FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 15 まゆみの担任

2018年10月27日(Sat) 09:58:35

まゆみが教室に入ると、転校してきてすぐに仲良くなった同級生が、「あっ、まゆみ・・・職員室来てくださいって」
なにか言いにくそうな顔をしたのを、まゆみはうっかりと見落とした。

担任の春田教諭の席は、職員室いちばん奥のほうにあった。
なにも悪いことをしていなくても、職員室という部屋は、まゆみのようなごくふつうの生徒にとって、あまり居心地のよい場所ではない。
だから、その職員室のいちばん奥まったところに席のある春田のところに行くのは、いつもすこしばかり気詰まりだった。
おまけに、この春田という教師は、若くて整った顔つきをしているのに、どうもなじみにくいところがあった。
それはことさらまゆみだけが感じていることではなかったらしく、ようやく打ち解けて話のできるようになった他の女子生徒たちも、ほぼおなじ感情を抱いていた。
春田教諭は去年の秋に都会から転入してきたばかりの教師だった。
すでに三年ほど前に結婚していて、村には妻を伴っていた。
色が白く、髪の毛をきれいに七三に分けたすぐ下には、いかにも理知的な広い額と銀ぶちメガネの奥によく光る黒い瞳が、美男というにはやや鋭角的すぎる印象を与えたが、女子生徒たちが共通に抱くかすかな反感は、そういうところにはなかった。
あるものは「なんとなく冷たそう」と評し、あるものは「都会っぽさが鼻についていやだ」といったあと、あわてて、「ううん、都会から来たからって、まゆみはちがうからね」と言ってくれたが、もっとずけずけとしたことを言う女子生徒は、「逃げるんだ、あいつ」と、露骨にこきおろした。
たしかに彼女のいうことはある程度的を射ていて、それは春田のどこか弱々しい言動や、とかく「校長」だの「村のえらい人」だのの名前を、ふた言めには出すというところに現れていた。
それは、彼がまだ地元の流儀をじゅうぶん理解していないことを意味していた。

まゆみが職員室に入ると、春田教諭はいつものように、あまり思いやりのなさそうな冷たい視線を注いできた。
そして、おはようのあいさつも抜きに、いきなり本題に入った。
気持ちにゆとりのなさそうな、性急で強圧的な態度だった。
こういうときには必ず、この教師がおかしなことを言い出すのをまゆみは経験で知っていたし、いやな予感が彼女の胸をよぎった。
「月田くんは、"来賓当番"って知っている?」
春田の質問は唐突だった。まゆみがそのことについてなんの知識もないことを態度で知ると、にわかに安堵か優越感のようなものをありありとよぎらせて、それでも自分の表情をまゆみに読まれたのに気がつくと、
「いや・・・ぼくも去年の秋にこちらに来たばかりだから、あまり詳しいことまでは聞かされていないんだけどね」
と、弁解がましく不自然につけ加え、決まり悪そうなごまかし笑いをした。
「ぼくも校長や村の顔役さんから聞かされただけなんだけど」
と、教諭はまたも言い訳がましい前置きをして、その"来賓当番"というものについて説明をした。
およそまとまりのない、要領を得ない説明だった。しいて要約すれば、つぎのようなことらしかった。

毎月定期的に、村のえらい人ほか数名の同行者が、視察のために来校する。
そのお世話は、当校の女子生徒がなん人か組になって、交代で務めることになっている。
これは昔からの習慣で、教育の一環としての校内行事として位置づけられている。
長上を敬うという趣旨もあるので、来賓はほとんどが年配の男性であるが、そうでない場合もある。
一部、地元に長く住んでいる家の生徒のなかには、当番を免除されている生徒もいるが、彼らはその代わり、縁故のある人に個別の接遇をすることになっている。
4月は新入生が対象だったが、それが一巡したので、上級生に順番がまわってくることになる。
とくに三年生は、下級生にお手本をみせるという意味で、二年生よりもさきに順番がまわってくる。
個々人の順序は、不公平のないように、クラス順、出席番号順になっている。
うちのクラスでまだ"来賓当番"を経験していないのは転入してきたばかりのまゆみだけで、彼女と仲の良い有働や市宮も、入学以来の行事なので慣れている。

終始一貫、なんとなくだれかに言わされているような棒読み口調なのが、まゆみには妙に気になった。
あきらかに、本人の実感が伴っていなかった。
「きみだけなんだよねぇ、まだなのは」
と、そこだけに実感を込めた春田教諭に、まゆみはがまんし切れなくなって、訊いた。
「先生も、経験あるんですよね?」
春田は、なにを言っているんだ?と言わんばかりに、「いやこれは女子生徒だけの行事だから・・・」と、自分は関係ないと言いたそうな顔をしたが、まゆみはなおも突っ込んで、
「でも、引率とかしないんですか?学校行事なんだし」
と訊いた。春田は、え?と、虚をつかれたように目を見開いた。
「いや、担任は引率しないんだよ。女子生徒だけでやるんだから。ぼくも立ち会ったことがないんでね。」
口ごもってうつむいた春田教諭は、これから未経験者対象に説明があるので、××教室に行きなさい、授業のほうはきょうは出席にしておくから・・・と、しつこく食い下がるまゆみを厄介払いするようにして、自分の目のまえから追い払った。

加工p130525 127!
前の記事
≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 18 まゆみとナギの鬼ごっこ
次の記事
≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ きまぐれなかいせつ3

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3658-dcc284f0