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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

受話器 2

2017年11月27日(Mon) 06:26:29

夜が明ける。
真っ暗にしたはずのこの部屋にも、閉め切ったカーテンの向こうから、明け方の気配が洩れてきていた。
男は顔をあげ、あたりの様子を窺った。
女はとうに、気絶している。
気絶した女の傍らに、黒い受話器が転がっている。
男は吸血鬼。
魅入らせてたらし込んだ人妻を呼び寄せて、ひと晩かけて欲望を満たしつづけていた。
血を吸うだけではない。
ちゃんと女として、愛し抜いた。
夫は単身赴任のサラリーマン。
そんな手薄な身辺に近寄るのは、たやすいことだった。
やすやすと堕とした女の肢体に、夜な夜な酔い痴れる。
もちろん吸い取る血液の量は、手かげんしている。
軽い貧血が却って陶酔をそそるのか、
女は心地よげに男に身をあずけ、守り抜いてきたはずの貞操を、惜しげもなく差し出してくる。

転がった受話器を、男は手に取って、耳にあてがう。
もしもし――?
とうに切れていたと思っていた受話器の向こう側は、まだ回線がつながっていた。
ツーツーという無機質な発信音の代わり、耳元に聞こえてくるのは、男性の昂った息遣い。
切迫し切った息遣いは、女の夫のものだった。
あんた、きょうは仕事だろ?
・・・休むよ。
息遣いの主の声色は、長時間続いた緊張の果てにある疲労と愉悦に満ちていた。
家内、ぼく相手のときには、そんな声立てないんですよ・・・
満足できた?
ええ、とっても・・・

手ごめにした人妻の夫は、男にとって幸いなことに、マゾヒストだった。
そして夫自身にとっても、己の性癖は幸いしていた。
ことの真相を知った夫は協定に応じ、潔く吸血鬼の軍門に降ると、
留守宅を守る妻の肢体をよろこんで提供すると約束してくれた。
そのご褒美に。
今夜は逢瀬を遂げるというその晩に、夫のところに電話をかけて、
ことのなりゆきを面白がって笑いこけるその妻のまえ、電話をつないだままの受話器を転がしてみせた。
――今夜はあんたの愛妻の、悩ましい喘ぎ声をプレゼントしてあげる。
吸血鬼の言いぐさに、受話器の向こうでおっとりと頷く夫。
転がした受話器の揺れが止まる前に、吸血鬼は女に襲いかかっていた――

ひと晩寝ずに、奥さんの声を聞きつづけていたのか?
眠れる夜じゃ、ないからね・・・
きみは良いご主人だ。
あんたも、良い間男だ。
うふふふふふっ――男は、くすぐったそうに笑う。
軽はずみな女だが・・・これからも家内のことをよろしくな。
ああ、任せておけ。
震えを帯びた昂ぶりの声の主は、やっと自分のほうから電話を切った。
あとに残るのは、ツーツーという無機質な発信音。
男は受話器を置いて、傍らに転がる女の肢体を見おろした。
女は口許にかすかな唾液を滴らせ、整った目鼻立ちに淫らな陶酔の痕跡をありありと残している。
クククククッ・・・
男はくぐもった昏い笑いを洩らすと、われにかえって身じろぎを始めた女のうえにのしかかり、
アッと声をあげかけた唇を、自分の唇でふさぎながら。
もういちど女の背中に腕を回して、ギュッと抱きすくめていった。


あとがき
前作に触発されて、受話器をテーマにもう一話描いてみました。
昨日から、前作に触発されて次のを描き、さらにそのまた次のお話・・・と、つむいでしまいました。
たまにはこううことも、ありますよね?^^
前の記事
優しい伯母。
次の記事
受話器。

コメント

こちらが好きです
ずっと繋がり続ける電話回線
ずっと聞こえ続ける喘ぎ
その向こうでずっと聞こえる水音

なのに電話を切ったりしたら
わたくしなら許しません

でも・・・
今月の通話料の請求書が
ちょっと怖いですね(笑)
by 加納 祥子
URL
2017-12-23 土 13:33:27
編集
祥子さま
レスが遅くなってしまい、申し訳ありません。
ちょっと体調を崩してしまい、しばらくこちらのほうから遠ざかっておりました。

いただいたコメント。
さいごの二行で笑いました。
さすがにキャリアウーマン、なかなかに現実的ですね。

寝取られる夫は弊ブログでは重要な登場人物の一人です。
ココでの寝取られは、夫と間男がほどほどの距離感を保ちながら仲良く共存しています。

夫のほうは、
妻がいつもの慎み深さや凛としたところをかなぐり捨てて、
自分以外の男性に征服され支配されるところを目の当たりにする昂奮を味わい、

間男は、
魅力的な人妻を夫の目のまえで思うさま愛し抜くことで、
自分をさらけ出し征服欲を満たします。

人妻もまた、
常識まみれの日常生活から抜け出して恥を忘れて乱れてしまうことで、
日ごろの鬱積を吐き出してゆくのでしょう。

そんな大人の三角関係を楽しめる組み合わせは、実際にはそう多くはないとは思いますが――

でも、こういうシチュを受け容れるのなら、途中で受話器を放したらいけませんよね?(笑)
by 柏木
URL
2017-12-27 水 08:02:48
編集

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