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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 12 餌食にしている少年の彼女を練習台にする

2018年10月24日(Wed) 05:37:39

公園のまえを通りかかった霧川朋子は、〇学生くらいの女の子が公園の入り口ちかくにうずくまるようにしてしゃがみ込んでいるのを見かけた。
学校帰りの彼女は黒のストッキングを履いた脚をとめて、ちょっとのあいだ怪訝そうにその女の子のことを窺った。
女の子は、ひどく怯えているようだった。
朋子は素通りしてはいけない気がして、
「どうしたの?お腹でも痛いの?」
と、その女の子に声をかけた。
女の子はしゃがんだままこちらを振り向いて、見慣れないお姉さんのことを疑り深そうな目つきで見あげた。
このあたりでは見かけないジャンパースカートに赤い紐ネクタイの制服が珍しいのか、彼女は朋子の制服姿を頭のてっぺんからつま先まで、無遠慮にじろじろと眺めた。
朋子は明るく笑って、
「べつに怪しい者じゃないわ。あたし隣町の学校に通っていて、お友だちのうちに寄り道してきたの。お祖母ちゃんもこの村に住んでて、これからお祖母ちゃんのおうちに行くところなの。三丁目の豊村っておうち、知ってる?」
女の子はみじかく、「知ってる」とだけ答えた。消え入りそうな声だった。
朋子は女の子のそばに自分もしゃがんで、彼女とおなじ高さの目線になって、
「どうしたの?お姉さんにできることがあったら、話してみて」
と、親身に話しかけた。
女の子は、黒のストッキングに透けた朋子のひざ小僧をもの珍しそうに、間近にじいっと見つめると、「怖いの」とだけいった。
「えっ、なにが?」
「ナギのおうちね、公園の向こうにあるの。でもこの公園怖いお化けが出るの。ひとりじゃおうちに帰れない!」
女の子はやっとのようにそう呟くと、もうなにも訊かれたくない、というように、両手で顔を覆ってしまった。

「困ったなァ・・・」
どうやらナギというこの女の子は、鍵っ子らしい。
それにしてもまだこんなに明るいのに、「お化け」とはどういうことだろう?
朋子は公園の向こう側にあるというナギの家の方角をみたが、ちょっとした木立ちや生け垣があるだけの見通しのよい公園で、左右は住宅地に挟まれていた。
それらの家々の二階の窓からは、公園の隅々まで見渡すことができるはずだった。
奥行きこそ多少はあるものの、向こう側の家並みの屋根瓦も、わずかながらではあるが木立ちの向こうに見え隠れしているのだった。
朋子は三丁目の祖母の家に行くのに、この公園を横切るほうが近道だと気がついた。
「いいわ。お姉ちゃん、ナギちゃんのこと公園の向こうまで送ってってあげる。お祖母ちゃん家(ち)に行くのも、そのほうが近そうだから」
「ほんと!?本当?お姉ちゃん、ありがとう!!」
ナギは無邪気に笑って、小躍りした。さっきまでの塞ぎ込みようなど、きれいに忘れてしまったようだった。
「じゃっ、行こ」
朋子なナギと手をつないで、なんの警戒心もためらいもなく、公園のなかに脚を踏み入れた。
よっぽどこの公園が怖いのか、ナギは朋子の手を痛いほどギュッと握り締めていた。


不幸にして朋子は、この公園が村でなんと呼ばれているのか、祖母からまだ聞かされていなかった。
さすがにそれを教わっていたとしたら、彼女も公園を横切ることを躊躇したに違いなかった。
この公園はこの界わいで、「お嫁に行けなくなる公園」と呼ばれていた。


公園の中程まで来たときだった。
ナギは朋子の手を掴まえていないほうの手の指をいきなり自分の口に突っ込んで、「ピィー!」と唇を高く鳴らした。
「?」
朋子が訝しげにナギを見返ると、ナギは親切なお姉ちゃんのほうには目もくれないで、
「父ちゃん、こっちこっち!うまく捕まえたっ!」
まるで草むらできれいな蝶々を捕まえた子どもみたいに、得意そうな声を張り上げた。
「えっ!?」
朋子が目をまるくしたときにはもう、遅かった。
公園の出口のほうに向き直ると、そこには薄汚れた作業衣の年輩の男が、赤ら顔を怒らせて立ちはだかっていた。

