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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

テルヤと紗栄子と僕。

2018年01月17日(Wed) 05:23:57

いけすかない、虫が好かん。
幼なじみのテルヤを見るたび、紗栄子は必ずそういって毒づいた。
高慢ちきな美少女にとって、村はずれの貧しいあばら家に棲むテルヤなどは、軽蔑の対象でしかないらしい。
それとは真逆に、テルヤと仲良しの僕は、大病院の院長の息子。
地元の名士の御曹司と、街で評判の美少女とは、将来を誓い合った仲だった。
そんな紗栄子のことを、テルヤがいつも遠くから、もの欲しげな目で見つめるのを、僕は見逃していなかった。


ああッ・・・
ダメだよッ・・・
この、ヘンタイッ・・・
村はずれの納屋でのことだった。
良家の子女にあるまじき口ぎたない言葉で罵りながら、
紗栄子はのしかかってくるテルヤをどうすることもできなくなっていた。
テルヤは紗栄子の上に馬乗りになると、紗栄子の首すじにガブリと喰いついて、
むさぼるように血を吸い取った。
ひいッ、何するのよッ!
美少女は声だけは手厳しく相手を叱りつけたけれど、
押しつけられた唇を引き離すことは、とうとうできなかった。
テルヤは日ごろの引っ込み思案な自分をかなぐり捨てて、紗栄子の首すじを露骨に吸って、
ちゅ、ちゅ~と聞こえよがしな音まで立てて、若い血潮を吸い上げる。
そして、紗栄子の身体から力を抜けてしまうと、藁の上にうつ伏せになったふくらはぎににじり寄って、
こんどは脚に唇を這わせた。
テルヤのような家の子がめったにありつけるものではないはずの、
いいところのお嬢さんハイソックスが、いやらしい唾液に浸されてゆく。
しばらくの間ハイソックスの舌触りを愉しむように舐めまわすと、
テルヤは吸いつけた唇にグッと力を込めた。
紗栄子の履いている真っ白なハイソックスが、たちまち赤黒いシミに濡れた。
毒々しいシミがじわじわと拡がっていくのを、ほとび出る血潮のなま温かさで感じるのか、
紗栄子は悔し気に歯がみをする。
なだらかな肉づきをした紗栄子の脚に、僕は心ひそかに執着していた。
けれどもその侵すべからざる脚に、テルヤは僕の彼女と知りながら、
臆面もなく唇を吸いつけて、
欲望のままにむさぼって、
ハイソックスの舌触りを愉しんで、
吸い取った血潮でためらいもなく汚してゆく。
これは、僕にはできない愛しかただった。

僕はそのようすを、物陰からじいっと見つめるばかり。
どうして助けないのか?って?
僕は知っているから。
紗栄子はきょう、部活があるから先に帰ってと僕に言った。
でも、紗栄子は帰宅部で、どんな部活にも参加していない。
先に僕を帰した後、テルヤと示し合わせて、彼の家の近くの納屋で落ち合って、
生き血を吸い取らせてやっているのだ。
相手を口ぎたなく罵りながら、形だけは意に反して無礼なあしらいを受けてしまったというていをとりつくろって。
そんないけない習慣を、いつから身につけたのか。

テルヤは正直に、語ってくれた。
学校帰りに待ち伏せをして、ところも同じこの納屋に彼女のことを追い詰めて、
白のハイソックスの脚を辱め抜いてしまったのだと。
僕の彼女だと知りながら、でも僕の彼女だからこそ、征服してみたかったのだと。

きみは紗栄子と結婚すればいい。
でもできたら、きみのお嫁さんと逢わせてくれないか?時々でいいからさ。
ぼくはきみには恥をかかせないし、ぼくたちの関係を笑うやつがいたら、ぼくがただではすまさない。
だから、きみの嫁を襲わせてくれないか?
紗栄子が生娘でも、人妻になっても、ぼくは彼女の生き血を愛しつづけていたいから――

まるで恋人に気持ちを告白するような真剣な態度で、テルヤは僕にそういった。
僕は、正直に言ってくれてありがとうとだけ、テルヤにこたえた。


ふん、いけすかない。
ふたりで歩いている僕たちを気づかって、きょうもテルヤは会釈だけしてすれ違ってゆく。
たったそれだけのことなのに。
紗栄子はテルヤの存在自体が我慢できないと言わんばかりに、テルヤを嫌悪しつづける。
裏では僕には告げずに部活だと言ってはテルヤと示し合わせて、
あの真っ白なハイソックスで装ったふくらはぎを、惜しげもなく咬ませちゃっているというのに。
その想像をするたびに、僕の胸ははげしくジンジンと騒ぐのだ。
血が騒ぐって、こういうときにいうのだろうか?
未来の花嫁が襲われて、衣装もろとも汚されてゆく光景を視るといういけない歓びに、
ぼくはいつの間にか目ざめてしまっていた

きょうは部活だから。
見え透いた口実で僕を遠ざけるとき、紗栄子はちょっとからかうような顔つきで、僕の横顔を盗み見る。
彼女もまた、未来の夫に見せつけるといういけない歓びに、目ざめてしまっているに違いなかった。


あとがき
昨日あっぷした前作を描いた直後、同工異曲のお話がもう一つ泛びました。
たいとるを前作と似せているのは、そのせいです。
いまほどサッと手直しをして、あっぷ♪
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