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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ひとり残らずモノにする。

2019年02月24日(Sun) 07:28:22

吸いつけた唇の下、黒のストッキングごしに触れるふくらはぎは、ちょっぴりだけ筋肉質だ。
姿は女性でも、ほんとうは男――
まだ半ズボンにハイソックスの少年だったころから、俺が血を吸いつづけている男の子――
貴志という本名を変えて、女の姿をしているときには、”貴子”と呼ぶことにしている。

しなやかなナイロン生地の舌触りを名残惜しみながらも、私は唇を放す。
いつもよりちょっと昂奮したせいか、少し吸い過ぎたらしい。
”彼女”は蒼ざめた頬に、それでもほほ笑みを泛べる。
貴志を正式に彼女にしたのは、高校受験の合格祝いで犯したときだ。
傍らに横倒しにした姿見のなか、ずり落ちかけた紺のハイソックスの両脚が、股間の疼きをこらえるように、足ずりをくり返していた。


貴子の家を出たのは、夕方近くだった。
部屋を出るとき”彼女”は、半裸のまま放心状態だった。
ストッキングの穿き心地をこよなく愛する”彼女”のために、
太ももがあらわになるほど咬み剥いだ黒のストッキングは、”彼女”の足許をいびつに染めていた。

家を出てすこし歩くと、彼方から着飾った女たちが数人、連れだって歩いてくる。
そのなかに俺は、貴志の母親である達子を見出した。
達子もすぐに、俺に気がついた。
彼女は仲間たちに別れを告げるとそそくさと列を離れて、寄り添うように歩み寄って来た。
「私の血が欲しいの?」
口許についた息子の血を、達子は気づかぬふりをした。

ふつうなら、着飾ったご婦人たちが通りかかると、
ひとり残らず足許に唇を這わせて、ストッキングをむしり取ってしまうのだが――
達子がそのなかにいるときだけは、別だ。
彼女のまえでほかの女を愉しむほど、俺は無作法ではない。
なによりも――達子との仲は、彼女の夫さえもが認めている関係なのだから。

初めて貴志を襲ったころは、達子はまだ30代。
むしろこの人妻が目あてで、その息子を狙ったのだ。
首尾よく息子を手なずけて、家にあがり込んで、勉強を教えると称して貴志と部屋で2人きりになって、
お茶を淹れて部屋に来た達子に俺は慇懃に礼をいうと、すぐにお茶を飲み干して、
それから達子の生き血で喉を本格的に潤したのだ。

人妻を襲ったときには必ず、男女の関係も結んでゆく。
半死半生で喘いでいる達子を抱きすくめたのは、貴志の目のまえでのこと。
けれども貴志は俺の狼藉を止めようともせずに、
まるで自分が犯されているかのように、息せき切りながら、
母親が主役のポルノビデオの生演技に、見入ってしまっていた。

さっき出てきた貴志の家に戻ると、
リビングの真ん中で女装した息子が大の字になって気絶しているのには目もくれず、素通りして夫婦の寝室に足を向けた。
そして、俺を部屋に招き入れると、ベッドのうえにあお向けに横たわった。
抱きすくめた両肩をかすかにこわばらせながらも、達子は首すじに刺し込まれてくる牙を、おだやかに受け止めた。

ずず・・・っ・・・じゅるう・・・っ・・・

生々しく啜られるほうが好き。
達子の口癖だった。
俺はわざとクチャクチャと下品に音を立てながら、熟れ切った40女の生き血を喉に流し込んでいった。

達子が静かになると、じゅうたんに伸べられた黒ストッキングの足許に唇を吸いつける。
息子とおそろいの黒のストッキング。
彼女が脚に通していたナイロン生地はツヤツヤとしていて、
くまなく唾液をなすりつけてゆくヒルのように強欲な唇に、しなやかな舌触りを伝えてくる。
ネチッ、ネチッと咬み破りはじめると、達子は「アッ、ひどい」と、人並みなご婦人らしい非難を込める。
けれどもその実彼女が悦んでいることは、
俺が吸いやすいように、あちこちと吸う部位を変えてゆくのに合わせて脚をくねらせつづけることで、それとわかった。


翌日のこと。
昨日吸い取った母親と息子の血潮の味を反芻しながら邸でのんびりかまえていた俺のまえに、ふたりの訪問客が現れた。
「貴志の妹を連れてきました」
青年のほうがやや引きつった声で、自分よりも少し年下の少女を、俺の前に引き据えた。
青年は貴志の親友だった。
――あいつ、親友に妹を売られちまうのか。
ちょっぴりの憐憫が、俺の胸をかすめる。
うしろから両肩を羽交い絞めにされた少女は、恐怖に引きつった眼で俺を見つめる。
俺は、こういうまなざしに弱い。
「どれ」
とひと言呟くと、やおら身を起こして少女ににじり寄って、
つぎの瞬間腕のなかに抱きすくめた少女の首すじを咬んでいた。
「ああーッ!」
貴志の妹は悲しげに呻いた。
けれども俺は、貴志の妹の活きのよい血液で、ゴクゴクとのどを鳴らしつづけた。
貴志の妹を連れてきた青年は、数年後彼女と結婚した。
そう、彼は未来の花嫁が処女のうちに、俺に生き血を吸わせてくれるという、最大限の好意を示したのだ。
婚礼の前の晩、生き血を抜き取られてぐんにゃりと伸びてしまった花婿の目のまえで。
花嫁の処女破りの儀式を盛大に遂げてやったのは、いうまでもない。


貴志が男のなりをして、若い女性を一人連れておずおずと現れたのは、それから少し経ってからだった。
どう言い含めたものか、やつも自分の親友と同じことをしようというのだ。
「三田麻衣子さんです。来春、結婚するんです」
やつは改まった口調で、そういった。
うちは吸血鬼に献血をしている家だと、やつは彼女に正直に告げたそうだ。
それでもお嫁に来てくれるのか?と問う貴志に、黙って頷き返したという彼女も、かなりの変人だと俺は思う。
ピンクのスーツの下、肌色のストッキングに透けるすらりとしたふくらはぎに、俺は早速目を奪われてしまっている。
「じゃあ遠慮なく」
俺はひと言そういうと、すすめたソファに腰かけた麻衣子の傍らににじり寄って、こともなげに首すじを咬んでいた。
「あッ・・・」
抱きすくめた両肩に力がこもり、彼女は本能的に俺の腕を振りほどこうとしたけれど。
貴志は彼女の両方の掌を、スカートのうえに抑えつけてしまっていた。
「だいじょうぶ。ぼくがついているから・・・」
恋人を勇気づける健気なささやきをくすぐったく聞き流しながら、俺は23歳のうら若い生き血で、ゴクゴクと喉を鳴らしてしまっている。
貧血を起こした麻衣子がぐったりとソファに身をもたれかけさせると、
肌色のストッキングに透ける足許に、おもむろに唇を吸いつけてゆく。
貴志はそんな俺の不埒な愉しみを、ドキドキとした目線で見守るばかり。
未来の花婿の目のまえで。
嫉妬に満ちた目線にくすぐったさを感じながら、礼儀正しく装われた薄いナイロン生地を、
俺は目いっぱい意地汚く、咬み剥いでいった。


案外と。
貴志の周りの女どもを、一人残らずモノにしながらも。
俺の一番の目当ては、むしろ貴志本人なのかもしれない。
貧血を起こした恋人の身代わりにと、彼女のよそ行きのスーツを着て現れた貴志は、
恋人の見守るまえで俺に女として抱かれ、女の歓びに酔い痴れてしまっている。
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