「お姉ちゃん、怖いっ!」
ナギはあくまでも怯える女の子を装って、朋子のジャンパースカートの腰に抱きついた。
意外に強い力だった。
お化けの小父さんのことを怖がってすがりつくように見せかけて、ナギは自分よりずっと歳上の女学生を、たくみに羽交い締めにしていくのだった。
朋子は事態がよくのみ込めないままに、さいしょはナギの手を引いて公園の向こうの出口まで走ってたどり着こうとし、
その逃げ道を未知の男に遮られると、ゆっくりと迫ってくる男の脇をなんとかすり抜けようとした。
しかしナギが朋子のことを後ろからしっかり掴まえていたのに手足をとられ、思うように動きがとれず、ただ徒らに身を揉んで脚をばたつかせるばかりだった。
どういうわけか、男の動きはやけにスローモーで、まるで電池の切れかかった人形のようだった。
相手がこの年輩男だけだったら、朋子は辛くも難を逃れることができたかもしれない。
けれどもナギに掴まえられた朋子はどうすることもできずに男に抱きすくめられていった。
「アァーー!」
悲しげな悲鳴がひと声、あたりの空気をつんざいた。
後ろから腕をまわしてお尻に抱きついてくるナギと、前から迫ってくる作業衣の男に挟まれるようにして、朋子は男に咬まれた首すじから赤い血を滴らせた。
あれよあれよという間に、濃紺のジャンパースカートを着た朋子の身体は草色をした作業衣の腕に巻かれていって、
白いブラウスのえり首に紅い飛沫を散らしながら、白いうなじをなん度もなん度も、繰り返し咬まれていった。
あたりには少女の悲鳴が切れ切れにあがったが、周囲の家々からはなんの反応もなく、ただ無表情に窓を締め切っていたのだった。

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二時間後――
あたりはすっかり、薄暗くなっていた。
「いい練習になったね」
ナギは得意げに、父ちゃんのことを見上げた。
「あんなにうまくだませるなんて、思わなかった」
「あの娘の親が見てたら、泣くだろうな」
男は、父親らしい感想をいった。
通りすがりに目にした小さな女の子が怯えているのを気の毒がって、善意に手をさし伸べたのが、まちがいのもとだった。
「あの子が優しいばっかりに、こんなことに・・・」
もしもあの女学生が死んでいたら、母親が涙声を詰まらせるところだろう。

「きょうの子は、かなりなお人好しだな。都会の娘っ子は警戒心が強そうだから、きょうみてぇにひとすじ縄じゃいかねぇかも知んねぇぞ」
男は考えぶかげに目を細めた。
「ウンウン。あたしもそんな気がする。まゆみちゃんってのんびりしてそうで、意外と抜け目ないかも」
ナギは調子のよい声で父親に応じ、まだ口許を濡らしている血のりを手で拭った。
「ほれ!そうすっからまた顔が汚れる・・・」
「いいもん。あたしあのお姉ちゃんの血、気に入った」
ナギは父ちゃんが叱るのも聞かずに、血のりで毒々しく光る頬を街灯にさらした。
「まるで化けもんと歩ってるみてぇだ」
おっかないものでも見るような目つきをして毒づく父親に、
「化けもんじゃない。あたしたち」
ナギは明るい声で父ちゃんの言いぐさを肯定して、開きなおった。娘の言い分もとうぜんだった。
きょうの獲物は、ナギにいつも血を吸わせてくれている隣家の少年の彼女だった。

「あのひと、賢司お兄ちゃんのお嫁さん候補なんだよね?」
春先までつづいた受験勉強の合い間に、息抜きをかねて血を吸わせてくれた善意の少年は、隣町の高校に進むとすぐに彼女をつくり、ナギとの約束どおり吸血の対象として朋子を紹介してくれたのだ。
「あした僕の家を訪ねてきた女の子が、家を出るとき黒のストッキングを履いていたら、お父ちゃんとふたりで襲ってもいいよ」
賢司は清々しく整った顔だちに、いつものような優しげな笑みをみせて、そういってくれた。

どういう手を使って彼女に靴下を履き替えさせたのかは本人に訊いてみないとわからないが、
きっと母親がぐるになって一枚かんでいるに違いない。
賢司がナギに血を与えるようになったのとほぼ同時に、男は賢司の母親を手ごめにしていた。
賢司の母親は、献身的な女性だった。
薄汚れた作業衣姿の血吸い人である情夫のために、わが身をめぐる血を一滴でも多く振る舞おうとし、
それだけでは足りないとさとると、何とか一人でもよけいに、情夫の獲物を増やそうとした。
息子の彼女は、絶好の獲物だった。
既婚の女性が家の外の男相手に血を与えるということは、同時に肌身を許すことを意味していた―――だから、あの都会の会社に勤める月田家を訪ねたとき、血を提供してくれた月田の妻を、なんの躊躇もなく犯したのだが―――隣家に棲む吸血鬼の情婦となったうえに、その情夫の娘にひとり息子の生き血をあてがう女が、息子の彼女をおなじ災難に引きずり込むことを、躊躇するわけがなかった。

「しっかしあの二人、そろいもそろってお人好しじゃ。似合いのカップルってやつかね・・・こっちが心配になるくらいだな」
身体に人の血がかようと、気分も人間らしさを取り戻すらしい。
男は若いふたりのために歯がゆそうにひとりごちたが、ナギは他人事みたいに淡々と、
「得な性格だよね。みんなに気にしてもらえて」
と論評した。
「それより明日のまゆみちゃんだよ。ちゃんと段取り確かめとかなきゃ」
少女の関心はすでに、つぎに初めて牙にかけるつもりの年上の少女のことに移っている。
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