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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

嫁の浮気帰り

2018年08月21日(Tue) 06:59:48

「お早う。瑤子さんまだ帰ってないの?」
リビングに降りてきたぼくを気づかわしそうに見あげる母は、なぜか紋付を着ていました。
「ウン、まだだよ」
ぼくはつとめて平静に、こたえました。
「かかっているのかねぇ・・・」
思わず露骨なことを口にする母を、「静枝」と父がたしなめます。
「だってねぇ・・・落ち着かないじゃないの」
母の気づかいは、却って気づまりでした。
そう。
妻の瑤子は夕べ、ぼくの親友の良太のアプローチを受けて、浮気に出かけたのです。
「瑤子が良いといったら」といって、ぼくが与えたアプローチのチャンスを、
女たらしで有名だった良太は、逃さずモノにしたのです。
ホテルに出かけていった瑤子は、夕べひと晩家には戻りませんでした。

やがて家の玄関がガタガタと音を立てて、瑤子が帰ってきたのがわかりました。
きっかり6時。
良太と約束した通りの時間でした。
ぼくが妻を貸すと約束した刻限ぎりぎりまで、良太は瑤子のことを弄んだのです。

リビングに顔を出した妻は、ぼくと両親の三人が三人とも起きていることに意外そうに目を見開いて、
それから後ろめたそうに視線をそらします。
「やあ、お帰り。お疲れだったね」
父がフォローのつもりでかけた声にも、瑤子はますます身を固くします。
「さあさあ、シャワー浴びてくると良いですよ」
母の言葉ももちろん、逆効果。
「あの・・・疲れていますので・・・寝(やす)ませていただきますね」
しいて浮かべようとした笑みは中途半端に引きつって、すぐに廊下へと取って返していきました。
きっと、シャワーを浴びてそのまままっすぐ寝室に向かうのでしょう。
「疲れているんですって」
小声で耳打ちしてくる母を父は目でたしなめました。
「ちょっと・・・わたしたちは出かけてくるから」
場を取り繕うようにそういうと、父は母を連れてそそくさと、さっき瑤子が帰って来たばかりの玄関を出ていきました。

遠くからシャワーの音が聞こえました。
シャワーの音が終わると、脱衣所で身づくろいをする気配がして、やがて階段をあがっていきました。
リビングから覗く廊下に一瞬映った瑤子の姿――驚いたことに瑤子は、夕べでかけて行ったときのスーツを着けていました。
うっかり着替えの用意を忘れてシャワーを浴びてしまった・・・と後で聞きましたが、それくらいうろたえていたのでしょう。
わたしは黙って、瑤子のあとを追って夫婦の寝室に入りました。
鍵を閉めるスキを与えずに。

わたしと向き合った瑤子は、洗い髪を波打たせ、白い顔をしていましたが、
わたしが近寄りキスをすると、恐る恐る応じてきました。
いままでの積極的な瑤子にはみられない振る舞いでした。
良太と2人きりの部屋でも、こんなふうにキスに応じたのか――
その場の空気を想像すると、ぼくは欲情を感じて、瑤子をスーツ姿のまま押し倒していったのです。
「良太さんも・・・こうだった」
瑤子の囁きは、良太がキリッとしたスーツ姿のまま弄んだことを告げていました。
ぼくは、その囁きを封じるように瑤子の唇をキスでふさぎ、
夫婦の刻は、いままでになく熱っぽく、過ぎていきました。

お昼近くになって、リビングに降りてゆくと、ちょうど両親が帰ってきました。
わたしたちに気を使う最善の方法は家からいなくなることだ――と決めていて、夫婦で出かけたはよいものの、
行き先に困ってしまい、けっきょくホテルの喫茶室でお茶をして帰って来たというのです。
「夕べのことは忘れさせてやりましたから、もうだいじょうぶ」
ぼくはわざと明るい声で、両親にそう告げました。
「忘れさせたといってもねえ・・・」
母がにこやかにぼくと瑤子とを等分に見比べて言いました。
「瑤子さん、すぐにまた思い出しちゃうわよ」
ホホホ・・・と笑い声を残して台所に向かう母を追って、
「お昼私が作りますから」
と、いつもの主婦の顔に戻った瑤子も台所に向かいます。

残された男2人は、苦笑を交し合うしかありませんでした。
「思い出しちゃうだろうね」
父が気の毒そうにぼくの顔を観ました。
「きっと、そうでしょうね」
ぼくも正直に応えました。
良太のいままでの所行を知っている以上、公平に見てそう観念するしかありませんでした。
妹のときも、兄嫁のときも、良太が飽きるまで二人の関係は続いたからです。
捨てる権利はもっぱら、良太のほうだけにあったのです。
「でも、気持ちよく送り出してやりますよ」
ぼくは胸を張ってこたえました。
良太が手を出すのはいい女ばかり・・・その好みのうちに瑤子が含まれていたことが、
瑤子を弄ばれたのとは別に、なぜかくすぐったいほど嬉しかったのです。

父は穏やかにほほ笑みながら、いいました。
「女はいちど覚えた男の味は、忘れないものだよ――母さんだって、そうだったんだから」


あとがき
幼なじみの悪友に妻を抱かれたあくる朝。
家族仲良く不器用に気づかい合いながら、嫁の朝帰りを出迎える――
あり得ない風景ですが、ちょっと描いてみたくなりました。^^
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コメント

「思い出しちゃうだろうね」
「きっと、そうでしょうね」
「女はいちど覚えた男の味は、忘れないものだよ―・・・」などと何気ない会話、有り得ない情景なのに、とても昂ぶりながら読んでしまいました。
NTRふぇちなんでしょうか、わたし(達)^^

by ゆい
URL
2018-08-23 木 06:25:19
編集
ゆいさん
NTRのなかには毒が秘められている。
そんな気がしますね。
露骨な言葉を並べるよりも、さりげない会話のほうがかえっていやらしい・・・そんな気がしています。
by 柏木
URL
2018-08-25 土 22:54:35
編集

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