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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

自分のお通夜。

2018年11月18日(Sun) 06:22:26

してやられた・・・!
男は悔しそうに、歯噛みをした。
ここは墓の中。理不尽にも生きたまま、埋められている。
だがそれは、すこし事実をはずした言いかただろう。
総身をめぐる血管が干からび切っていることが、そのなによりの証しだった。
そう、彼は血を吸い取られ吸血鬼になってしまったのだ。

やつらのこんたんは、わかっている。
ほんとうの狙いは妻なのだ。
失血に目を回してぶっ倒れてしまったあと。
やつらが口々に呟くのが、聞こえていた。
もしかすると、わざと訊かせていたのかもしれない。
俺たちは、喪服を着た女を襲うのが好きなのだ――と。

今ごろ妻は、自分の通夜を営んでいるはず。
寺のひつぎは空っぽで、夫の自分が地下で呻いているとも知らないで。
たったひとりで見知らぬ土地で、これからどうやって生きて行けばよいのか。
きっと、そんなことで頭がいっぱいになっているはず。
夫婦でこの地に移り住んで、たったひと月しか経っていなかった。

妻の心配は、たぶん無用のものなのだろう。
喪服姿を襲われて、通夜の夜が明けきらぬうち、
総身をめぐる生き血を吸い尽されて、夫のあとを追うのだろう。
もしかすると、妻のほうは生かしておく気なのかもしれない――そう、別の目的で。
やつらは口々に、女旱(ひで)りだと言っていたから。
久しぶりにありつく人妻の血に、やつらはとても、昂奮していた。悦んでいた。

こうしていてはならない。
男は自分の真上に覆いかぶさるひつぎのふたを、力任せにこじ開けた。
上にはたんまり泥がかけられていて、容易なことでは開かなかったけれど。
妻に対する執念からか、苦心惨憺、開けることに成功した。
はあはあと息をはずませながら、(死んだはずなのに息ができるものなのか)と、呟いた。
やっぱり生きているのだ、と、確信した。
死んでいない以上、夫として生きるべきなのだ。
男はふらつく足どりで、寺への道を懸命にたどった。

寺では盛大に、男の通夜が営まれていた。
どうやら参会者は、かなりおおぜいいたらしい。
勤務先の出張所の同僚たちは、たしか十人に届かなかったはず。
家族総出で来てくれたとしても、せいぜい二、三十かそこらだろうし、
そこまでしてくれる義理などないはず。
だとすると、見ず知らずの村の連中が来ていたというのか。
通夜の終わりかけた寺はほとんど人がいなかったけれど、
ついさっきまで大勢の人がいた雰囲気が、ありありと漂っていた。

もどかしい足どりで、本堂を目ざした。
参会者を受け付けるテントは、すでに無人だった。
ちょうどお手伝いらしい地元の婦人が二、三人、黒一色の姿で寺を出ていくところだった。
妻もあの格好をしているのか。
喪主の席に、独り居心地悪そうに腰かけながら、
帰らぬ夫の帰りを待ちわびて、
いまごろ自分の身体をめぐる熟れた生き血をむさぼる者たちの、強引な来訪を受けているのか――
ああっ、まがまがしい。不埒すぎるぞ!
男は歯噛みをして、足どりを速めた。

本堂の片隅の小部屋から、切れ切れに悲鳴が洩れてくる。
あそこだ、まちがいない。
本堂のど真ん中にしつらえられた祭壇に、ちょっとだけ目をくれる。
ふたの開け放たられた空っぽのひつぎのまえ、
自分の顔が白黒写真になって、無表情にこちらを見ていた。
これから妻を犯されるんですという顔をしているように見えた。
なぜか、自分とは別人のような気がした。

小部屋のドアを開け放つと、そこにはまがまがしい光景が繰り広げられていた。
半脱ぎになった喪服から、白い肩をむき出しにして、
脛をなまめかしく透きとおらせた黒のストッキングを、ひざ下まで脱がされた女が、
上からのしかかってくる礼服姿の男を相手に、ウンウンと押し殺した呻きをあげながら――激しく腰を振っていた。
悲鳴は随喜に、なりかかっていた。

