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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 8 お洋服代

2018年10月22日(Mon) 06:48:37

節くれだった掌に籠められた握力が、ヒリヒリとした余韻となってまだ残っている。
この握力が妻の身体を抑えつけたのか。
痩せ身の妻に備わった貧しい筋力では、とうてい抗いようがなかったにちがいない。
抵抗を諦めた妻の股間を、血を吸う男は容赦のない荒々しさで踏み荒らしていった。

夫が濡らしたスラックスまで自分の情夫となった男にていよく押しつけてしまった妻は、そそくさとお昼の支度に取りかかっていた。
「かんたんなものしかできませんよ。あなた帰ってくるなんて、思わなかったから」
日常にかえった妻はいつもの愚痴っぽさを取り戻して、台所で立ち回りはじめている。
昼食の支度は手を抜いて、火を使わないですますつもりのようだった。
「これは・・・?」
ちゃぶ台に座ると、見なれない封筒が置かれているのを夫は見とがめた。
「あぁ、それ?お洋服代ですって」
こともなげに応えを投げてきた妻に、夫はちょっと顔をしかめた。
「お返ししてきなさい。こんど伺ったときでいいから」
任地になじむために地域の風習に従うのは、今さら異存をいう筋合いではなかった。
しかしそれはこちらからの一方的な好意によるもので、金銭ずくでどうこうするのはなんとしても気が引けるのだ。
「そうか知ら」
夫人は同意しかねる、という顔つきをした。こちらをまともに見返してくる妻の視線にたじろいで、夫はすこし、いいよどんだ。
「だってお前・・・それじゃあ売春みたいじゃないか」
え?
小首を傾げて怪訝そうな表情だった。
あからさまな情事の現場をこの目で視なければ、男との肉体関係について、妻の潔白を信じたかもしれなかった。
夫人はいずまいを正すと、
「あなたのおっしゃる通り、あなたも含めて皆さん善意でなさっていることだから、血を差し上げることへの見返りは、もらうべきじゃないですわね?」
そこまでいうと、彼女は穏やかなほほ笑みを浮かべた。
「献血のときにお洋服が汚れるのは仕方のないことだけど、クリーニング代や着替え代はわしのほうでどうにかすべきだろうって、先様は心配してくだすっているの。でも、貴方の仰るとおりお金のことはきちんとしましょうね。このお金はわたしが責任もってお預かりします。家計簿とはべつにして、あの方たちにお目にかかるときのお洋服代だけに使いますから」
節子は言い終わると、ニッと笑った。
血を吸う男の腕のなか、あらぬことを口走ったときと同じ笑みだった。
淡いピンクの唇が弛んで、白い前歯が淫蕩な輝きをみせた。
思わず伸びた腕がモスグリーンのカーディガンを着た節子の肩を掴まえた。
節子は軽く吐息を洩らし、戸惑ったようにいった。
「あの子・・・きょうは午前中で帰ってくるわ・・・」
首筋に這わされた唇の熱さに声を詰まらせながら、女はひくい声で夫をたしなめつづけた。


ただいまぁ・・・
まゆみはそういって玄関に入ろうとして、危うく声を呑み込んだ。なかの雰囲気があきらかに胡散臭かったから。

「・・・ァ。」

圧し殺すような女の呻きが、低くくぐもって聞こえてきた。
屋内に立ち込める薄い闇を見透すように、少女は上背の足りない制服姿をつま先立ちさせたが、やがてなにかを追い払うようにかぶりを振って、セーラー服の襟をひるがえしてまわれ右をした。
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