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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

迫られて 仲良くなって。

2017年08月28日(Mon) 05:28:58

子どものころ、吸血鬼に誘拐されたことがある。
彼は父さんよりも年上の老人で、ぼくの首すじに食いついて、貧血になるほど血を吸った。
そして、ぼくから家の電話番号を聞き出すと、すぐに母さんに電話をかけた。
隣室からの話し声は切れ切れだったけど、こんなことを言っていた。
「息子さんを預かっている。お母さんが迎えに来るまで、血をたっぷりいただくことにする。
 あんたの息子さんの血は美味いな。
 久しぶりに、いい獲物にありついたよ。
 子育て、ほんとうにご苦労さん。
 わしが吸い尽さないうちに、間に合うと好いね。
 ・・・それでもやっぱり来るのが・・・母親の務めというものではないかね?」

母さんはすぐに、迎えに来てくれた。
よそ行きのスーツをぱりっと着こなして、ぼくの目にも眩しく映ったけれど、
吸血鬼の目にはもっと、眩しく映ったようだった。
吸血鬼は母さんになにかを囁き、母さんはちょっとためらったものの、目を瞑って応じていった。
さっきまでぼくの血を強欲にむしり取った唇が、母さんの首すじにジリジリと、近寄せられていく。
「あッ!ダメだッ!いけない・・・ったら・・・っ・・・!」
ぼくの絶叫にもかかわらず、ふたりはそんなものはまるで聞こえないかのように振る舞った。
飢えた唇が母さんの白い首すじに這って、鋭い牙に侵された素肌からは、バラ色の血が飛び散る。
「あああ・・・」
悲しげなため息をひと声洩らして、母さんは姿勢を崩し、その場に横たわっていった。
ウフフ・・・吸血鬼は逆に、嬉しげだった。
吸い取ったばかりの母さんの血でヌラヌラと光る唇に、にんまりと笑みを浮かべると、ぼくのほうをふり返って、
「さすがはきみのお母さんだ。佳い血をお持ちだね。
 これからわしのすることを、じっくり見届けるがいい」
そんなふうに言い捨てると、倒れている母さんの足許に、かがみ込んでゆく。
肌色のストッキングに包まれたふくらはぎに、忌むべき唇がヒルのように吸いつけられる。
そのままひと思いに咬もうとはしないで、男は母さんの穿いているストッキングの舌触りを愉しむように、その脚のラインを唇でしつように、なぞっていった。
男の劣情に屈服するように、上品なストッキングが、皺くちゃに波打ちはじめた。
「ウヒヒ・・・いい舌触りだ・・・」
男の洩らした随喜のつぶやきは、母さんの耳にも届いたらしい。
かすかに眉を寄せ、嫌そうなしかめ面になりながらも、
失血で身体が動かないのは、ぼくと同じらしくって、
ただそのまま、男の狼藉を受け容れてしまうしかなかったのだ。
カリリ。
男の牙が、母さんのふくらはぎに埋め込まれた。
ウッとうめいてかすかに身じろぎしただけで、
そのまま生き血を吸い取られてゆくのを、もうどうすることもできなくなっていた。
ぼくもまた、同じくらい失血にあえいでいて、
吸血鬼を前にむざむざと大人しくなってゆく母さんのことを、救い出すことはできなかった。
男は毒液の効果を試すように、左右両方のふくらはぎに、代わる代わる牙を埋めて、
そのたびに母さんが「ウッ・・・」とかすかなうめき声をあげる。
伝線だらけになったストッキングをむしり取るようにして足首までおろしてしまうと、
男は母さんの身体にのしかかって、ブラウスの胸元を強引に押し拡げていった。
母さんはなにかを覚悟したように、すべてを甘受するかのように、さいごまで身体を動かそうとはしなかった。
スカートを腰までたくし上げられた母さんは、太ももを割られた格好のまま、
太ももの間に腰を割り込ませて、強引に上下動させてくるのを、ただゆらゆらと受け止めてゆくばかり。
けれどもやがて、白い歯をみせ、接吻の要求にすすんで応じ、
受ける一方だった腰の上下動に、自分から動きを合わせていった。
キスの意味だけはかろうじてわかる程度の年頃だったぼくにも、
男がしつような愛情を強要し続けて、母さんがそれを受け容れてしまったことを、わからずにはいられなかった。

