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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 13 独りぼっちのナギ

2018年10月24日(Wed) 05:48:24

週明けの月曜日は、地元の学校は開校記念日で休みだった。
中学も高校も休校になるのだが、女の子のいる家はたいがい、忙しかった。
というのも、女子生徒の約半数は記念行事のため登校させられたし、それ以外の少女たちも、あるいはお寺の本堂に集められ、あるいは個別に縁故のある家を訪問したり、逆にだれかを自宅に招いたりすることになっていたからだ。
ナギの隣家の娘は優等生で、いつも学校の来賓たちのお世話掛りをしているくらいだったから、とうぜんのようにセーラー服を着て登校していった。


ナギの家では、そうする必要がなかった。
だってナギはもう、ふつうの女の子みたいに、血を吸う人に吸わせてあげるためのうら若い血をもっていなかったから。
吸ってもらえる血がないというのは寂しいことだとナギは思った。
せめて吸わせてあげる血をもっていれば、独りぼっちで過ごさなくて済むのに。
少なくとも、ふつうの女の子だったころ、彼女は大好きな顔役の小父さまに血を吸ってもらえるのが愉しくてしかたなかった。
こういうときに"お友だち"のすくない血なし鬼というのは、寂しい想いを抱えることになる。
どこの家からも、どんな意味でも、声がかからないのだから。
隣家の姉娘はさばさばとした顔をして登校していったし、優しいお兄ちゃんの賢司は隣町の学校なので、やはりふつうに学校に行っているはずだった。
小母さんはお寺に手伝いに出かけたから・・・もしかすると少しばかり血を吸われてくるかもしれない。
どちらにしても、隣家の人たちは、ナギ父娘専属の"お友だち"ではなかったから、たとえ彼女たちがどこかの男に血を吸われようが交わってこようが、文句をいえる筋合いはなかった。

きのう初めて襲った朋子は、夕べの別れぎわ、ナギと「指切りげんまん」までして"お友だち"になる約束をしてくれた。
彼女は隣町に住んでいて、賢司とおなじ学校に通っていたけれど、
吸血されたのが初めてでしかもあれだけしたたかに生き血を吸い取られた後のことだから、
いまごろは疲れはてて、祖母の家でぐったりしているかもしれない。
それとも、あの善良な生真面目ぶりを発揮して、夕べのうちに隣町の家に帰宅して、気丈にも登校したのだろうか?

夫婦して"お友だち"になってくれたあの親切な都会の小父さんの家も、きょうは頼るべきではなかった。
ご縁が始まったばかりなのに、金曜土曜と連日訪問していたから。あんなに頻繁に血を吸われるなんて、慣れない人たちにはかなりの負担だったはずだ。
土曜の朝にお邪魔したときにはさすがに遠慮しぃしぃ戴いたと父ちゃんは言っていた。
翌日朋子を襲ったときの、電池の切れかかったお人形みたいな、あのみっともない動きをみると、あながち嘘ではないらしい。
父ちゃんはいつも、変なところで義理堅いのだ。
いや、月田家にかんするかぎりは、血を吸っただけではなくて、大人の男女が息をぜいぜいさせて身体をもつれ合わせるあの変な遊びでだいぶ発散してきたみたいだから、たんに助平なだけだったかもしれないけれど・・・
なんにせよ、あの夫婦は中四日くらい置かないと、使いものにならないかもしれない。
そして、あの愚かな夫婦の娘のまゆみは、地元の中学校に通っているくせにまだ風習の存在すら知らないで、なにもない休日をただ手持ちぶさたに過ごしているはずだった。

あぁ、切ない・・・
ナギはひざ小僧を抱えて座り込んで、ひどく寂しい顔をした。
こういうときにはいつも、空っぽの血管がシクシクと疼くのだ。

血が欲しい。
ピチピチとした活きのいい血が・・・

暖かくてうら若い血を持ちながら、なにも知らずに身体をもて余しているまゆみのことを、つくづくもったいないと思った。
昨日打ち解けて仲良くなってしまった朋子だったら、体調さえ許せば優しく笑ってうなじを咬ませてくれるだろうに。

夕方、父ちゃんは手ぶらで帰ってきた。塗料と脂まみれのいつもの草色の作業衣を、肩からぶさ提げたように引っ掛けて。
「手ぶらで」ということは、血を吸える人間をお土産に持ち帰ってこなかったということだ。
今夜はお互い、ひもじい想いをするのだろうか。
父ちゃんはそれでも、とっておきのひとつ話しでも披露に及ぶような勢いで、隣家の力武の息子は戻ってきたか?と、娘に訊いた。
「知らない」って答えると、行って確かめてこいと言った。
なんのことはない、ナギに賢司の血を吸わせて、自分はナギからその血を分けてもらう魂胆らしい。
「どうして自分で吸ってこないの」
と訊いたら、
「男が男の血を吸って愉しいわけがあるか」
という。
まんざら横着で言っているわけではないらしい。
そういえば都会の親切な小父さんの血も吸わなかったし、隣家の奥さんから血をもらってくるときも、たまたまご主人がいても目もくれないで奥さんひとりにのしかかっていた。
どうせきょうだって、たぶん選り好みばかりして、女の人ばかり訪ねていったのだろう。
こんな日につかまる"自由な"女なんか、よほどのあてがないかぎり、いないだろうはずなのに。
唯一父ちゃんがえらかったのは、それだけ窮しても、都会の小父さんの奥さんのところに行かなかったことだろう。
何しろ、なじみになっていきなり二日つづきだったから。
父ちゃんはこういうところだけは、変に義理堅いのだ。

「あしたの段取りだけどさ」
すこしして家に戻ってきたナギは、差し出した手首に目の色をかえてしゃぶりついてくる父ちゃんをしらっとした目で見ながらいった。
口許と頬ぺたに、隣家のお兄ちゃんから吸い取ってきたばかりの血を、くろぐろと光らせながら。
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