fc2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ ≪番外編≫ 隣町の令嬢のその後

2018年10月30日(Tue) 07:42:28

露川朋子は、高校に進学してから親しくなった隣町に住む同級生、力武賢司の家を辞去したところだった。
外の風は意外に冷たく、朋子はジャンパースカートの制服姿をちょっとすくめた。
赤と紺のストライプ柄のネクタイを締めなおし、ツインテールの豊かな黒髪をサッと撫でつける。
慣れない黒のストッキングの足許が、よそよそしい外気に触れてすーすーとした。

朋子の頬には、和やかだった力武家の温もりがまだ残っていた。
初対面だった力武夫人は気さくで話し好きだった。
「高校あがると日曜まで模擬試験あるのねぇ、たいへんねぇ」
さいしょは固くなってお辞儀をするのがやっとだった朋子もつり込まれて、むしろ賢司本人とよりもよっぽど話がはずんだくらいだった。
母親の実家がこの村だということも、賢司の母親の心証をよくしたようだった。
賢司は親切で惹かれるタイプの子だったけど、ふつうの男の子なみに口数のすくないほうだったから。
朋子ははこのあと近在の祖母のところにも用事を作っていた。
慎重な彼女は、もしも賢司の家の雰囲気が気詰まりだったら、それを口実に早々と切り上げようと考えていた。
けれどもそれは杞憂だった。
むしろ尻が長くなりすぎて、祖母のところに寄ったら帰りが暗くなってしまいそうだった。
力武夫人は早手回しに、朋子の祖母の家に電話をかけてくれた。
孫娘を引き留めてしまったことをおわびして、生真面目できちんとしたお嬢さんですね、と、抜け目なく誉めことばをつけ加えることも忘れなかった。

電話口から戻ってくると、賢司の母は話のついでのように、
「これお姉ちゃんのなんだけど、あなたも履かない?町の学校では今どきストッキングなんて履かないのかな」
と、親切にも、自分の娘が通学用に履いている黒のストッキングの未使用のものを箪笥から持ち出してきて、
朋子が遠慮したのに耳も貸さずにわざわざ封を切ってくれた。
その場で履いてみせないわけにはいかなかった。
朋子は履いていた白のハイソックスを脱ぐときちんと折り畳んで、ありあわせの紙袋をもらうとそれに包み込んで通学鞄のなかにきちんとしまった。
真新しいプリーツのきいた制服のすその下、濃い墨色に透けた脛の白さが、賢司にもその母の目にさえも目映く映った。
「アラよく似合うわぁ」
力武夫人は頓狂なくらい声をあげ、朋子の足許を本気でほめあげた。


朋子が真新しい黒のストッキングに革靴の脚をそろえて、お母さんに教えられたように玄関先できちんとご挨拶をして辞去していくと、母親は息子にこういった。
「うまくいったね。親がこの村の出だなんて、あなたいい子を見つけてきたね。身体も大きくて、美味しい生き血がたっぷり獲れそうな娘さんじゃない。母さん鼻高々だよ」
賢司は、ずるさのまったくない聡とそうな目をして、
「朋子さんって、クラスでいちばんのっぽなんだよ。性格もおとなしいし口も堅いんだ。顔だって可愛いでしょう?3つ下の妹さんもいるっていうし、今から楽しみだよね」
と、母親に応えた。どこまでも、家に招んだ彼女を母親にほめられて得意になっている少年の笑顔だった。


朋子はいま自分のことをにこやかに送り出した親子がそんな会話を交わしているなどとは夢にも思わずに、
黒のストッキングが相変わらずすーすーとする足許を気にしながら、祖母の家の方角に脚を向けた。
ここに来るまえに母さんが、あちらのお母さんとの相性はお婿さんの性格よりも重要だって言ってたけれど・・・まさか賢司くんが私のお婿さん??
母親にまじめな顔をされたとき朋子は一笑に付したけれど、いざ賢司の家に行って母親とまで実際に顔合わせまでしてしまうと、軽い気持ちで応じたきょうの訪問が、じつは深い意味を持っていたような気がしてきて、朋子はひとり顔を赤らめた。

