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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

睦言の中身

2006年07月15日(Sat) 11:49:45

月曜は芽衣子。
火曜は那恵子。水曜はケイ。木曜はひろ子。金曜は梢。
そして土曜日は、由貴子。
さいきん妻の気に入りは、新来の吸血鬼。
蘇えった後、娘と再婚した妻の血を吸いに来る、あの罪のなげな初老の男である。
「行ってまいりますわね」
嬉しげにこちらを振り返り、
わが妻ながら、若い娘と見まごう白のワンピース姿をひるがえして。
ウキウキと、夜の公園に出かけてゆく。
「行ってまいりました」
そういって妻が帰宅を告げるのは、もう真夜中すぎ・・・
純白の衣裳にぬらりと浮いた赤黒い痕が、
ひどくナマナマしく映えている。
足許のシルエットを引き締めていたストッキングも、ちりちりに破かれていて。
いくら罪のなげな控えめな老紳士とはいえ。
人の妻を拝借したうえでやることは、おなじらしい。
「行ってまいりました」が「逝って・・・」と耳に響くのは。
きっと、気のせいばかりではないはずだ。

「お行儀のいいかたよ。那恵子さんの処女を奪ったのも、
 彼女が失恋して、ごじぶんのほうから望まれたあとだったそうよ」
妻は彼の紳士ぶりをふいちょうしてやまない。
「あちらのほうも、とても想いのこもったなさりかたなのよ。
 それでね、今夜は・・・」
生垣の奥に引きこまれて。燈火も届かない闇のなか。
どんな儀式がおこなわれたのか。
こと細かに伝える可愛い唇は。
軽く、嘲りを浮かべるように。
私の顔色を、くすぐたったそうに愉しんでいる。
そうしてさいごに、思い出したように。
「あらそうね。あなただけいいこと、なかったわね」
引きずり込んだ夫婦のベッドのなか。
可愛い唇は、さえずりをやめない。
―――こんど、逢っているところ、見せてあげるわね。
―――あなた、愉しんでくださるわよね?

気が進まない。むしょうに気が進まない。
女が吸血鬼に襲われるシーンはいく度も目にしてきたけれど。
よりにもよって、最愛の妻が・・・
そういう思いと裏腹に。
もう、いまから、腰のあたりがじくじくと恥ずかしい湿りを帯びてくる。
足は、ひと足早く出かけていった妻の後を追って、
しぜんと公園へと向いている。
昼間の喧騒とは裏腹に。
ひんやりと霧たちこめる公園の敷地。
煌々と照らし出す燈火のなかで
しぃん・・・と静まりかえった空間が広がっている。
生垣の奥の闇のなか。
ざわざわとかすかな音のたっているあたりが、
きっと不倫の現場なのだろう。
「ねぇ、ねぇ。今夜は主人が見ているの。あなたも協力してね」
生娘のような白い頬に。
ニッと、イタズラっぽい笑みを浮かべて。
妻はそんなふうに、情夫をそそのかしているのだろうか。

夜目がきいてきた。
薄闇の彼方から浮かび上がるのは、一対の男女。
妻は薄目をあけて、夢見心地のまま、血を吸われている。
ワンピースにあしらった花柄が不規則になったように見えるのは。
派手に散らされた、薔薇の花びらのせいだろう。
紳士は妻の手の甲に接吻を重ねて。
慇懃に、礼をかえしているようだった。
妻がなにかを、囁いている。
―――ホラ、あのひとが来たわ。たっぷりと、見せつけてあげましょうよ。
そんなふうにでも、囁いているのだろうか?
男は妻の両肩に手を添えて。
謝罪するように、その身を寄り添わせて。
こちらには目も向けずに、姿勢を崩していった。
ふたつの影が埋没した草むらが、いつまでもいつまでも、
風もないのに、不自然に波立っている。

「お嬢さんたち、吸われる量が減ったみたい」
それはそうだろ・・・ひとり増えたんだからな。
少し、むくれている私。
妻はすべてを見透かしたように。
お莫迦さん、ねぇ。
声をひそめる。
「草むらのなかの私の囁き、聞えなかったみたいね。
 なんて言ったか、あててみて。あ・そうそう。
 ダンナに見せつけたいなんて、これっぽっちもいってないわよ。
 あの人はそういうこと、お悦びにならないから」
どこまでも見透かしたようにそう言われて。
すっかり毒気を抜かれている。

吸血鬼が血を吸うのはね。
渇いたから・・・だけじゃないのよ。
あのお齢であれほど召し上がるのは。
怨念があるからよ。
奥様、再婚なさっていたでしょう?
どうしても、気になるんですって。
那恵子さんも彼氏とすぐに別れちゃったし。
お嬢さんたちは皆さん、フリーですよね?
私だけが、主婦♪
それが夫をおいて逢いにくる。
どういう女か?って思ったらしいの。
私申し上げたんです。
ひと刻の愉しみに、ほかの男に身を任せても。
いちばん大切なのは夫ですのよ・・・って。
つまらない嫉妬で、奥様を苦しめてはいけないわ。
・・・言い過ぎだったかしらねぇ。


あとがき
7月3日付の「黒いハイソックスの看板娘」の続編です。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-338.html
いちどダミーで血を吸わせた由貴子が、事件が「解決」してからも逢っている・・・
嫉妬にかられた夫の目からは、魂の浄化のため・・・とはなかなか映らなかったようですが。^^;
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コメント

やきもち(〃∇〃)
 由貴子さんは、天真爛漫でいらっしゃいます。
さやかは、喜ぶだけでなくって
嫉妬に身を焦がしてもらわないとつまらないのです。
柏木さんも、毒気を抜かれてぽかんとしてないで
じりじりじりじり・・・焦げてくださーい。
by さやか
URL
2006-07-17 月 14:42:40
編集
>さやか様
焦げすぎると、キケン。
焦げないと、生煮え・・・
味加減、微妙ですな。^^
by 柏木
URL
2006-07-17 月 15:45:50
編集

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