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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 9 少女ふたり

2018年10月22日(Mon) 07:23:03


逃れるように立ち去った家の前からすこし歩くと、横なぐりの風の向こうに、ちいさな人影がまゆみと差し向かいに佇んでいた。
自分よりずっと年下のその少女は、こちらが気まずくなるくらい、長いことひっそりと押し黙っていた。
「なぁに?あたしに何か用!?」
我ながらいやになるくらい、苛立った声をしていた。
少女は白のブラウスに真っ赤な吊りスカート、背中には赤いランドセルを背負っていた。
自分がとっくの昔に卒業したはずの服装だった。相手は、年端も行かない子供だった。
それだというのに、この苛立ちはなんだろう?
ずっと年下のこの子に、あたしは気圧されている、なんて、意地でも思いたくなかった。
少女は齢に似合わない冷ややかな態度で、にやりと笑った。
およそかわいらしさのない、昏く獣じみた笑いかただった。
棒立ちになったセーラー服姿にゆっくりと歩み寄り、すれ違いざまにふたりだけに聞こえる声でいった。
「あたし、お姉ちゃんの父さんと母さんの秘密知ってる」
砂ぼこりを含んだ横風に真っ赤なスカートをたなびかせて、少女はそのまますれ違っていった。おなじ横風に紺のスカートを吹きさらし、ぼう然と立ち尽くしたセーラー服姿を置き去りにして。


ナギが、真っ赤なスカートのすそをつまんでつまらなそうにぶらぶらと歩いていると、道の向こうからうっそりとした人影が近づいてきた。
どうやら、自分のことを待ち構えていたらしい、と、ナギは本能で感じた。
彼女は埃まじりの風の彼方を見通そうと目を細めた。血を吸える相手なら、年寄りでも男でもよかった。
土地のものならたいして抗いもしないで首すじを噛ませてくれることを少女は知っていた。
けれども彼女はすぐに、がっかりした顔をして「なんだ、父ちゃんか」といった。
肩を怒らせた父親がそこにいた。
「あの娘になに話した?」
手かげん抜きの詰問だった。
「父ちゃん、へんだね」
父親の怒り声にも、少女は動じなかった。
「いっぱい吸ったあとなんでしょ?あの小母ちゃんの血」
少女は黙って、父親に手首を片方差し出した。
ふたつ並んだ咬み痕が、どす黒い痣になって、少女の手首に滲んでいた。
父親は娘の手首を両手で掴まえると、性急に唇を押し当てた。
男は分厚い唇を咬み痕に這わせると、つよく吸った。
じゅるうっ・・・と、汚ならしい音があがった。
少女は白い顔をして、父親の狂態を見つめていた。
「どこの家さ、上がり込んだ?」
父親の問いに、少女はこたえなかった。
「どこだっていいじゃん」
少女は父親をからかうように笑った。
血の出がおさまった傷口から男が紅いしずくを舐め取ると、少女はいった。
「あたしも、あのお姉ちゃんの血を吸いたい」

秘密
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