賢司の家と祖母の家のちょうど中間くらいのところに、そこそこの大きさの公園があった。
公園の入り口を通りかかると、小さな女の子がひとり、うずくまるようにしてしゃがみ込んでいた。
朋子はなにかに怯えているらしい彼女に声をかけ、自分よりもずっと年下の少女の仕掛けたわなにまんまとかかり、善意の手を差し伸べた。
怯える少女を家まで送り届けるつもりで脚を踏み入れた公園は、魔の園だった。
現れた少女の父親に生き血を求められた朋子は、自分をだました少女に後ろから抱きつかれ、じたばたともがきながら、ヒルのように強欲な唇を首すじに吸いつけられていった・・・


「大事なところを見逃すんじゃないよ。もしかしたらうちの嫁になるかも知れない子なんだからね」
母親にそう言い含められた健司は、連れてきた彼女が辞去してすぐ、家の前の通りの曲がり角を曲がったころに家を出た。
ナギが朋子をだますところは手に汗を握って聞き入っていた。
だまされないでほしいという普通の気持ちは人並みの青年としてもちろんあったが、
自分が気に入った同級生の朋子がなにも知らずに公園に脚を踏み入れてゆくところをついに声をはさもことができないで昂りとともに送り出してしまっていた。
一瞬遅れて足を踏み出そうとした彼を引き留めるものがいた。
落ち着いた物腰の老女だった。
彼女は、朋子の祖母だと名乗った。
用意周到だった健司の母親は、同郷のこの婦人にも抜け目なく手を打って、見届け役を依頼したのだった。
ここの女たちは、彼女たちの共通の秘密を守る。
朋子の祖母も、他所の街に育った孫娘がおなじ道を歩むことを歓迎した。
村でも有数の賢夫人であった彼女は、突然の相談におどろきながらも、孫娘が血を吸われる場所を自分の家の間近にした夫人の配慮に感謝した。
電話を切るとそそくさとよそ行きのワンピースに着替え、サッと化粧を刷くと、孫娘とおなじ黒のストッキングを脚に通して出かけてきたのだった。


ジャンパースカートの制服のすき間のそこかしこから、十六歳の処女の清冽な血潮が、荒々しく抜き取られてゆく。
濃紺の制服姿に巻きつくように、二対の唇が、赤ネクタイを緩められたえり首やわきの下、ひざ丈のすそをたくしあげられてむき出しにされた黒のストッキングを履いたままの太ももと、思い思いの部位へとしつように吸いつけられてゆく。
ズルズル・・・ぢゅるうぅっ・・・っと、汚ならしい音をたてながら。


公園のベンチに尻もちをつくように腰をおろした朋子は、隣に腰かけている祖母に寄りかかった格好で、ほとんど正気を喪いながら、なにやらとりとめのないうわ言を呟きつづけていた。
暗緑色のベーズリー柄のワンピースを着た祖母はそんな孫娘をあやすように、背中ごしに回した腕で孫娘の肩を抱いてやっていた。
祖母の腕のなかで、貧血を起こした朋子はうつらうつらとなって、上体をゆらゆらと揺らし始めていた。
自分の脚の片方に草色の作業衣の腕が巻きつけられて、足許にかがみこんできた分厚い唇が黒のストッキングのうえから吸いついて、オトナっぽく足首を染める薄いナイロン生地をみるかげもなく咬み破っているのも、まるで上の空だった。
「いい子だね。朋ちゃんはほんとにいい子。とつぜんだったのに、よくがんばったね」
小声で優しく孫娘のことをいたわる祖母の足許にも、餌食になったその孫娘をだました少女が、たっぷりとした肉づきをした脛に、薄黒のストッキングのうえからかじりついている。
ヒルのように貼りつけた唇の下で、豊かな肉づきの輪郭を微妙な濃淡で縁取っているナイロン生地が、あざやかに裂け目を拡げはじめていた。
ふくよかな肉づきに、紅い歯形がくっきりと浮いている。
歯形に淡くあやされた血潮を意地汚く舐め取ると、ナギはもういちど、ストッキングの裂け目ごしに生えかけの牙を埋めた。
そうしてヒルのように貼りつけた唇を、もの欲しげにせわしなくうごめかして、朋子の祖母の脛にはりつめたストッキングをくしゃくしゃにしていった。
孫娘よりも幼い少女が自分の足許にとりついて、食べ盛りの年ごろらしい食欲を発揮するのを、朋子の祖母はそれでも穏やかな視線を逸らさない。
「お嬢ちゃん、こんなおばあちゃんの血じゃあ美味しくないだろうけど、堪忍ね。
お姉ちゃんは小父ちゃんのお相手で精いっぱいだから、きょうのところは見逃してあげてね」
祖母は足許の少女が素直にこくりと頷いたのをみて、穏やかにほほ笑んだ。
その代わり・・・というように、淑やかに装った黒のストッキングの脚を、ベーズリー柄のワンピースのすそから、さりげなく覗かせてやる。
ナギが目の色をかえて彼女の脚にとりついて、脚にまとったストッキングをひざ小僧がまる見えになるくらい手ひどく咬み破くのを、
「まぁ、まぁ・・・」
と、ころころと笑いこけていた。


