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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

夜這いと吸血鬼

2018年06月26日(Tue) 06:38:30

彼らがこの村に棲みついたのは、かれこれ数十年もまえのことだった。
いつの間にかひっそりと、村の風景にとけ込むようにして、入り込んできたのだ。
夜になると家々に忍び込んで、彼らは女たちの血を吸った。
けれども最初のうちは、それが吸血行為だとさえ思われていなかった。
この村にはもともと、夜這いの風習があった。
だから女たちはよそ者たちの侵入を、ごく当たり前のように、受け入れていったのだ。

――古くからの村の住人、安東作治の独り言――

最初にやられたのが、仁井田のうちの女房とその娘だったね。
仁井田は出稼ぎに出ていたから、夜這いの衆も入りやすかったんだ。
それと、袴田病院の院長の若奥さんも、多分同じ夜のことだった。
このあたりでは指折りの旧家で外聞を憚っているのか、院長は認めないがね。
でもやつらは3人いたし、仲間がそれぞれ女の生き血にありついてるのに一人だけ我慢するいわれはないからね。

やつらは日をおいて、またひとの家を荒らしにきた。
そのときは仁井田の母娘と、境川の女房だった。
境川のうちが狙われたのは、院長のところがガードが固くなったからだろうね。
だから、別のもんを襲ったんだ。
あの晩境川は風邪をひきこんで、家族にうつすまいと独り寝をしてたんだ。
働き者の女房が朝になっても起きてこないから様子を見に行ったら、
首すじから血を流してへらへら笑っておったものだから、
やっこさんたまげてしまって、ひきこんでいた風邪も吹き飛んでしまったそうな。
それで夜這いに来たよそ者連中が吸血鬼だと知れたんだ。

けれども村の衆はやつらを邪険にはしなかった。
人手の欲しい刈り入れどきになると、手間賃も受け取らず働いてくれておったからな。
だから女たちも分け隔てなくやつらの夜這いを受け入れたのだ。
若い女の生き血さえ吸えれば生命までは取らないことが知れてからは、
女たちのなかには自分から出かけていって、血を吸わせるものまであらわれた。
村の女の心意気を見せるんだといってな。

最初のうちは旦那が出稼ぎに行っている家の女房や後家さんが、もっぱらやつらの相手をしていた。
やがて最初に血を吸われた仁井田の家の亭主が出稼ぎから戻ってきた。
それでも仁井田の女房も娘も、亭主の目を盗んでやつらのねぐらに血を吸われに出かけていって、
吸血鬼相手に乳繰り合うていた。
このあたりでは出稼ぎに行っている間に女房や娘が夜這いを受けんのは暗黙の了解だったし、
旦那が出稼ぎから戻ったあとも女房がほかの男と乳繰り合うのもよくあることだったから、
相手が吸血鬼だということさえ除けば、どこにでもある夜這い話と変わりはなかった。
仁井田の女房の相手はここのしきたりに従って、地酒をもって仁井田のところにあいさつに出向いた。
吸血鬼とくっついた女房衆が、入れ知恵したんだろうね。
まだその時分は、村の男衆とやつらとが言葉を交わすのは、作業場の忙しいなかだけでのことだったからね。
仁井田は持ってこられた酒を飲んだが、もともと酒は弱い男だったからすぐにねぐらに入ってしまい、
あとは女房に酌をさせて夜明けまでいっしょにいさせたそうだ。
どのつまりは仁井田の亭主も女房や娘を吸血鬼の人身御供に出すことを同意したということだ。
そう言えば、その時分から、仁井田の亭主の首すじにも、咬み痕がつけられていたっけな。

それからは、旦那が家にいるのに出かけるもんまであらわれた。
旦那衆もおうようなもんで、夜這いの衆と自分の女房が乳繰り合うのを見て見ぬふりを決め込んでおった。
やつらのしていろことは、このあたりのもんに言わせると、夜這いとさして変わりはないのだよ。

うちの話かね?
ああなにせ、ほかならぬ仁井田の娘がわしの女房なんでな・・・
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