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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

有言実行の男

2017年10月04日(Wed) 07:57:01

有言実行な男だった。
この街に移り住んですぐのころ、やつは面と向かってわたしに言った――
きみの嫁を、征服する、と。
吸血鬼と人間とが共存する街、とはきいていたけれど。
当時の思いのまま、それは気が進まない、と、わたしはこたえた。

一週間後。
身体じゅうの血をすっかり抜かれたわたしは部屋の隅に転がったまま、
妻までもがむざむざと首すじを咬まれてゆくのを、視ているしかなかった。
吸血鬼が人妻をモノにするとき、身体の関係まで結んでゆく。
そして愛情を抱いた相手のことは、決して生命を奪わない――という彼らの掟を、
わたしは目の前で、見せつけられた。

翌朝のこと。
今夜も遊びに来るという彼に向って、
歓迎するよ。ふたりは似合いのカップルだ。家内をモノにできておめでとう――
思わず口走った祝福に、妻はほっと胸をなでおろしていた。

孕ませてやるよ――
有言実行な男は、目の前で妻を抱きながらそういった。
でも第一子は、あんたの子だ。
生れてくるのが男の子なら。
手なずけて、彼女を紹介してもらう。ちょうどあんたのときみたいにね。
生れてくるのが女の子なら。
俺が犯す。
つぎに生まれてくるのは、俺の子だ。
生れてくるのが息子なら。
きっとあんたの息子の嫁か、自分の姉を犯すだろう。
生れてくるのが娘なら。
やっぱり俺が犯す。

気の長い話だな。
そんな軽口をたたくくらい、やつとはすっかり打ち解けた関係になっていた。
妻の浮気相手という事実も、
おなじ女を好きになったもの同士の連帯感にすり替わっていた。
妻の母親や、わたし自身の母親を紹介したときは、
やつと妻、それにわたしとは完全に、共犯者の関係になっていた。
あなたも母のことを抱いてみる?
妻はイタズラっぽい流し目で、わたしのことをいともかんたんに、篭絡していった。
息子の嫁の火遊びに、この世で最も厳しいはずの母は、嫁と同じ男を愛人として共有して、
「昼間はあなた、夜はあたし」と、嫁姑で夫を裏切る共同戦線を張るようになった。
父はわたしのときと同じ経緯で、寛大な夫になっていた。
長年連れ添った愛妻に向けられた老いらくの恋を認めてやって、
新たな恋に夢中になった母の浮ついた振る舞いに、見てみぬふりを決め込んでいた。

気の長い話は、ほんとうに実現した。
わたしは長男と長女に恵まれた。
息子は彼女ができたとき、真っ先にやつに紹介をして、
セーラー服の襟首から、処女の生血を吸い取らせてやって、
律儀な男だったので、責任をとってちゃんと結婚をして、
花嫁が披露宴を迎えるまえの晩、親しんだ小父さまを相手に処女を捧げるシーンまで、しっかり見届けてしまっていた。

父親ちがいの弟は、実の父親に似て、有言実行の男だった。
父さん、ぼくはぼくのほんとうの父さんみたいにして、この家族を乗っ取るからね。
でも許してね。優しい母さんや素敵な姉さんたちを与えてくれた父さんには、心から感謝するから――
そう宣言したその夜に、彼は息子の嫁を相手に筆おろしをして、
そのつぎの晩には、やはり父親ちがいの姉を襲って処女を奪った。
弟に犯された娘はそのつぎの夜、母親の情夫に誘惑されて、二人目の男を経験した。
けれどもこの父親ちがいの弟は、実の父に似てべつの意味で律儀な男で、
嫁入り前の身体を汚されてしまった姉のため、自分が作った人間の親友を紹介してやって、
結婚後も姉弟がつき合うのを承知のうえで、娘を娶ることを承知した。
親友の母親が口うるさい姑だったら、きっと吸血鬼の親子に犯されてしまうのだろうね。
そういうわたしのまえ、
妻の情夫と血のつながっていない息子とは、似通った面差しを並べて笑う。
父さん、だいじょうぶ。もう征服しちゃったから――
ふたりとも本当に、有言実行の男たちだった。
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