「きょうはどうにも、あいすまんことで・・・」
律儀な職人の顔に戻った男は、孫娘から吸い取った血潮をまだ口許にあやしながら、老婦人に慇懃なお辞儀をくり返した。
「はいはい、どういたしまして」
老婦人はなにごともなかったように、男にむかって礼儀正しい会釈を返していた。
男の作業衣についた塗料のシミのうえには、またも赤黒い飛沫のあとを上塗りさせていて、それはまだ乾き切っていなかったし、
老婦人の首すじにも、おなじ色の飛沫が散っていた。
ベーズリー柄のワンピースの下は、ナギのおイタのせいで、濃い墨色のストッキングがひざまでまる見えになるほど、派手に伝線している。
そのすぐ傍らで、じつの祖母に甘えるように寄りかかったナギは、彼女から吸い取った血を、しきりに手の甲で拭っていた。
ぶきっちょに口許を往復したこぶしは、却って紅く汚れた部分をひろげて、頬ぺたまで紅い血のりで毒々しく光らせていた。
父ちゃんはへまをした娘のしぐさに忌々しそうに目をくれて、
「・・・ったくお前ぇは!うちさ帰ってちゃんと拭けって!」
と叱った。

朋子はひとりベンチに残って、失血で息をはずませていたが、男の叱声をきいてふらふらと立ちあがった。
赤と紺のストライプ柄のネクタイは乱暴にほどかれてブラウスから飛び出ていて、そのブラウスも、えり首や胸許にバラ色の飛沫をはねかせている。
ジャンパースカートにもところどころ赤黒いものが撥ねていたが、それは濃紺の生地のおかげであまり目だたなかった。
黒のストッキングも、祖母のものに負けず劣らず、むざんな裂け目を拡げていた。
朋子は制服のポケットからハンカチを取り出すと、ナギの頬を丁寧に拭いた。
ブラウスに撥ねた血も、まだ濡れているところは念入りにハンカチに染み込ませ、血のりがこびりついた手指も、優しく包むようにして拭き取ってやった。
拭い取った血は、祖母の血がほとんどだったが、朋子の血も含まれているはずだ。
「小父さんも」
そういって朋子は、男の頬や耳たぶにべっとり光っていた彼女自身の血も拭き取った。
「あ!?あぁ・・・わざわざすいません」
男は虚を突かれたように目を丸くし、決まり悪そうな顔をしながら朋子にされるがままになった。
襲って生き血を吸った少女に顔まで拭かれるとは、思ってもいなかったらしい。
「よくできた娘でしょう?自慢の孫娘ですのよ」
老婦人は、おだやかに笑った。
「あなたもきちんと、ご挨拶なさい」
祖母に促されて、朋子はなんと言ったものかとっさに口ごもったが、もともと躾の良い家に育ったらしく、ひと言、「ふつつかでした」といって、礼儀正しくお辞儀をした。
ほどかれたネクタイや制服の乱れは、祖母が傍らから手を伸べて整えてやっていた。
「い、いえいえ・・・こちらこそ」
喉が潤うとぼくとつな真人間に戻る男は、へどもどと要領を得ないあいさつを返し、ナギもまた神妙な顔つきをして「こちらこそ」と、父親にならった。
「お知り合いになれて、良かったわね。きょうはいきなりだったからあなたもびっくりしただろうけど、ここらあたりでは珍しいことじゃないのよ。朋ちゃん、えらいわ。よくがんばったね。お祖母ちゃん鼻が高いわ」
祖母はもう一度孫娘を褒めると、「そろそろお開きにしてもよろしいかしら?」
と、血吸い鬼のふたりに訊いた。あくまで決定権は彼らの側にあるという態度だった。ナギがいいにくそうに、朋子にいった。
