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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

同級生のハイソックス

2018年01月15日(Mon) 08:26:07

その当時貴志の学校では、
半ズボンにハイソックスといういでたちは、良家の令息のステータスだった。
貴志も毎日、詰襟の制服の代わりにブレザー姿で登校していた。
校則は、とくに良家の子女にはゆるやかだった。

貴志の幼なじみの良太は、幼いころから吸血鬼だった。
吸血鬼と人間とが共存しているこの街では珍しくない、半吸血鬼の家系だった。
貴志は良太の母に頼まれて、学校で良太が飢えたときに自分の血を吸わせてやるようになっていた。
本人同士はもとより、母親同士が仲が良かったのも幸いした。
色気づいて来た良太のために、貴志の母親が筆おろしの相手になってやったことを、このころの貴志はまだ知らない。

良太は、ハイソックスに執着する性癖を持っていた。
喉が渇くと貴志のいる教室に行って、授業中でも構わず貴志のことを呼び出すと、
鼻息荒く貴志の足許に唇を迫らせて、ハイソックスの上から唇を吸いつけてきた。
そんなときでも貴志は、
「授業中に、やだなあ・・・」
と苦笑いしながらも、担任の先生に断って教室を出、手近な空き教室や裏庭で、吸血に応えてやっていた。
良太が自分の服装を気に入ってくれているのが、むしょうにうれしかったのだ。
貴志は、露骨に舌をふるいつけてくる良太のために、気の済むまでハイソックスを舐めさせてやり、
ふくらはぎに食いついてくる牙で、ハイソックスを惜しげもなく破かせてやっていた。
貴志が咬み破られて血の撥ねたハイソックスを履いたまま教室に戻って来ても、だれもが見て見ぬふりをした。
吸血鬼に関係のあるものも、そうでないものも、その程度の配慮はわきまえていた。

「気になる女の子がいる」
良太が出し抜けにそう言い出したのは、やはり授業中に貴志を呼び出して吸血に及んだあとのことだった。
組み敷かれた格好のまま貴志は、「そうなんだ」とだけ、こたえた。
良太は口許からぽたぽたと、さっき吸い取ったばかりの幼なじみの血をしたたらせてくる。
それをわざと、真っ白なワイシャツの胸に受け止めながら、
「こら、こら。着替えないと教室に戻れないじゃん」
といった。
手足をだらりとさせた大の字の格好で、足許ににじり寄って来る幼なじみを見るともなしに見守りながら、
「誰なんだい?」
と、さっきの話の続きを促した。
「きみのクラスの真由美ちゃん」
以外に素直に帰って来た返事に良太の欲求の強さを感じた。
ふくらはぎに這わされた唇の両端から、牙がチクチクと滲んでくる。
2本の牙が、ずぶっと、貴志のふくらはぎに刺し込まれる。
じわじわと滲んできた血潮がハイソックスになま温かくしみ込むのを、貴志は感じた。
「わかるよ」
咬まれる快感に夢中になって置き去りにしてしまったこたえを、貴志はいまさらながらに口にした。
「彼女、美人だものなあ」
「貴志は、好きな子はいないの」
「僕?うん、とくにいないけど」
「頼みがあるんだ」
「わかってるよ」
「そうなんだ」
「彼女のこと、呼び出してくれっていうんだろ?」
「いいの?頼んでも」
貴志は良太がまだ真由美と同じクラスになったことがなく、
同級生の女子にさえろくに口をきけない良太がまだ真由美と言葉も交わしていないことを知っていた。
「僕が紹介してやるよ。仲良くなれるといいね」
「でも――」
良太がちょっとだけ、言いよどむ。
そう、吸血鬼の家に生まれたものは、人間の娘とは結婚できないしきたりになっていた。

入れ替わってやれるとよかったんだけどなあ――と、貴志は思う。
まだ若すぎるのかもしれないけれど、貴志には女子に対する思い入れがあまりなかった。
良家の子女にふさわしい美貌を備えた貴志は、その実クラスの女子の注目の的だったのだけれど、
そんなことは彼には、どうでもよいことだった。
あの内気なやつが、どうやって真由美に挑むというのだろう?
モテる男子が、モテない男子をからかうような優越感は、彼にはなかった。
むしろ、幼なじみが意中の子にうまくアタックできるのかどうかが、気になるだけだった。

