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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

俺のハーレム

2018年01月13日(Sat) 23:12:37

吸血鬼と人間とが共存するこの街に育った良作は、19歳の時に血を吸い尽されて、吸血鬼になった。
自分の意思で吸血鬼になることを選択した彼は、血を吸い尽された瞬間ふと、
――女の子が処女を捨てる時も、きっとこの程度にしか感じない。
と、ふと思った。
その直感は、たぶん正しかった。

彼の血を吸った吸血鬼は、長老と呼ばれる存在だった。
長老の手で吸血鬼にされた良作は、自身の欲する血液を確保するために、ハーレムを持つことを許された。

ハーレムといったところで・・・
あてがわれた邸のがらんとした無駄に広い空間を見回しながら、ふと思う。
てっきり、活きの良い若い女の子が初々しい身体をピチピチとはずませながらそこかしこを行き来している――
そんな風景は、しょせん妄想の産物だった。現実は厳しい。
そう――ハーレムに住まう女は、自分の腕で狩ってこなければならなかったのだ。
街では有数の良家の生れとはいえ、特別な将来が約束されているわけでもない次男坊である彼は、
無条件に女の子にもてるほど、魅力のある男ではない。少なくとも自分でそう自覚してしまっている。
供給が無くても需要はつねにわいてくるものらしく、さっきから喉がむしょうに渇いて仕方がなかった。
これから女を狩りに行かねば・・・
たいびそうに起ちあがった良作のようすは、どうみてもあまり、恰好のよろしいものではない。
ふと人の気配を感じた玄関先に、

りぃん・ろぉん・・・

だれかの訪問を告げるインターホンの音が、能天気に響いた。

たいぎそうに開け放ったドアの向こうにいたのは、叔母の奈津江だった。
齢は30代半ば、母とは年の離れた妹にあたる。
白い肌と高雅な目鼻立ちの持ち主で、人並みならぬ教養の持ち主だというのに、
どういうわけか独身を通し、
半吸血鬼になった良作がふとした衝動で押し倒してしまうまで、なんと男を識らない身体だった。
ピアノ教師の顔を持つ彼女は、それ以来、教え娘たちをこの甥っ子に引き合わせ、
つぎからつぎへと毒牙にかけさせてやっているという、ありがたい存在。
その美貌の持ち主が、飛んで火にいるなんとやらといっていいような状況で、
にわか吸血鬼になって喉をカラカラにしている甥の目のまえに姿を現したのだった。

奈津江はもの欲しげな甥っ子の様子など眼中にないらしく、
さっきから物珍しそうに、だだっ広いだけのお邸のようすを物色している。
「リョウくんがハーレムをかまえたってお姉さんに聞いたから来てみたけれど、
 なぁんだ、ただの家じゃないの」
奈津江は小ばかにしたように鼻を鳴らして、スリッパをつっかけた脚をずんずんと奥へと進めた。
一階はリビングに書斎、それに台所。
二階には長い廊下に面してほぼ等間隔に小ぎれいなドアが並んでいる。
全部で10室ね、と、奈津江は目で数えて良作をふり返る。
「で、なん人つかまえたわけ?」
ドキドキするほど綺麗な輝きをたたえた瞳をまえに、良作はどぎまぎしながら目をそらす。
なりたての吸血鬼はまったく、かたなしだ。
「ははーん。やっぱ噂どおり、閑古鳥か~」
奈津江は後ろから自分のことを羽交い絞めにしようとした猿臂をするりと切り抜けて、
ドアというドアを片っ端から開け放ち、なかががらんどうであることを確かめていく。
良作はもう、ばつの悪そうな顔をして後につき従うしか手がなかった。

「いいわ、決めた。このお部屋」
奈津江はいちばん奥の一室に入り込むと、ベッドのうえに勢いよく飛び乗って、
気持ちよさそうに横たわった。
「あたしがリョウくんのハーレムの、最初の住人になってあげる」