「お姉ちゃん、もうちょっとだけ咬んでもいい?」
「えっ?困ったなぁ・・・」
朋子は破けたストッキングの脚を寒そうにすくめて祖母をみた。もっとも一応はためらってみせたものの、しんそこ嫌がっているふうではない。
そんな朋子の顔つきを読んで、祖母はことさら渋い顔を作って言った。
「アラ、いけないわ。せっかくのおねだりじゃないの。咬ませておあげなさいな」
祖母は孫娘の血をまだしつこく吸いたがるナギの肩をもった。
「どのみち今夜は、お祖母ちゃんのおうちに泊まりなさい。疲れているんだし、着替えもしなくちゃね。お母さんには私から電話しといてあげる。心配いらないわ。あなたのお父さんには内証だけど、お母さんもあちらにお嫁に行くまではこちらの皆さんに血を差し上げていたのよ」
「う~ん、じゃあ・・・」
母親まで・・・・ときいたことが、少女を勇気づけたようだった。
進退きわまった孫娘は、ちょっとのあいだ照れたように笑うと、
「ちょっとだけ・・・ね?」
と、うまうまとだまして手中にしたお姉ちゃんの血を父ちゃんにほとんど独り占めされるのに我慢をしていたナギのために、朋子はストッキングの破れがすくないほうの脚をすっとさし伸べてやった。
ちゅー・・・
通学鞄を抱えたままつま先を差し出す朋子の足許にうずくまって、ナギが静かな音をたてながら吸血に耽っているあいだ、男に慇懃なお礼を受けた祖母は、お互いに手短かながら事情を交換しあっていた。
――妾(わたし)は代々この村に棲む家で、還暦を過ぎたいまはお呼びがかかることはめったにないがかつては"お得意"の少ない血なし鬼を相手に手広く施しを続けていた。
朋子の母親である娘も、生娘のころには妾といっしょに"お寺詣り"に出かけてなん人もの血なし鬼の相手をしていた。
やがて隣町の家と縁談が整うと、その家は"お他所の家"だったので、さいごのご奉仕の晩に村の長老に処女を与えて嫁いでいった――と。


「ナギちゃん、お行儀よくないわ、またお口が汚れちゃったじゃない」
朋子お姉ちゃんはナギを優しくたしなめながら、少女の手を引いて祖母たちのほうへと歩み寄ってきた。
「ナギちゃん、もういいって」
そう口にするのがやっとだった。
びりびりに破けた黒のストッキングをねだられるままに脱ぎ与えた朋子は、
「お姉ちゃん、きれいなハンカチもうないんだ。良かったらこれでお手々やお口を拭いてね」
と、脱いだストッキングを少女のまえに帯のようにぶら提げた。けれどもナギはかぶりを振って、
「ううん、拭かない。お姉ちゃんの血をつけたままおうちに帰る」
よほど朋子お姉ちゃんの血が気に入ったとみえて、ナギは朋子から吸い取った血をわざと自分の頬になすりつけた。
居合わせた皆が、そんなナギのしぐさをみて、笑った。
前の記事
≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ ≪番外編≫ まゆみ、ナギの日記を読む
次の記事
吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ ≪番外編≫ お買い物

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3671-ebe34aa5