「ご対面」は、さっそく次の日の放課後に行われた。
「話があるから来て」とだけ言って誘い出した真由美は、
ある種の期待を込めた女子の顔つきをして、言われるままに学校の裏庭にやって来た。
そしてそこに貴志だけではなく、良太の姿をみとめて、露骨に眉をひそめた。
良太が吸血鬼だということは、校内のだれもが知っていたので、
ふつうの女子としての潔癖さを、彼女も同じように表に出したに過ぎない。
「僕の幼なじみの良太。いつも僕の血を吸わせてやっているんだけど――」
戸惑う真由美を前に、ちょっと酷だなと思いながらも、貴志はストレートに言った。
「彼、きみの血を吸いたがっているんだ」
口に出した瞬間、酷だったのは真由美に対してではなく、良太に対してだと初めて気づいた。
良太はギクッとして顔色を変えて、その場から逃げ出すように足を半歩引いていた。
貴志は良太の手をさりげなく抑えながら、つづけた。
「――よかったら、僕といっしょに献血に応じてあげてくれないかな?」

ガマン出来なくなったら、いきなりきみのことを襲うかもしれない。
そんなふうにされちゃうのは、きみのプライドも許さないだろうし、
こいつ吸血鬼のくせに、傷つくやつなんだ。
あとできっと暗く後悔する。
そうするとまた、僕のところに来るんだよね・・・
実際にあった記憶がよみがえり、貴志はにやにやしながら良太を見た。
「いいだろ・・・」
口を尖らせる良太を、貴志が気安くどやしつけるのを目にしたときには、
少女はすっかり気持ちを落ち着けていた。
もともと気丈な娘だった。
「いいわよ、貴志くんといっしょだったら、血をあげてもいい」
ぱっと顔色を輝かせる二人の少年を交互に見比べながら、真由美は貴志に訊いた。
「このひと、血を吸うときハイソックス破っちゃうって、ほんと・・・?」

さいしょに貴志が手本を見せ、あとから真由美がそれにならった。
貴志は半ズボンの下にいつものように舌をふるいつけてくる良太を苦笑しながら見おろし、
そんな貴志を真由美は眩しそうに見つめていた。
いよいよ自分の番になると、貴志に、「やっぱり怖いから、手を握っていて」といって、自分から手をつないできた。
真由美は、濃紺のハイソックスを履いていた。
良太が真由美の履いているハイソックスのうえから唇を吸いつけたとき、
貴志はいつも自分が吸われているとき以上にドキドキしているのを感じた。
「白いやつじゃなくてよかった」
と、真由美が呟いた。
真っ白なハイソックスでは、シミが目だってしまうからだとわかったときにはもう、
良太は躊躇なく、真由美のふくらはぎに牙を埋め込んでしまっていた。

ちゅう、ちゅう、ちゅう・・・
真由美の血が音を立てて、良太に吸い取られてゆく。
こういうときは、いつもの引っ込み思案はかげをひそめて、良太はひたすら強欲に、獲物の血をむさぼるのだ。
さすがに気丈な真由美も顔色を蒼ざめさせて、貴志に促されるままに、手近なベンチに崩れるように腰を下ろした。
真由美が姿勢を変える時だけ、良太は唇を放して貴志を手伝ったが、
すぐにまた自分が初めてつけた傷口に唇をふるいつけて、血を啜りつづけた。
そのあいだずっと、貴志は真由美の細い肩を抑えつけながら、
幼なじみが目のまえの美少女の生き血を吸い取る光景を、いつになく胸をわななかせながら見守りつづけていた。

