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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

「だめダンナ」

2017年10月14日(Sat) 04:32:50

オフィスの中でいつもいかつい顔をして肩をいからせている部長が、
めずらしく照れくさそうに笑っている。
部長のデスクには、いつも威厳たっぷりに置かれている「〇〇部長」のプレートの代わり、
「だめダンナ」と大きく書いたプレートが。
いったいあれはなに?
この職場に来て間もないわたしが周りに訊いても、だれもがニヤニヤ笑うだけ。
だいじょうぶ、すぐわかるから。だれもが順番に置いてもらえるから。
同僚の一人はそう言って、自分のところにも月2か3くらいで置かれるんだといって、
部長と同じように、照れくさそうに笑った。

その晩自宅に戻った私は、この街に棲むという吸血鬼の訪問を、初めて受けた。
首すじにつけられた咬み痕が、ジンジンと妖しく疼いた。
相手は父親よりも年老いた、100に近いのではという老人。
それがまだ吸われていない妻のまえ、わたしに言った。
ご夫婦の寝室はどちらかな?
こっちです。もう布団を敷いてありますけど。
恐る恐る、妻がこたえた。
では、わしはその部屋で寝(やす)むとしよう。
吸血鬼はつづけていった。
奥さんを小ぎれいに着替えさせて、わしの部屋に連れて来てくれ。
寝苦しかろうが、あんたはそこのソファで寝ると良い。
首すじの疼きは、わたしの理性をあっさりと奪い、
どうぞお気の済むようにと会釈を返すと、ためらう妻を促していた。

「だめダンナ」
きのう部長の机に置かれたプレートが、今朝はわたしのデスクに置いてある。
臨席の同僚が、そっと囁いた――おめでとう、と。
職場のだれもが、見てみぬふりを決め込んでいる。
そしていつもと変わらぬ日常が、くり返されてゆく。
帰りぎわ。
プレートはいつの間にか、なくなっていた。
そして、向かいの同僚の席に置かれていた。
「彼のところがいちばん多くて、週1くらい。
そのつぎがぼくで、月2か3くらい。
やっぱり若い奥さんのほうが、彼としてもいいらしくって。
部長はきのうが初めてだったから、あんなに照れくさそうにしていたんだ。
あの人、部下の奥さんのことをあっせんするのは、得意なんだけれどもね」
彼の口調にちょっぴり非難の色があったのは。
彼の奥さんも部長にあっせんされてしまったからだろうか?

来月も。
若い社員がひとり、この職場に赴任してくる。
たしか新婚三か月だときいている。
事態は薄々、事前にきかされているはず。
でも、断り切れないなにかを抱えて、この職場にやってくる。
みんな都会にいられなくなった事情を抱えながら、
きょうも自分の机のうえにプレートが乗るのを、
なぜかドキドキしながら、待ち焦がれている。

(10月6日構想)
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コメント

羨ましいのね
「だめダンナ」って(笑)
きっと皆さん羨ましいのね。

でも、妻の魅力が夫の職場であからさまにされるのは
少しいたたまれない感じですね。

それも若さが基準だなんて。
ひどいわ。
by 加納 祥子
URL
2017-10-14 土 09:44:21
編集
祥子さん
いらっしゃいませ。(#^.^#)
&ご返事が遅れて済みませぬ。

女のいないところで夫たちは、きっとこんな俗なコミュニケーションをとるのでしょう。
夜這い合う風習を体験したというある方から伺ったことがあるのですが、
どうやらその地では、夫同士が妻の身体自慢をし合っているとか。
抱いた人妻の感想を、その夫に話し聞かせてほめ合うらしいです。
いやはや、それこそ「ひどいわ」って言われてしまいそうですが・・・
男という動物は、救いようがないほど、えっちなのでしょうね。

齢を重ねたご婦人の名誉のために、こんどはそうした女性をヒロインにしたお話を描いてみたいです。
by 柏木
URL
2017-10-26 木 07:22:08
編集

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