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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ねん挫。

2018年09月18日(Tue) 05:32:02

広い校庭のなか。
ふたつの人影が、全速力で走っている。
さきを走るのは、制服姿の少女。
あとから追いかけるのは、黒衣の吸血鬼。
(このブログのなかでは、見慣れた光景である)

吸血鬼は少女の血を吸おうとし、
少女はそうはさせまいと懸命に走っているのだ。

そのうち少女のほうがあっ!と声をあげ、
その場にまろび伏した。
足を痛めたらしく、足首を抑えて痛がっている。
吸血鬼はそのまま少女に駆け寄ると、ひと言「大丈夫か」と声をかけ、
少女の足許にかがみ込むと、やおら黒タイツを穿いた脚に咬みついた。

キャッ!
少女はさらに声をあげ、抗おうとしたが、ねん挫をしてしまった激痛に耐えかねて、抵抗の力を喪った。
卑怯だわっ!卑怯だわっ!
少女は血を吸い取られながらも、切れ切れな悲鳴交じりの叫び声で、相手を非難しつづけていた。

ひねった足首を丁寧にほぐし、入念にようすをみると、吸血鬼は言った。
「とりあえず応急処置はしたけれど、だいぶひどくひねっているから、医者に診てもらうしかない」
咬んだ傷口から少女の血液に織り交ざった毒液は、痛み止めの役目を果たしていた。
それでも少女は恨みがましく吸血鬼をにらみつけていたけれど、
自分に背中を向ける吸血鬼に大人しく負ぶさって、素直に背負われていった。
「自分の血を吸ったやつにおんぶするなんて!」と、奇妙な怒りかたをしながら。

そのあいだ。
校庭を見おろす位置にある職員室からは、だれも出てはこなかった。
無責任な学校!といいたいところだが、
この学校は吸血鬼に開放されており、生徒はもちろん女性教師の血まで吸い放題となっていたのだ。

翌日。
放課後の行程を、おなじ少女が軽くびっこを引きながら、重たい鞄を下げて歩いていた。
クラブ活動を終えて、家路につくところだった。
目のまえを黒衣の男が遮ると、少女は恨めしそうな目で相手をにらんだ。
「大丈夫か」
気づかう相手に、「どうにか歩ける」とぶっきらぼうに少女が応えると、
差し伸べられた手に重たい鞄を預けていった。

すこし距離を置いてとぼとぼと歩くふたつの人影が、
少女の家の間近にある公園のまえで立ち止まり、
どちらからともなく、中へと入っていった。
「少し休む」
少女はベンチに腰掛け、男はそのベンチに鞄を置いて、さりげなく距離を取った。

きのう黒タイツを破かれた少女は、真っ白なハイソックスを履いていた。
その足許をじっと見下ろしながら、少女は吸血鬼のほうは振り向かずに言った。
「きのうのお礼なんか、言わないからね」
それはそうだ。
そもそも吸血鬼に追いかけられなかったら、しないで済んだねん挫だもの。
「足、軽く済んで良かったな」
ハイソックスに隠れた足首に巻かれた包帯の薄さに目配りしながら、吸血鬼はいった。
「ウン、軽く済んだ」
少女は足許を見おろしながら、いった。
それからもうひと言、ためらいながらつけ加えた。
吸血鬼のほうには、目もくれないで。
「脚、咬んでもいいよ」
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吸血私娼窟~息子たち~

コメント

この題名を拝見して、柏木様が酷い捻挫をされたのかとびっくりしました。
何事もなくて良かったです。
それは、逃げ惑いますよね。足の痛みが引く頃には心が逃げられなくなってしまわないか心配です。
by 加納 祥子
URL
2018-09-23 日 13:30:01
編集
祥子さま
ちょっとドキッとするタイトルでしたでしょうか?
おかげさまで、どうやら柏木は命に別状ありません。
(^^ゞ

それにしても。
> 心が逃げられなくなって
さすがの表現力に、ざぶとん一枚!(^^)/
また長編小説、描き始めてみませんか~?
(^^)
by 柏木
URL
2018-09-24 月 00:07:04
編集

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