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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 2 黒沓下の男の身の上

2018年10月21日(Sun) 07:57:02

黒沓下の男の妻が長老の愛人の一人に加えられたのは、着任そうそうのことだった。
老人の家の法事の手伝いという名目で寺に集められた婦人たちの中に含められた彼女は、そこが初めての供血の機会になることを薄々予感していた。
むろん彼女も、夫が彼女を伴って赴任するという土地の風習を、あらかじめ聞かされていたのだった。
そうまでしてまでいままでの日常を捨てざるを得なかった理由は、ひととおりでないものがあるはずだったが、彼女は決してそれを語ろうとはしなかった。
寺に集められた婦人たちは、黒の礼服の着用を義務づけられていた。
彼女もまた他の婦人たちと同じように、薄黒の沓下に足許を染めて、よく磨かれた本堂の床につま先をすべらせた。
そこには仕事らしいものはなにも用意されてなく、広間に居並んだ彼女たちは一人一人、それぞれ別々の男女に手を引かれ、小部屋へと引き入れられていった。彼女はそこで初めて血を吸われた。
首すじを咬まれ痛痒く疼きはじめた傷口を抑えた彼女は、どうして黒の礼服なのか覚ることになった。
たたみの上に彼女の脚を抑えつけた吸血鬼は、黒のストッキングのうえから存分に舌をふるって欲情もあらわに辱しめをくわえ、挙げ句にブチブチと咬み破っていったのだ。
彼女は、弔いのための装いがそのまま、彼らのふらちな欲情を満たすための馳走になることを知った。

礼服を着崩れさせながら、当然のように犯された彼女は、
齢不相応に旺盛な老人の性欲に戸惑い、辟易し、そしてさいごに、積極的に応えてしまっていた。
別れ際投げられた、夫に黙って呼び出しに応じるように・・・という誘いに、目を瞑ったまま頷いていた。

老人には六、七人ほどの専属の愛人がいた。
それ以外に、不特定の吸血鬼の相手をする一般の住人たちからも、時々血の提供を受けていた。
ひとりの人間から採れる血の量には限度があり、善意の供血者の健康を損ねないために、老人は愛人たちのあいだを順繰りに往き来しているのだった。
老人は、みずからの干からびた血管を、この都会育ちの人妻の血潮で浸すことに満足を覚えた。

妻が密会をしているという事実を黒沓下の夫が知ったのは、長老本人からだった。
寺での密会の直後、事務所にあらわれた長老は、着任そうそうというだけの理由で、中年でさして血の美味そうなわけでもない彼を指名した。
大物のご指名ということで周囲から驚きと称賛のどよめきを勝ち得た彼は、他の同僚がそうしているように、会議テーブルに移ってスラックスのすそを引き上げ、まだ履きなれない薄い沓下の脛をあらわにした。
沓下の色は、老人が指定した。
さっきこの男の妻の脚から咬み剥いだストッキングと、同じ色だった。
夫婦で同じ色の靴下を履かせてそのふくらはぎに咬みつくことに、老人は異常な歓びを覚えた。
夫はまだその時点では知らないことではあったが、妻が経験したのとおなじ初めての疼痛を、足許に染み込まされていった。
相手の男がさっき妻を犯してきた男とはつゆ知らない夫の体内から獲た働き盛りの血液は、老人の体内で妻から吸い取った熟れた血液と交じり合った。
夫婦の血からもたらされる温もりに、老人は目を細めた。

「いい人に見込まれましたね」
同僚たちは、真顔で彼を祝ってくれた。
初めて供血をしたその日は、事務所内でビールが振る舞われ、ふくらはぎに疼痛の余韻をじんじんさせながら、本人だけは特別にと、祝い酒の盃まで用意された。
帰宅した夫の沓下が破れていたことに、妻はなにもいわなかった。
もちろん彼女は、何もかも弁えたうえで黙っていたのだが、
自分の身になにが起きたのか言葉を交わすことなく事情を伝えることができたことを、彼は好都合だと感じた。

早くも翌日には二度目の御成りがあった。地位の高い吸血鬼の来訪は、とくにそう呼ばれていた。
さっそくスラックスをひきあげた片脚に咬みついて、ストッキング地の沓下をはでに破いてしまうと、
もう片方の脚にも取りついて、薄い沓下の生地をクチャクチャと露骨に舌を鳴らしてしわ寄せながら、彼のことをにんまりと見上げていうのだった。
「奥さんの沓下とはまた違った、エエ舌触りじゃ」
え?と怪訝そうに首を傾げた彼は、すぐにすべてを理解した。
男が黙って差し出した紙片には、こう書かれていた。

貴方のご令室には何月何日に当家の法事にご列席賜り、
その席上で格別のご厚意を頂戴した。
当村の仕来たり上、吸血の際は夫婦同然の縁をとり結ぶことになっているが、
ご令室には忝なくもご快諾いただき、その場でことの成就に及んだ次第。
夫君におかれては本来、事前のご承知おき賜るべきところであるが、
時宜やむを得ず次第が前後した。
まげてご承引ありたい。

なお、貴兄の好むと好まざるとにかかわらず、
今後、貴兄のご令室がその身に宿す血液を日常的に摂取することを申し添える。

                   (署名)

貴殿の有難いお申し出とご配慮に感謝し、
ここに改めて、貴殿と妻との交際を認め、
最愛の妻の貞操を貴殿に無償で進呈することを誓約します。


よく見ると紙は、視たこともないほど上質のものだった。
注がれる鋭い視線に辟易しながらも、夫は持たされた筆で、さいごにかかれた三行のすぐあとに、自分の氏名を書き込んでしまった。
書き込む瞬間、男に咬まれた傷口が狂ったように疼き、異様な歓びに胸の奥が打ち震えるのを、はっきりと感じながら・・・

黒靴下の男がほろ苦い笑みを含んで見せた誓約書の内容に、新来の同年配の赴任者である月田は、濃紺に染まった足首を震わせて、自分たち家族のまがまがしい行く末を、はっきりと予感したのだった。
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