目をむいて、周囲の男どもを見回した。
だれもが礼服姿を着崩れさせていて、
あるものは上半身裸、あるものは腰から下がまる見え、あるものは靴下だけを履いていた。
妻の着崩れた姿はむざんで艶めかしくさえあったけれど、
男の半脱ぎというのは、ばかみたいなものだな、と、男はおもった。
「思ったより早かったね」
男のなかの一人が言った。
見知らぬ男だった。
白髪頭に銀縁めがねをかけた、穏やかそうな男だった。
知っている顔はほとんどいなかったけれど、
勤め先の同僚が二人、きまり悪そうに隅っこに佇んでいるのが目に入った。
だれもが思ったよりも、和やかな視線を向けてくる。
「待っていた。あんたにも吸う権利があるから」
妻の上からは、男が去っていた。
おおいかぶさった男の背中に隠れていた全身を、さらけ出していた。

引き裂かれたブラウスのすき間から、豊かなおっぱいがまる見えになっていた。
夫婦の交わりは、このところたえてなかった。
まして、あからさまな灯りの下で妻の胸もとなど見ることなど、何年ぶりのことだろう?
さっきまでくり広げられていた痴態の名残りで、妻の胸もとは軽く上気して、肩でセィセィと息をはずませていた。
妻が牝になったのを、男はかんじた。
信じられないという顔で男を見つめる妻を、男はまともに見返した。
なにかを言うべきだと思ったが、言葉は出てこなかった。
「好きにおやんなさい」
めがねの男が耳打ちした。
言われるまでもなかった。
妻の首すじにはふたつみっつ、すでに咬み痕がつけられていた。
おのおのの咬み痕にあやした血潮が、男の欲情を激しくあおった。
男は妻をその場に組み敷いて、胸もとをがりッと噛んでいた。

錆びたような血の芳香が、鼻腔の奥をツンと突いた。
口許にこぼれ落ちた妻の血が、喉を伝って、胃の腑に落ちる。
干からび切った唇が、喉が、身体の芯が、胃袋が。
四十代の人妻の熟れた血潮に、心地よく浸された。
男は吸血行為をやめようとはしなかった。周りも止めようとはしなかった。
妻は最初のうちは抗って、なんとかその場を逃れようとしたが、
男たちの輪にさえぎられて、果たせなかった。
そしてすぐに、あきらめきったように身体の力を抜くと、
夫の新たな欲情に、わが身を投げ出し、さらけ出していた。

胸もとに一か所。首すじに一か所。喉笛にも喰いついた。
黒のストッキングを脱がされてしまったことが今さらながらに悔しくて、
半脱ぎになったストッキングをわざわざ履き直させて、食い破った。
妻は夫の欲望にかしずくように、咬まれるままに咬まれ、吸われるままに吸われ、犯されるままに犯された。
8回も貫いたあと、さすがに息が切れて、妻の裸体のうえに突っ伏したら、
周囲の男たちから、拍手がわいた。

「おめでとう。これであんたも、一人前の吸血鬼だな」
めがねの男がいった。
そうかも知れない――男はおもった。
喉の渇きは心地よく充たされていたし、干からび切った血管には、妻から吸い取った血液がふたたび脈打ち始めていた。
「奥さんの血は、あんたのものだ。わしら、味見はしたが、大した量は吸うておらん」
どういうことだ?と問う男に、めがねの男がぼそぼそと告げた。

