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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

披露宴のホテルにて

2018年08月26日(Sun) 09:12:01

披露宴の時間が迫っていた。
ここはホテルの一室。
姪の結婚式に一家で招待されて、遠方から来たこともあってあてがわれた部屋だった。
礼服に着替えて隣室の息子の部屋のドアを開けると、
そこでは妻の弘美がベッドの上で、息子の康太とセックスの真っ最中だった。
「オイ、そろそろ好い加減にしないと、遅れるぞ」
私の声に弘美は振り向きもせずに肯きかえしてきて、
「わかってる・・・もうちょっとで、お、わ、る、か、らっ・・・」
と、返してきた。
息子のほうは返事をする間も惜しんで、妻との行為に熱中している。

はぁ・・・はぁ・・・
せぃ・・・せぃ・・・

せめぎ合う声にならないあえぎ声がふた色、部屋に満ちた。


30分後。
弘美と康太はおなじ部屋から、それぞれ着かえを済ませて姿を見せた。
「ちょっと・・・」
ジャケットの襟を直してやるその姿は、母親そのものの仕草だったが、
すべてを知っているわたしの目には、愛人に対する気づかいのように映る。
康太はさっきから、すこし前を歩く弘美の足許に、視線を集中させていた。
「きれいだね、母さんの脚」
康太は母親に聞こえないよう声をひそめて、わたしに囁いた。
てかてか光る肌色のストッキングに彩られたむっちりとしたふくらはぎが、
ホテルの廊下を颯爽と歩みを進めてゆく。
康太は披露宴の済むのを待ちかねているに違いない。
新郎新婦が新床を共にするのと同じ刻限、彼はわたしの妻を礼服姿のまま犯しているに違いないのだから。


弘美と康太の関係を知ったのは、長期の出張から戻ってすぐのことだった。
弘美は康太のことを「あなた」と呼び、康太は弘美のことを呼び捨てにしていた。
「おい、母さんを呼び捨てにするなんて」
わたしがそう咎めると、彼は羞ずかしそうにしながらも、
「でももう、そういう関係なので」
といった。

大学から戻ったときにムラムラとしていて、居合わせた妻に挑みかかったのがきっかけだった。
「母さんとはどうなんだ」
わたしが訊くと、
「いい身体しているよ、あと優しいし」
と、てらいもなく言ってのけた。
弘美は聞こえないふりをして、台所で洗い物をしていた。
「さいしょからさっきみたいに、仲良くなっちゃったのか?」
多少の嫉妬と悔しさを込めて、わたしは訊いた。
風呂あがりのあと、夫婦の寝室で乱れ合っている2人の痴態をふとのぞき見してしまったのを、それとなく告げたのだ。
「ううん、さいしょのときはすごく暴れた」
「終わったあとは、ぼくにわからないようにちょっと泣いたみたい」
「そのつぎに母さんを抱いたのはいつ?」
「その夜すぐに」
「母さんどうだった」
「”どうしても我慢出来ないの”って訊かれた」
「我慢できないって答えたんだな」
「ウン、そしたら、絶対内緒にするんだよ、外では人に迷惑かけないようにって」
母親らしい訓戒を垂れたあと、弘美は目を瞑り、すべてを息子にゆだねたのだった。

それまでは身なりにあまり気を使わなかった弘美が、
出張から戻って来てからはいつも、こぎれいに装うようになっていた。
たまたま康太が帰宅したとき、弘美も法事から戻ってきたところだった。
黒一色の礼服にひざ小僧の透ける黒のストッキング姿。
息子が欲情するのも無理はなかった。
それ以来。
弘美は康太の奴隷に堕ちていった――

披露宴が滞りなく済むと、康太は弘美の手を引くようにして、そそくさと会場をあとにした。
「若い人同士の二次会があるみたいだけど」
わたしがそう言っても、康太の耳には入らなかった。
「母さんのほうが良い」
そう告げると、今夜の弘美はぼくが独り占めにするからね、と、わたしに宣言した。
「好きにしなさい、わたしはちょっと出てくるから」
久しぶりの都会だった。顔を出したい店のいくつかを頭に描きながら、
わたしは妻と息子の二人きりの時間をつくってやろうとしていた。

どうしてこんなに、妻と息子の情事に協力的なのか?
応えることは難しい。
けれども息子は言っていた。
「(さいしょのときは)すごく暴れた。ぼくにわからないよう、ちょっと泣いた」
それでじゅうぶんだった。
弘美はわたしの妻として操を守ろうとして、果たせなかった後はちょっと泣いてすべてを入れ替えた。
涙の乾いたあと、弘美はわたしの妻から康太の愛人に変わったのだ。

長く絶えていた夫婦の営みが復活し、以前よりも熱っぽくなったのも、それ以来だった。
夫婦としての義理を果たしながら、息子との愛の時間もそれ以上に頻繁につくった。
「母さんはもう、貴男の持ち物なんですからね、しっかり愉しませてちょうだいね」
母親に背中を押されて、寝室に入っていく息子の後ろ姿。
ちょっとだけ愉しむつもりだった覗きが、いちぶしじゅうを見届ける結果になった。
これで良いのだ、と、思う。
息子は結婚するまで、母親を相手に性欲を満たし、
わたしはそんな息子の成長を慶びながら、妻の痴態を覗くという隠微な歓びにもめざめていった。
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