別れぎわ、男はぼくの頭を撫でて、「良い子だ」といってぼくをほめた。
母さんを虐げられるのを目の当たりにしながら、歯向かわなかったから「良い子」だったのか。
美味しい血を素直に吸い取らせてしまったから「良い子」だったおか。
母さんが犯された後も男の渇きを満足させられたとき、つい気持ちよくなってしまって、頬をゆるめて白い歯を見せたから「良い子」だったのか。
とうとうわからなかった。
母さんにはむしろ事務的な口調で、「つづきはまた」と、言っただけだった。
母さんもかすかに肯いて、こたえただけだった。

帰る道すがら、母さんがぼくに言った。
「きょうのことは、父さんには内緒にしとこうね」
ぼくは黙って、頷いていた。
「母さんね・・・」
ちょっとだけ言いよどんだ母さんは、たぶんさいしょに話そうとすることと別のことをぼくにいった。
「女のひとってね、最初は嫌だと思っていても、その場で迫られると、仲良くできてしまうものなのよ。ユウくんも気をつけなきゃね」
注がれるまなざしは、母親のそれではなくて、たしかに大人の女性のそれだったのだと・・・ぼくはなんとなく、記憶している。

それ以来。
男はときどき、通りすがったぼくの前に立ちはだかって、「きみと仲良くしたい」といった。
ぼくは抵抗もしないで男の後について行って、
男の屋敷や、道ばたの納屋に引き込まれて、ハイソックスを履いた脚を舐め尽させていた。
ハイソックスを履いたままふくらはぎを咬まれるたびに、
母さんがストッキングを穿いたまま脚を咬まれつづけたあのときのことを、
胸をドキドキはずませながら思い出していた。
ぼくの血をたっぷり吸うと、男はふたたび首すじに唇を近寄せてきて、
「きみの母さんとも、仲良くしたい」といった。
ぼくは男にせがまれるまま家に電話をかけて、母さんに来てほしいと頼んでいたし、
母さんはいつもおめかしをして、迎えに来てくれた。
無事に帰宅できるのと引き換えに、
穿いているストッキングを咬み破られ、ブラウスをはぎ取られて、
おっぱいをまる出しにしながら、ぼくのまえで犯されていった。
そんな母さんのありさまを、ぼくはただ固唾をのんで、見守るだけだった。

女のひとはね。
迫られると仲良くできてしまうものなのよ。

母さんの囁きは、いまでもぼくのことを、縛りつけている。
傍らに控える若い女は、よそ行きのスーツ姿。
ショルダーバッグを手に、恐る恐る屋敷のなかを窺って、
「いらしたわ」と、ぼくに囁く。
「行ってお出で」そういうぼくに。
「ここで見ていてね。独りじゃ怖いから」
そう言い残して女は冷たい床に、ストッキングに包まれたつま先をすべらせる。
女は、ぼくの婚約者。
初めてぼくに連れてこさせて首すじを吸ったあと。
「良い子のようだね」と、彼女の身持ちをほめて、挙式のまえの晩まで犯さないと約束してくれた。
きょうも、彼女の乳首とあそこを舐めるまでで、寸止めにしてくれた。

ぼくのこと、意気地なしだと思ってない?
そんなことないよ。ユウくんにはむしろ、感謝してる。
あたしの面倒、ずっと見てくれるんでしょ?
うっとりするような黒い瞳をぼくにむけて、ナオコさんはそういった。
ぼくは、訊かずにはいられなかった。

迫られると、仲良くなれちゃうものなの?

だって、もう仲良くなっちゃってるもん。

女は、ごくあっさりと応えただけだった。

素足よりも、伝染したストッキングのほうが劣情をそそる。
そんなぼくの心理を見抜いた彼女は、ぼくの前を大またで歩いて、
吸血鬼に受けた凌辱を、意識的に見せつけつづけていった。
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