気がついたときにはもう、翌朝になっていた。
「咬んでもいいのよ」と囁いて叔母がブラウスの襟首をくつろげた後は、もうあまり記憶が定かではない。
びろうどのような輝きを秘めた首すじのきめ細かい素肌に唇を這わせると、
奈津江が邸にあがり込んでからずっと疼きつづけていた牙を、グイっと埋め込んでしまっていた。
しっくりと吸いついた唇はもう、本能のままにうごめいて、
力まかせに巻きつけられた猿臂は、叔母の華奢な肉体を折れるばかりに抱きすくめていた。
何度めかの抱擁のあと、戯れに足許に這わせた唇が、ストッキングのしなやかな感触に触れたとき、ウットリとした気分になって、
そのままブチブチと、無作法に咬み破っていって、
「まあ」と奈津江がさすがに眉をひそめるのも構わずに、はしたない裂け目を拡げていったときには、
ずっと鼻づらをひきまわしていた叔母に仕返しをできたような気分にさえなっていた。
先月の奈津江のリサイタルには招待されて出向いたけれど、
濃い緑のドレスに身を包んだ叔母の奥ゆかしい風情に良作はたちまち参ってしまい、
公演を終えた直後の叔母に楽屋で迫ってドレス姿のまま素肌に牙を埋め、犯しながら生き血を吸ったときのあの快感を、再び彼は味わっていた。
そんな夢心地を、奈津江はだしぬけに、やけに現実的な声色で、容赦なくぶち破る。
「あと9人、引き込まなくちゃいけないんだよね?」

ゥ・・・
良作は、一言もなかった。
高校生のころも、まったく女の子にはもてなかったし、
そういう状況は吸血鬼になったからといって、急変するものではなかったのだ。
良作がなにか言いかけるのを、賢明な叔母はすぐに制した。
「あたしの教え娘は駄目。あの子たちはまだ幼いから、女としての判断ができるまでここには来させないわ」
叔母のところに出入りしている少女をすでに5~6人、良作は毒牙にかけていたのだが、
これでまたもや話が振り出しに戻ってしまった。
「なんか、何やってもうまくいかないんだよなあ・・・」
良作は泣きそうな声になって愚痴った。
「かっこ悪い吸血鬼もあったものね。自分の獲物くらい自分で狩りなさいよ」
私は明日、引っ越してくるから――叔母はそういうと、
軽くはない貧血を起こしているはずの身体を勢いよく立て直して、辞去を告げた。
でも帰り際、彼女は愛しの甥っ子に囁くのを忘れなかった。

「あんた、見込みあるわよ。あんたは女の子のことを人として見ているから、踏ん切りがつかないの。
 吸血鬼になったからといって浮かれまくって、周りの女を手当たり次第にハーレムに引き込んで、
 みんなに総スカンを喰らって吸血鬼の看板を下ろしたやつもいるんだからね」
「吸血鬼の看板を下ろす・・・?」
そんなことがあるのか?と問いたげな良作に、奈津江は言った。
「周囲の和を乱したペナルティで、そいつはもとの真人間に戻ったわ。
 それで、親友の奥さんを引きずり込んだ見返りに、自分の奥さんをほかの男たちにまわされて、
 同僚の娘さんを引きずり込んだ報いに、自分の娘がほかの吸血鬼のハーレムに住まわされて、
 親戚の息子さんをたぶらかした落とし前に、息子はふたりとも血を吸われたわ」
要するに、見境なく寝取った代償に、自分が逆の立場に戻されて見境なく寝取られたってわけか――
薄ぼんやりと反応する良作の顔を、女は覗き込んで、言った。
「それってだれだかわかる?」
「知らないよ」
「あんたのお父さん♪」

奈津江は来た時と同じくらい軽やかな足どりで、若い娘のようにほっそりとした肩にロングの黒髪をなびかせて、
優雅にハミングしながら後ろ姿を遠ざけてゆく。
さっきまで自分のものだと思い込んでいた華奢な肢体は、
しっかりとした骨太な意思をもって、力のある足どりで前へ前へと進んでゆく。
女は自分の意思で相手を選び、自分の居所を決めていた。
「あんた、見込みあるわよ」
女の声がふたたび、良作の耳の奥によみがえる。
「もっと自信持ちなさい。この私が、あなたのハーレムの、最初の住人になってあげるんだから」

年上の女との、微妙な力関係の日常が、良作のハーレムでその日から始まった。
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