この村は、吸血鬼と仲好う暮らしている。
妻や娘の血を自由に吸わせ、吸血鬼と懇意になった村人のなかには、自分持ちを吸い取られて吸血鬼になるやつもおる。
だが、だれもそうしたことを咎めようとは思っていない。
吸血鬼になった者は、家族の血を与えたものに限られていたから、
その男が望んだ女がいれば、彼女の夫も父も、妻や娘が押し倒されるのを、見て見ぬふりをして受け容れる。
あんたの場合はよそ者だから、つい後先が逆になったけれど。
たいがいはだんなの了解を得てから奥さんを襲うのだ。
ここにいるあんたの勤め先の同僚どもも、
片方は持っていった地酒に酔いつぶされながら、奥さんをモノにされるところを夢中で覗いていたし、
もう片方は自分が先にたぶらかされて、わしらを家に招いてくれた。
そうなったあとは、だれもが奥さんと交際できるし、もちろん奥さんにも選ぶ権利がある。
ご主人は優先的に奥さんの血を吸うことができるけれども、
内輪のあいだでは通い合うのは自由だから、このなかのものの妻や娘ならだれでも、気軽に声をかければよい――

「私の知らないところでやってくださいね」
男の妻は男にそういうと、夫の浮気を咎める妻の目になって、軽く睨んだ。
ふつうの夫なら、こういう妻の睨みには辟易するものだけれども。
目のまえでおおぜいの男どもとの痴態をさらけ出してしまったあととなっては、その威力は半減以下だった。
あれ以来。
男どもは代わる代わる、妻を訪ねて自宅にやって来る。
外出嫌いだったはずの妻も、足しげく出かけて行って、どこのだれとも知らない男に抱かれてくる。
”初七日”のあいだは、喪服を着通すのだという妻は、
「それが貞淑な未亡人の証しなんですって」といいながら、
きょうも不倫の床に熟れた血潮をあやしている。

同僚だったふたりの男も、妻と逢っていた。
一人は誘い出したし、一人は家までやって来た。
「〇〇さんからお誘いを受けたの」
しらっと告げる妻に、「行ってお出で」と返す夫。
とてもヘンな関係だと、さいしょのうちは思った。
こころよく送り出した相手の男も、家にやって来てのぞき見させてもらった男も、自分の妻を襲わせてくれた。
だから、おあいこだった。
いちばん若い同僚は、自分の奥さんが一番訪問が多いと口先では嘆いていたけれど、
それがあくまで口先なのは、よく心得ている。
少しだけですよ、乱暴はよしてくださいよ――そう言いながらその男は、妻を襲われるリビングに、ことが終わるまでずっといた。
もうひとりの同僚は、自分より年輩だったけれど、年増の女もいいものだと初めて思った。
年増女の夫もまた、ちょっとだけですよ、あんまり奥まで入れないで、あっ、そんなに乱暴に胸を揉んじゃ・・・といいながら、
夫婦のベッドをギシギシさせてなん度も射精して、事が果てて立ち去るまで、必ず妻といっしょにいた。
もっとも、ふたりの夫を詰る資格など、彼の側にもなかった。
恥かしがる妻を強引に巻き込んで、夫の前での輪姦プレイを提案したのは、ほかならぬ彼自身だったから。

やっぱりあの晩は、お通夜だったのかもしれないとふと思う。
それまでのどこにでもいそうな自分は、吸血という名の変態プレイに焦がれて堕ちた。
ついでに、寝取られプレイという、ある意味もっとまがまがしい遊戯にも。
妻もまた、貞淑だった過去をあっという間に散らしていた。
夫の目のまえで見せつけるプレイにも、「刺激感じる!」とはしゃぐようになっていた。
「あの晩は、夫婦そろってのお通夜だったのよね」
妻はくったくなく笑いながら、そういった。
抵抗したのよ、信じてね――そう言いながら。
夫がその光景を想像して昂奮するのさえ、いまのこの女のなかでは、計算済みなのだろう。
投げ出されたふくよかな脚にまとったパンストは、今夜もだれかの手で破かれるはず――

なに不自由ない生活を手に入れた男は、早すぎる退職をした。
彼の勤め先では、そうするものがかなりいた。
そしてその空席を埋めるために再び、なにも知らないものが赴任してくる――妻や娘を伴って。
「こんどの人は五十代だけど、奥さんは上品できれいで、娘は高校生だそうだ」
「独立した息子は結婚したばかり――早くご夫婦でたぶらかして、息子夫婦も巻き込もうよ」
村のものたちも、村に居ついたかつての同僚たちも、口々にそう言って、彼らの移住を待ち焦がれている。
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