真由美は案外度胸の据わった娘だった。
すっかり大胆になった良太に求められるまま、左右どちらの脚も、ハイソックスを履いたまま咬ませてやっていた。
もう片方の脚をねだられたとき、気持ちずり落ちていたハイソックスをわざわざきちんと履き直すほど、しっかりしていた。
「すごいね、きみは」
貴志は真由美にいった。
「怖くなんてないから」
真由美は白目で貴志を睨みながら、こたえた。
その実内心はかなり怖がっているのが貴志にはよくわかっていたし、
良太のほうも吸い取った血の味で、彼女の気分を察しているはずだった。
「家まで送るから」
控えめにそういった貴志に、真由美は「ありがと」とだけ、こたえた。
貴志は良太と目線を合わせ、良太が頷くのを見て、自分のしたことがよけいな差し出口ではないことを察した。
どんなに好きでも、吸血鬼に家まで送られることを、少女が肯んじるとは思えなかったから。
「こいつさ、自分が咬み破ったハイソックス、コレクションにして集める趣味持ってるんだぜ」
良太のコアな趣味を貴志が明るい口調で暴露すると、真由美は初めて声をたてて笑った。
「そうなの?ヘンな趣味ね」
「僕のはだいぶ、ストックされちゃってる。ほんとはお前・・・真由美ちゃんのも欲しいんだろ?」
貴志が面白そうに、良太の顔を覗き込むと、良太の反応から目をそらしながら真由美がいった。
「あげるわよ。穴の開いた靴下なんて、もう履けないし」
良太が目の色を変えて、真由美の足許に取りついた。
履いているハイソックスを引きずりおろそうとする良太の手を、真由美は手厳しくはねつけると、
「ばかね、ちゃんと洗ってからにしなさいよ」
と、そこは少女らしい恥じらいをみせた。

「吸血鬼って、人間の女の子と結婚できないんだってね」
真由美は意外に、詳しかった。
母親からいろいろ聞かされていたというのだ。
まるで母娘の間の性教育みたいだ、と、貴志はなんとなく思った。
「でもあたし、ちゃんとお嫁さんになって、家庭を持ちたい人だからね」
真由美の宣言は、貴志が気づかったほどに、良太を傷つけなかった。
「わかっているさ。分はわきまえているつもりだからね」
そして、意外なことを口にした。
「貴志は、真由美ちゃんと付き合う気はないの?」
え?
完全に虚を突かれて、貴志は言葉を失った。
さっき、真由美が初めて咬まれる瞬間によぎったドキドキの意味が、やっとわかってしまったから。
真由美は貴志の目を見ずに、ぶっきら棒にいった。
「私、貴志くんとつきあってもいい」

「おまえ、結局いちばんおいしいところだけをつかまえたな」
翌日の学校帰りに、貴志は良太のことを小突いた。
真由美の血を末永く愉しむために、真由美を幼なじみである貴志の嫁にする。
寛大な貴志はきっと、若い女の血を欠かせない幼なじみのために、自分の嫁を気前よく差し出すことだろう。
「ばれた?」
照れ隠しに笑う良太はそれでも、
「俺、貴志の嫁を支配するから」
と、憎まれ口をたたいた。
二人の間に交わされる言葉の裏に毒々しさがまったくないのを、
貴志も良太も――そして多分真由美さえも――よく知っていた。

その次の日、真由美が良太のために初めて咬み破らせたハイソックスを洗って持ってきて、良太に手渡したのを、
貴志は真由美の口から聞かされた。
「こないだのハイソックス、良太くんに渡しといたから」
「これからも、良太くんに襲われて、血を吸われることにしたから――良太くんと、貴志のために・・・」
二人は寄り添い合って、初めての口づけを交わした。
長い口づけだった。
いちど離れた唇と唇は、少女の側からもういちど、重ね合わされた。
「ありがと。私初めてだったんだ。いまの記憶で、これからなにがあっても私やっていけるから」
真由美は初めて少女らしく、無邪気な笑いをはじけさせる。

二人の幼なじみの、片方の妻になって、もう片方の恋人になる――
そんな難しい役柄を、きっと演じ切って見せる。
かたく引き結ばれた少女の薄い唇に滲んだ決意に、貴志はもういちど少女のことを力をこめて抱きしめていた。
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