぼくのほうを見た。
背中越しに、ヒソヒソ声がした。
「いよいよクライマックスか・・・あいつ、社長と花嫁が姦ってるところ、見せつけられるんだぞ~」
「結婚後も社長の気が向いたら呼び出して、新妻を餌食にするんだってさ」
「給料を稼ぐために働く旦那の隣室で、嫁は婚外セックス・・・すげぇ」
「かわいそ~。いいとこ全部持ってかれるんじゃん」

さいごのひと言が、ぼくの胸を刺した。「いいとこ全部持っていかれる」

でも・・・
じつはいいとこを味わうのは、社長だけではないのだ。
社長との愛人契約にサインさせられた郁代は、いまごろ社長室で迫られてる真っ最中のはず。
そして僕は、同僚たちの予測(期待?)どおり、社長室に入ると秘書の桜貝にぐるぐる巻きに縛られて、
郁代が処女を奪われるところを見せつけられる――
でもそれは・・・
ぼくが心の奥底で切望していた光景なのだから。

花嫁の処女を勝ち得るのが花婿の権利のはずだけれど。
花嫁が処女を奪われるのを目の当たりにするのは、ぼくみたいなマゾ男の願望。
社長はいま、ぼくの願いをかなえてくれようとしている・・・
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