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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

三つの鐘 ~祝・ご入学~

2019年01月19日(Sat) 07:08:55

不思議な風景に、貴志は胸をときめかせていた。
ひと月ほど前だったら、とても想像さえできない光景だった。
そのころはまだ、ゆう紀とは婚約をしたてのころだった。
親たちのすすめで、父親の同僚の娘さんという人とお見合いをさせられて。
十代の婚約は決して早くない、街のためにはとても良いことなのだと聞かされていた。
両親はまだ、その街に赴任したことはなかったけれど。
父親の勤務先の創業者が、不採算を承知のうえで設置したその街の営業所に勤めることは、エリートコースのひとつだとさえ、いわれていた。
「父さんもその街に赴任することがあるの?」
と訊く貴志に、
「さあ、どうだろうね?」
と、父親はちょっとだけ困った顔をしてなま返事をしたものだったが、
そのときにどうして父さんの返事がはっきりしないものだったのかは、いまの貴志にはよくわかる。

高校受験の時期が、近づいていた。
進路を母親に聞かれたときに、貴志が口にした学校名は、その街に所在する私立校だった。
大きく目を見開いた母親の美晴をまえに、「ぼくひとりでもあの街に行きたいんだ」と、貴志は告げた。
中3という若さで父親の同僚に処女を捧げた婚約者のゆう紀も、その学校に進学する予定だと、親たちも聞かされていたらしい。
「反対しにくいわね」と、貴志のいないところで美晴は夫の継田にいった。
継田家がその街のしきたりにまみれてしまう日もそう遠くないと、継田も予感せざるを得なかった。

合格通知が届くと、貴志はすぐにでも街に移りたがった。
「嘉藤の小父さんの家から通ってもいいって、言ってくれてるんだ」
息子がどうして同僚とそんな関係を結んだのか、継田にはわからなかったが、新たに費用を出して息子のためのアパートを借りるよりは安上がりだな、と、安直に思った。
まさかその嘉藤に、まな娘が日常的に汚されていることなど、そのときの継田にはまだ、思いもよらぬことだった。

貴志はいまの学校の卒業式も、セーラー服を着用して出席した。
「恥かしくないから。いまのクラスメイトとは、もう会わない関係だから」
貴志はそう言い張って、背広姿の父親と、スーツ姿の母親とともに、白のラインが三本入ったセーラー服姿で肩を並べて歩いた。
「良い時代になったってことなんだろうね」
継田は自分の気持ちを整理しかねながらも、自分自身に言い生かせるように美晴にいった。
美晴は継田よりもすこし前から、貴志が妹の制服を着て学校に行きたがっているのを知っていたし、
夫には内緒で一度ならず、女子の制服を着用して通学することを息子に許してしまっていた。
もちろんそんな彼女も、まな娘や息子の許嫁が、嘉藤に日常的に汚されつづけていることなど、思いもよらぬことだった。

その両親がいま、この街をいっしょに、歩いている。
街の学校はブレザーだったが、
貴志は同じクラスの男子生徒とはボタンのつき方が正反対のブレザーを着、
グレーのプリーツスカートのすそをひざの周りにそよがせて、
濃紺のハイソックスに包んだふくらはぎを見せびらかすように、大またで闊歩していく。
この街への転勤を希望した父親が、母親を伴ってこの街に来た時、貴志は父親の首すじに赤黒い痕がふたつついているのを発見した。
たぶんそれは、自分が嘉藤につけられた首すじの痕と、同じ間隔のはず。
父親は母親よりもひと足早く、同僚と和解をしたらしい。
嘉藤がまな娘と息子の嫁になる少女と契り、息子までも女として愛し抜いていることを、受け容れていたのだった。
そしていま父親は、まだなにも知らない母親の美晴を伴って、嘉藤の家を訪問しようとしている。
入学式の帰り道のことだったから、いつも質素な美晴も、小ぎれいなグリーン系のスーツで着飾っている。
けれども、この日のためにきちんとセットされた、ゆるいウェーブの黒髪も、
たんねんに化粧を刷かれた色白の豊かな頬も、
純白のブラウスの胸もとで清楚に結わえられたリボンも、
折り目正しく穿きこなされたベーズリ柄のスカートも、
脚に通した真新しい肌色のストッキングも、
ぴかぴかと光る黒のエナメルのハイヒールさえも、
あと10分と経たないうちに、夫よりもはるかに年上の暴漢の手にかかって、
持ち主の血潮を点々と散らされながら、弄ばれ嬲り抜かれてしまうのを、
貴志も、父親の継田さえもが、予感していた。

けれども美晴はきっと、快楽の淵に堕ちてしまうだろう。
娘や息子の血の味を通して、彼女もまた、貞淑妻の裏側にマゾヒズムを秘めていることを、読み取られてしまっているから。
折り目正しい正装に不似合いなあしらいを受けてうろたえた母さんが、
服を破かれ肌を露出させながら狂わされてゆく――
そんな光景を、父親とともに歓んでしまおうとしている自分が、呪わしくもほほ笑ましかった。
そして、堅実な良家の主婦を堕落させることを嗜好のひとつとしている嘉藤に、
永年連れ添った自分の愛妻を気前よく添わせようとしている父親の気前の良さも、呪わしくてほほ笑ましかった。
両親から受け継いだマゾの血が、いまでも貴志の全身に育まれ、脈打っている。
女子の制服を身に着けたその身に廻るぬくもりを抱きしめるように、貴志はひそかに自分の胸を抱いていた。

ボ~ン。
この街に持ち込まれた岩瀬家の古時計が、嘉藤の邸の奥で刻を告げた。
午後一時。
それは、継田夫人の貞操が喪失されると予告された時刻だった。
放恣に伸び切った白い脚には、裂かれた肌色のストッキングが、まだ切れ切れに残っていた。
自分を組み敷いている獣の欲情に応えはじめてしめてしまっている自分を呪いながらも、
美晴は夫と息子の見つめる視線を痛痒く受け止めながら、男に迫られた熟女としての役目を果たしはじめようとしている。



あとがき
「谷間に三つの鐘が鳴る」という歌があります。
ひとりの人間の人生を、生れたとき、結婚したとき、この世を去るときと、三つの鐘で表現した歌です。
素晴らしい歌とは似ても似つかない、どうにも罪深い鐘の音が、この街では絶えず聞かれるようですね。

美姉妹の葛藤を描いた前作を受けて、この三部作では妹娘の婚約者の変貌を描いてみました。
第一話では貴志の妹が添え物のように犯され、
第二話では貴志が女子生徒として犯され、
第三話では貴志の母が入学式のスーツ姿で犯されていきます。
母や妹、婚約者を寝取られてしまうことは、自身の初体験と同じくらい、深い意味をもっていると思われます。
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