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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 3 月田氏、吸血娘の餌食になる。

2018年10月21日(Sun) 08:03:29

「あー、お嬢ちゃん、もぅ少し手加減してくれないかな?おじちゃん貧血になっちゃうよ。」
月田はきょうも、濃紺の薄手の沓下を履いていた。
彼はさっきから足許にうずくまっている少女に、まるで近所の顔見知りの女の子に対するように親しげに話しかけたが、
そのじつ彼女の素性については、村に棲む血を吸う習性をもった女の子という知識しかないのだった。
何しろ顔を合わせるのは、きょうみたいに血を吸い取られるときだけだったから。

少女は案外もの分かりよく顔をあげて、吸い取った血に染まった口許から白い歯をみせ、ニッと笑った。
「ああそうね。おじちゃんトシだもんね。いいよ、きょうはこれくらいで勘弁してあげる」
彼女は、男の履いている沓下の破れ目にもう一度口をつよく吸いつけて血をもうひと啜りだけすると、
たくし上げていたスラックスをあきらめ良く降ろして口を拭った。
「お嬢ちゃん、聞き分けがいいね。いつも私なんかのまずい血を吸ってもらって、すまないね」
しんそこそう思っているらしく、彼の言葉つきは、少女の小さな背中を撫でるようないたわりに満ちていた。
少女は、今年中学二年になる彼の娘よりも、まだずっと小さかった。

少女がこの事務所にくるようになって、1週間くらいになるだろうか。
それともすでに、10日ほどにもなるのだろうか。
記憶のほうもさだかではない。
執務中首のつけ根のあたりにチクリとかすかな痛みが走ったのが始まりだった。
噛まれた首すじを抑えて振り返ると、いつの間にそんなことをしたのだろうか、彼の席のすぐ後ろにわざわざ椅子をひとつ持ってきて、その上によじのぼって背伸びをして、少女は彼の首すじを吸いはじめていたのだった。
気がついたときにはもう、咎めることさえできない状態になっていた。
彼女はがんじがらめにした獲物の首すじに取りついて幼い歯で皮膚を咬み破ると、おもむろに血を吸いつづけたのだった。
くいっ・・・くいっ・・・と、猛禽類が獲物を漁るときのような、獰猛な音を立てて。
それが、月田の供血体験のはじまりだった。

少女が事務所に現れるようになって数日後のことだった。
吸い取られる血の量はさほどでもなかったけれど、毎日ともなるとさすがに、疲労が累積する。
きょうは退勤まで来なかったなと内心ほっとしながら、それでも半分は拍子抜けして通勤鞄を手にすると、スラックスのすそを引っ張られた。
事務所のまえには彼女の父親らしい、自分とほぼ同年輩のごま塩頭の男が、草色の作業衣姿で佇んでいた。
「おとうさん」少女はひと言そういって、あとは目で訴えている。
どうやら父親の目当ては彼の血ではないらしい。
ああそうか。彼はすぐに気がつくと、自分の察しのわるさを恥じるように頭を掻いて、「どうも」と相手の男に会釈した。
男もぎごちなく挨拶を返すと、これも一言だけ「よろしく」と低い声でいった。
不器用なもの同士の共感がお互いのあいだに流れ、ちょっとだけ打ち解けた雰囲気が漂った。

それでじゅうぶんだった。

月田は、この男なら妻を襲わせてもよいという気になった。
この村に越してからもいまだに都会妻としてのプライドを捨てず、いつもこぎれいに装っている妻と、
薄汚れた作業委姿の貧相な男とが、なぜかとても似合いなように感じられた。

「行こう、ね?」
ナギは得意げに、ニッと笑った。
三つの人影は都会から越してきたばかりの彼の宿舎――なにも知らないその妻が待つ――を、まっすぐ目指した。
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