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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

夜風

2005年10月13日(Thu) 05:31:00

甘い微風のそよぐなか、ひと組の男女の姿が月夜に照らし出されている。
まるでこれから踊りを披露する一対のペアのように。
女は苔むした岩のうえに腰をかけて、頭をもたれかけてくる男のするがままにさせていた。
一見、嫋々とした風情と映る女はしかし、白いドレスの下にむっちりとした女の肉づきを豊かに秘めている。
うなじから肩にかけてむき出しになった褐色の皮膚はとてもなめらかで、脂ののり切った、という表現が似合いだった。
熟れた人妻の素肌がかもし出すものに、男は鼻腔の裡を濡らしはじめている。

「どうなすったの?きょうはずいぶんと、甘えん坊さんなのねぇ」
低く穏やかな声色が、揶揄するように男の鼓膜をなぶる。
女の手が男の頭をまさぐり、短く刈り込んだ髪の毛をもてあそぶのを、男はそのままにゆだねていた。
「血がたくさん、欲しいんでしょ?」
顔をかがめて覗き込んでくる女に、
図星だ
といわんばかりに、
男の手がそろそろと女の足許を伝いおりてゆき、
薄闇に透けてぬらりとした光沢を帯びたストッキングの上から足首をつかまえている。
「ウフフ・・・」
女の含み笑いには、淫靡な香りを帯含んでいいる。
足首を抑えつけてくる男の手には、それくらいあからさまな欲情がこめられていた。

「いいのよ。好きになさって。どうせもう主人もいない身体ですもの・・・どうやらそうしてくだすったの、あなたのようだけれど」
「ほんとうは、あの男があんたの血を吸うはずだったのかもな」
男が物憂げに呟いた。
あの男―――膝の上の男は女の夫だった男をそう呼んだ―――は、もともとああなる素養があったのだ、と。
吸血鬼に血を吸われて仲間になったものはしばらくのあいだ、己の家族の血を吸って生きながらえようとする。
おれはやつの、その当然の権利を横取りしてしまっている・・・

「なぁに、弱いことおっしゃっているの?要は血を吸いたいんでしょう?」
夫の話題となると、女はとても冷ややかだった。
―――あのひとに血をあげるくらいなら、あなたに獲させてあげたい。
男の耳もとに注ぎ込まれたささやきはあきらかに、男のなかに埋もれ火のようにくすぶっていた欲望に火をつけていた。

きゃっ。
ひと声、ちいさな悲鳴をのこして、
ふたつの人影は岩の向こう側へと消えた。
悲鳴は、とてもくすぐったそうだった・・・

あとがき
どこか弱さをたたえる吸血鬼。
うちに強さを秘める熟女。
襲う側と血を吸われる側とが入れ替わりになったような力関係ですね。
最近の重要なモチーフになっているような・・・^^;
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