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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

少女を襲う老婆

2006年03月03日(Fri) 08:10:23

オレンジ色のハイソックスのふくらはぎを。
黒のストッキングの太ももを。
襲った女の子が倒れてしまうと、
その老婆はニタニタと嬉しげな笑いを浮かべてその子の足許ににじりよって。
こぎれいに装った長靴下を、いじりまわして。
べろや唇でくしゃくしゃにしていたぶってゆくのだった。

お願いですっ。見逃してくださいっ・・・
好色そうに笑みくずれながらよだれをしたたらせてくる老婆に抱きすくめられたミナちゃんは、
三つ編みのおさげを振り乱して身を揉んで泣きじゃくっていた。
ちょっとだけかえりみたものの。
怖くて、とうとう自分だけ逃げてしまったあの夕方。
助けを求めた男の人たちがかけつけたとき、
気を失っているミナちゃんの足許では、まっ白だったハイソックスが脱げかかっていて、赤黒い飛沫に濡れていた。
それ以来。
佳代は学校の行き帰り、いつも白のハイソックスを履くようになっていた。

ひたひた・・・ひたひた・・・
自分の足音だけがこだまする、夜更けの住宅街。
街灯に鮮やかに浮かび上がる白のハイソックスのふくらはぎがふと、歩みをとめた。
びくっと、なにかを怖れるようにして。
佳代の目のまえで背中をまるめているのは、あのときの老婆だった。

ククク・・・
ただれた口許から洩れてくる忍び笑い。
逃がさんぞえ・・・
そういっているようだった。
だしぬけにあらわれた老婆にかすかにひるんでみたものの。
佳代は逆に老婆のまえにたちふさがるようにして。
じいっとにらみあっている。

―――みんな、迷惑しているんです。厭がっているんです。
―――なのに、どうしてこんな、ひどいことするんですか?
少女のストレートな質問に、老婆はちょっと驚いたようだった。
その姿を目にした少女はだれでも縮みあがって、
一目散に逃げ出すか、立ちすくんで口もきけなくなってしまうかするのがつねだったから。
「そう、ゆうてもなぁ」
老婆はみるからにひもじそうに声をふるわせて、物欲しげな上目遣いで佳代のほうを窺った。
「痛いんです。つらいんです。服汚されるのだけでも、悔しいんです。私たち」
もはや捨て身になって、老婆にそう訴える少女。
たしかに生命を落としたものはいなかった。
しかし意識不明になって病院にかつぎこまれたものや、
夢遊病のように数日間、正気を取り戻せなかったものもいた。
「それに、ミナちゃんだって・・・」
娘はとうとうこらえきれなくなって、自らの両手に顔を埋めた。

「このあいだの娘じゃな?」
冷酷無慙な吸血鬼も、どうやら佳代の親友のことを憶えていたらしい。
「ひどく泣きじゃくっておったからのう。気の毒ゆえ手加減してつかわしたつもりなのじゃが」
抱きすくめた腕のなかで泣きじゃくりながら血を漁り取っていった少女のことを愉快そうに反芻しながら、
老婆は目のまえの少女があのとき咬んだのとおなじ白のハイソックスを履いているのに気づいている。
「さてと。今宵はそもじの番じゃ。覚悟はよいな?」
にたり、にたりと笑みくずれながら、老婆は少女を追い詰めてゆく。
「ひ、ひどいっ!これほど言っても、見逃してくださらないの?」
少女の抗議を体ごと押し包むようにして。老婆はひと言、
「喉がかわいた」
そういって、佳代のうなじにしわくちゃな唇を圧しつけていた。

うなじのつけ根のあたり。
ちくり、と刺し込まれてくるかすかな痛み。
思ったほど、痛くない・・・
そんなふうに思いながら。
ちゅ、ちゅー・・・と静かな音を洩らしながら、生温かい血液が吸い出されてゆくのを、
軽い眩暈を覚えながら耐えていた。
どれほどの刻が過ぎ、どれほどの量の血液を喪ったことか。
佳代は醜い腕に抱かれたまま、立っている力を喪った。

しわくちゃの唇がぬるぬると、ハイソックスのふくらはぎにすり寄せられてくる。
厭わしげに眉をひそめると、老婆はかえってそそられたらしく。
ひどく嬉しげな様子で、佳代の顔をのぞきこんできた。
もぅ。ひどい・・・
しんそこ恨めしげに睨み返すのをくすぐったそうに受け止めて。
老婆は少女の装いを、遠慮会釈なくゆがめてゆく。
「ひ・・・ひどい・・・っ」
少女はこんどこそ、泣き崩れていた。
怯える肩を震わせて泣きじゃくる小娘。
友だちのときと、寸分かわらぬ姿だった。
老婆の脳裡にかすかな記憶がよみがえる。
黒髪の若い女。
すべてを諦めきった甘苦しい笑みを絶やさずに。
「もっと・・・いいのよ・・・」
牙にあやされた淫らな体液に毒されてゆく、若く美しかったかつての己自身。
老婆は人知れず神妙な顔つきになって。
それでも少女の背中をさする手を止めようとしなかった。
いたわりを込めてくるのが伝わってか、少女は肩の震えを止めている。

「どうじゃ?ええ心地じゃろう?」
確信をこめてそう語りかけてくる老婆。
佳代は夢中になって、こくりと頷いてしまっている。
ずりおろされたハイソックスをもういちど、ひざ下までひきあげて。
「いいよ・・・咬んでも」
お友だちも、さいごにはわかってくれての。
ちょうどいまのお前のように、心優しく相手をしてくれたのだよ。
そう語りかける老婆に、素直に頷いて、
純白の長靴下に滲み込んでゆくばら色の濡れを面白そうに眺めている。
そういえば。
いちど襲われた少女たちはだれ一人、帰り道を変えたりはしなかった。
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