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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

あまり美しくない少女の場合。

2018年06月11日(Mon) 04:49:26

そばかす顔に、三つ編みのおさげ。
大きくはない瞳に、特徴のない目鼻立ち。
そんな容姿の持ち主の粟井のり子は、あまり美しくない少女だった。

学校からの帰り道、喉をからからにした吸血鬼に遭ったのが運の尽き。
戸惑うばかりののり子はあれよあれよという間に公園の片隅に追い詰められていって、
頭をつかまれおとがいを仰のけられて、
首すじをガブリとやられ、白ブラウスの襟首を真っ赤な血潮で濡らしてしまっていた。

くらくらと貧血を起こすまで血を吸い取られると、
親よりも老けたカサカサの頬をした吸血鬼は少女をベンチに腰かけさせられて、
当時年ごろの少女たちの間で流行っていたライン入りのハイソックスのふくらはぎに、
にやけた唇を圧しつけられていった。
太めのグリーンのラインの上を、赤黒いシミがじわじわと拡がっていった。

個性のない容姿とかかわりなく、十四歳の少女の血は、飢えた吸血鬼の喉を心地よく潤した。
男は困り抜いている少女が戸惑いつづけるのもかまわずに、
両方のふくらはぎに代わる代わる喰いついて、
じゅるじゅる、じゅううっ・・・と、露骨な音を立てながら、少女の生き血をむさぼっていった。
けれどもこの土地に棲みつく彼らは人間に対してあまり残酷ではななったので、
ひとしきり少女の生き血を愉しんだ後は、
具合悪そうに俯くのり子のことを、学生鞄を担いながら家まで送っていった。
訪れた少女の自宅で、びっくりして娘を出迎えた母親を相手に吸い足りなかった血液を補充して、
ことのついでに、気が済むまで犯してしまうことも忘れなかったが。

それ以来、のり子は学校の行き帰りを待ち伏せる吸血鬼のため、
しばしば制服のブラウスやライン入りのソックスを血で汚した。
できの悪い少女は赤点を取りつづけ、男子にももてなかったけれど、
たぶんそれは吸血されてもされなくても、変わらない日常だったに違いない。
頭も悪く、あまり美しくなかったけれど、律儀で心の優しいところがあったので、
身体の調子がいまいちでも、「小父さん」と呼ぶ彼の喉が渇いたころと見定めると、
母親が止めるのも聞かずに、ライン入りのソックスを脚に通して、吸血鬼の待つ公園に向かうのだった。
それが「小父さん」のためにできる、精いっぱいのお洒落だと心得ていたようだった。

やがてのり子は、親の決めた相手と結婚した。
相手は同じ中学の同級生で、のり子が吸血鬼に血を吸われていることを知ったうえで結婚を承諾した。
披露宴の一週間まえ、呼び出されるままにのこのこと出かけていったのり子は、
吸血鬼の邸の奥深く、寝所に招かれて。
結婚祝いにといわれて、なん度もなん度もしつように犯された。
初めて味わう男の身体が、たんに股間を痛くするだけではなくて、たまらない快感だと思い知るほどに。

「わかってるよ、あのおっちゃんの児だろ?俺育てるからいいよ」
のり子の夫は、妻と同じくらい見映えのしない若者だったが、律儀で鷹揚な男だった。
お腹の子が自分の子ではないと知れたのに、
ひどくすまなそうな顔をして困り切った新妻を、そういってかばった。
嫁入り前も、人妻となってからも、のり子は夫に黙って吸血鬼の邸に通いつづけていたが、
のり子の夫は嫁の浮気相手のところに出かけて行って、とっくりと話し合って、
嫁が身ふたつになったらまた、逢わせてやると約束していた。
「小父さん」がただのり子の血が吸いたいだけで、自分に悪気がないのも恥をかかせたくないと思っているのも、よく心得ていて、
言ってくれれば周囲に怪しまれないように、車で送り迎えするとまで、約束して家に帰って来た。

「とんでもない嫁だ」と憤慨する母親をなだめて、
「母さんもいちど、嫁の浮気相手とよく話してみると良い」と促した。
いっしょに訪問した息子のまえ、気位の高い姑は、嫁の浮気相手に生き血を吸い取られる羽目に遭った。
「そうなるだろうと思っていたよ」
のり子の舅が苦笑しながら語りかけたのは、妻にではなく息子にだった。
気位の高い姑は、夫には黙りとおしたまま情交を重ね、
嫁や自分を目あてに吸血鬼が行き来するのを、嫁を非難するしかめ面だけはそのままに、許しつづけていた。

さいしょの息子は吸血鬼の種だったが、つぎの息子は夫婦の間の子であった。
従順な弟は、吸血鬼のお兄ちゃんが困っていると知ると、当然のことのように自分の彼女を紹介してやった。
のり子は嫁になる少女におだやかに接して、決して怖くないからお兄ちゃんのこともよろしくねと頭を下げた。

吸血鬼に生き血を吸われ、母親も、嫁ぎ先の姑も、息子の嫁さえ犯されて。
「ふつうなら家庭崩壊なのに、のり子さんだとよろずうまくいくものだね」
舅はそういって、おだやかに笑っていた。
容姿も学校の成績もぱっとしない少女は、吸血鬼に幸福を与え、周囲もあまり不幸にせずに、おだやかに齢を重ねてゆく。

「魔性の女」とは、案外こうした少女のなかに宿るのかもしれない――
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