淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
世を去ったはずなのに。
2019年01月04日(Fri) 10:39:28
貴方が世を去ったあとですね、とても面白いことになっているんですよ。
ふつうの人なら目くじら立てるような話なんですが、ほかでもない話好きの貴方なら、きっと面白がると思うんですよ。
ねえ、ちょっと耳を傾けてみませんか、ちょっとだけ、ご覧になってみるのもおススメですよ。
闇の彼方から聞こえてくる声に、わたしはふと目を覚ました。
おかしいな持病が高じて寿命が尽きたはずなのに、なぜ意識があるのだろう?
目を開けると、そこは真っ白な世界だった。
白い壁に包まれた狭い部屋。わたしが数年ぶりに生き返ったのは、そんな場所だった。
果たして実在する場所かどうかもわからない。
そこでは走馬灯のように、わたしがこの世からいなくなってからの映像が、映し出されていったのだった。
息子が大学を出て就職した。
かなりの大企業だったのに、すぐに退職して地方の街に移り住んだ。
いったいどうしたことかと思えば、上司の紹介でお見合いをした相手と結婚するためだということだった。
それならなおさら会社に残るべきだったのではないか?と思ったのだが、
傍らの声がそうでもなかったのです、と、教えてくれた。
その街はその企業の創業者の故郷で、若い人が少なくなっているから、移り住んでくれる人を社内で強く募集しているのだと。
いずれにしても、息子は若くてきれいな嫁をもらって、のどかな土地で自足した生活を得たようだった。
別の声が、さらに横から口を出した。
特ダネ情報です!奥さんが再婚されます。相手は吸血鬼です。
――えっ?それって、どういうこと?
その吸血鬼氏は、息子さんのお嫁さんの彼氏です。
結婚前から彼女やそのお母さんの血を吸っていて、どちらとも初体験をしているつわものです。
――そりゃ、たしかにつわものだね。。
吸血鬼氏は婚礼の席で、奥さんを見初めてしまいました。そして、つごうのよいことに未亡人だと知ってしまったのです。
息子さんが紹介したんです。
吸血鬼氏は、着飾って婚礼に出席された新郎の母親を、ホテルの室内で強姦しました。
黒留袖の帯をほどいて、まる裸にしてひと晩じゅうやりまくったのです。
――おお!なんということだ!
ふつうの奥さんなら、そのひと晩で、ご主人との思い出を一生ぶん、きれいに忘れてしまうほど強烈なのですが、
貴方の奥さんは気丈で意志の強い人です。婦徳を辱めたことについて謝罪を求められました。
吸血鬼氏は、紳士的に振る舞いました。潔く謝罪したのです。
奥さんはその謝罪を受け入れ、血液が不足しているのであれば献血に応じてもよいと仰いました。
――すこし寛大過ぎはしまいか?
そうですね、ちょっと謝っただけでOKしてしまうなんて、やっぱりご主人のことは忘れたのかもしれません。
ですが、何度も襲われるうちにほだされてきてしまいまして、とうとう吸血鬼氏の求婚をお受けになられたのです。
おめでとうございます。
――おめでとうと言われると悪い気はしないが、ちっと情けない気もするね。
吸血鬼氏は喪服が好きで、奥さんには逢瀬の時に喪服を着てくるようにとおねだりしました。
奥さんは彼の希望を好意的にかなえてあげました。
だから奥さんが毎日喪服を着ているのは、決して貴方を弔うためばかりではなく、彼氏を悦ばせるためでもあるのですよ。
――喪服姿はたしかにわたしもそそられる。わからん気もしないではないが・・・苦笑
きょう、奥さんはいままでのお宅を出て、吸血鬼氏の棲み処に移られます。
お!でも感心ですね。ちゃんとあなたのお仏壇に、手を合わせていらっしゃる。
――律儀でまじめな女なのだよ。
妻:とうとう貴方以外の男性のところに嫁ぐことになりました。
けれども貴方の菩提を弔うことも忘れません。その条件で、あのひとのものになることにしました。
貴方のことを思って喪服を身に着け、あのひとを悦ばせるために脱がされてゆきます。
どうかこの愚かな未亡人のふしだらを、許してくださいね。
――許すとも!許すとも!
妻:アラ、貴方のお写真がちょっとだけ笑ったような。
貴方もともと助平でいらっしゃいましたからね。
わたしたちが愛し合うところを御覧になって、悦にいっていらっしゃるかもしれませんね。
いやらしいひと。
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