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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

≪長編≫ 吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 1 勤め人たちの献血

2018年10月21日(Sun) 07:45:57

はじめに。
今回は珍しく、長編です。
しばらくまえに病気をしたときに書きためたものを、すこし直してあっぷしてみました。

じつは、まだ完結していません(ほぼ完結状態なのですが)。
そのおつもりで、お愉しみください。^^


「お互い、情けないことになりましたな」
「いや、まったくそうですな…」
向かい合わせに腰かけて、背中を丸めて愚痴りあっているのは、ほぼ同年輩の五十に手が届こうかという分別ざかり。
しかし交わされる言葉の内容のわりには、彼らの語調には卑屈さも悲壮感もなく、職場の片隅でひっそり語られる世間話のような穏やかさに終始していた。
二人ともスラックスを片方ずつ、ひざのあたりまでたくしあげていて、淡い毛ずねの浮いた脛は、ひとりは黒、ひとりは濃紺の、ストッキング地の長沓下に包まれている。
傍らの壁に掲示されている月間予定表の罫線の引かれた業務連絡用の黒板はすべて空欄になっていて、注意事項が一箇条だけ黄色のチョークでおおきく書かれていた。

   供血希望者はストッキング地の膝下丈のハイソックス(紳士用可)
または婦人用のストッキングを着用の上勤務すること。

濃紺の沓下の男の足許には小学生くらいの女の子が、もうひとりの黒沓下の男のほうには野良着姿の老人がむしゃぶりついて、薄黒いナイロン生地にしわを寄せている。
この村に棲む吸血鬼たちは、ストッキングを穿いた女の脚に好んで咬みつく習性をもっていた。
すね毛の浮いた中年男の脚などに咬みついて頂くには、“みば”だけでも良くするのがエチケットとされていたのだ。

吸血鬼たちは、働き盛りの男性の持つ活力のある生き血を求めてこの事務所に出入りしては、馴染みになった職員をつかまえて、日常のご馳走にあずかっている。
事務所内に立ち入ってきた吸血鬼にひっそりと手招きされると、職員たちは執務中でもペンをおいて席を起ち、この打ち合わせスペースにしつらえられた会議用机の席に移ってきて、自分の血を目あてに現れた顔色のわるい老若男女のために、スラックスのすそをむぞうさに捲りあげるのだった。
濃紺の靴下の主も、黒靴下を履いた男も、いつもと同じ相手に手招きされると、片手間のような不熱心さで取り組んでいた事務仕事を放りだして、こちらの席に移ってきた。
ふたりとも、咬まれるまえのすこしの間、小首を傾げしかめ面をつくった。
ストッキング地の薄手のナイロン生地ごしに、なま温かいべろがねっとりとしつこくなすりつけられて、ぬるっとしたよだれをジュクジュクと沁み込ませてくるのを感じたからだ。
自分の父親ほどの齢と思われる男が、同性である自分に欲情している――そう思わざるを得ない状況に、黒沓下の男はゾクリと胸をわななかせた。
足許に這いつくばったみすぼらしい老爺は、都会帰りの息子の嫁をモノにしたと自慢していたが、同じ年恰好をした自分の妻もモノにされてしまっていることを改めて思い出す。
彼らは寝取った人妻の夫までも、愛する性癖をもっていた。

表情を消した中年男たちは、向かい合わせに座ったまま、
互いの視線をさけるようにして、足許からチュウチュウとかすかにあがる吸血の音に、薄ぼんやりと耳を傾けていた。



濃紺の長沓下の男は月田といって、この春当地に転任してきたばかりだった。
それまではずっと、都会の事務所を転々としてきた。
妻も娘も、都会生まれの都会育ち。この村とはなんの縁故もなかった。
しいていえば―――この会社のオーナーが、この村の出身だった。
入社してすでになん十年ともなると、任地についてのぜいたくは禁句というのが常識だった。
まだしも、彼の場合は恵まれているというべきだった。
かなり込み入った性格試験や何回にもわたる面談のすえ、秘密厳守という誓約書にサインまでさせられた上ここのポストを打診されたのだから。

不思議な部署だった。
仕事らしい仕事はとくに与えられず、そのくせ彼のキャリアや年齢からすると、びっくりするほどの高給。
ただし家族を帯同することが義務づけられていた。
この部署の人間にしいて仕事があるとすれば、それは地域との交流・親睦活動だった。
この村には、外部には固く秘された風習があった。
一部の村人の間に吸血の習慣があり、それは直接皮膚を咬んで経口的に行われるという。
この村の赴任者が要求されたのは。
村に棲みつく吸血鬼たちに血液を提供することであり、家族を帯同するのもまさにそのためであった。
山あいの小さな村に棲む住民たちの限られた血液提供者だけでは、吸われるべき血液の量が不足がちになることを憂慮した会社のオーナーが、
過疎化で慢性的になりつつあった血液不足を解消するために、自社の社員や家族で埋め合わせをはかろうとしていたのだ。
家族全員が血液提供者の輪にくわわると、その社員はぶじ職責をはたしたものと見なされるのだった。

田舎の歪んだ風習に染まって、自分ばかりか家族までもが土地の者たち相手に生き血を吸われる―――
なんとも異常でおぞましいはずの部署だったが、会社の打診に応じて赴任してくるものも、細々とではあるものの、あとがたえないのも事実だった。

月田の場合、身内の金銭トラブルで巨額の借金を抱えていた。
娘は引きこもりになりかかっていた。
生命の保証付きときいて、なにかに追われるような日常に疲れきった彼の妻も、気抜けのした顔で賛同した。
娘さんにはあとからの説明でじゅうぶんでしょう、という人事担当者のいうことを鵜呑みにして、めんどうなことは後で考えることにした。
というよりも、いまの出口のない状況を考えると、ほかにもっとましな選択肢は、ないように思われた。
しかしその見込みがやや甘かったことを、彼は薄々ながらさとることになる。
ほかならぬ目の前に向かい合わせに座って、せっせと地域交流に励んでいる男の送る日常が、彼とその家族の未来を憶測させてくれたのだ。

いま彼の向かいに座っていて、老人の農夫に黒靴下を噛み破らせてやっている男は、妻を帯同していた。
息子はすでに成年に達していて同居もしていなかったので、帯同の義務は生じていなかった。
月田よりも半年ほど前に着任した彼の妻には、すでに公然の愛人ができていた。
妻の情夫は村の長老のひとりで、現にいま、夫である彼自身の黒沓下の脚に噛みついている男だった。
そう、いま彼は、自分の妻を日常的に犯している男のために、血液まで提供している・・・
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コメント

まだ読みもしていないのに、コメントする失礼をお許しを。暫く途絶えていた様子でしたので心配してましたが、長編がドカーンとアップされて安心しました。お話の方は、これからじっくりと読ませてもらいますね^^;
by ゆい
URL
2018-10-21 日 20:45:03
編集
ゆい さん
お久しぶりです!

ウチにしては珍しく、スポンサーサイトが出てしまいました。
^^;
一か月あっぷが途絶えると、表示されるみたいですね。

お話のだいたいのすじがきは、愛読者のゆいさんならたいがいお察しの通りの展開ですので、
面白そうなところだけ拾い読みしていただいてもだいじょうぶですよ。(たぶん)
(^_-)-☆


ぜんぶで20話くらいのボリューム感なので、へこたれずについてきてくださいね。(笑)
by 柏木
URL
2018-10-22 月 00:12:01
編集

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