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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

婚約者の情事・後日譚

2019年04月17日(Wed) 07:43:25

S夫人とわたしとの交際は、結婚後もつづいた。
勤め帰りに立ち寄る趣味のサークルがひけるのは夜遅くであったし、
わたしは頼もしいエスコート役として、S夫人の夫である義父にも重宝がられた。
彼は体が弱く、家から出ることはめったになかった。
夫人との深夜の「お茶」が、いつか「お酒」を交えるようになっていたのは、
すでにわたしが夫人の娘むことなっていたから、その種の警戒心から夫人が自由になったためだろう。
むろんだからどうということもなく、わたしは夫人を自宅まで送り届けると、
義父に礼儀正しく挨拶をして、家路をたどるのだった。

怜子はそういう夜は、彼と過ごすことにしていたから、夫婦の間にもなんの問題も起こらなかった。
時には新居に彼氏を招ぶこともあったから、むしろ気を利かせて帰宅を遅らせているという部分も、わたしのなかにはあった。
いちどだけ、彼氏とはち合わせてし合ったことがあった。
男同士、お互いきまり悪そうに会釈をし合って、そのようすを怜子は腕組みをして、ふたりを面白そうに見比べていた。
わたしがシャワーを浴びている間、ふたりが夫婦のベッドを使うのを許してしまった。
ふたりのための時間を少しでも長くしてやろうとして、シャワーが風呂になり、湯気にあがってしまい、
気がつくと彼氏に介抱されていた。
あがるのが遅いと心配して風呂場をのぞき込んだのは、彼氏のほうだった。

体格も風采も、彼氏のほうが上だった。
けれども怜子はわたしのことも夫として十分尊重していたし、彼氏もふつうに親しい同性としてわたしを遇したから、
わたしの劣等感が無用に刺激されることはなかった。
ときにはふたりのセックスのことを、夫として問いただすこともあった。
「この間の出張で留守をしたときには、ひと晩じゅうだったの?」
「そうね、明け方までずっといたわね」怜子が悪びれずにそうこたえると、
「こいつ、けっこう上手になりましたね、もしかして優志さんのしつけかな?」
彼氏も笑いながら応じた。
そんなはずはないとわたしがいうと、
「じゃあ、別に男ができたのか?」
彼氏はおどけて怜子を問い詰める。
「じつはちょっとだけ付き合い始めた人がいて・・・」
と決まり悪げに怜子が告白するのを、夫と情夫は顔を並べて、面白そうに聞き入っていた。

S夫人が、まな娘の”乱行”を知ったのは結婚して半年ほど経ったころのことだった。
「ヒロシから聞いたわ、あの子浮気しつづけているんですって?」
いつもの「お茶」が「お酒」に変わってしばらくして、いきなり切り出した彼女の言葉を、かわすいとまはなかった。
「エエ・・・はい・・・」
「ご迷惑な縁談だったかしら」と、S夫人は自分の娘よりもわたしのほうを気づかった。
「イイエ、そんなことはありません」
わたしはふたりのために弁護をした。
夫として、新妻とその浮気相手とを弁護するなどあってはならない・・・はずだった。
けれどもわたしは憑かれたように、三人の奇妙な関係を、夫人に告白しないわけにはいかなかった。
結納帰りにふたりの情事を視てしまったこと。
それは、ヒロシとの関係を続けたがっていた怜子さんが、わたしの気持ちを確かめるために仕組んだものだったこと。
わたしは2人の関係を受け容れ、むしろ昂ったり愉しんだりしてしまっていること。
「男として、夫として恥ずべきことですが」
そうつけ加えたわたしに、S夫人はどこまでも同情的だった。
「自分を責めることはないですよ、貴方は優しい男性です。
 怜子のことを愛して下すっているからこそ、あの子の過ちも受け止めて下すっているのでしょう。
 妻が他の男に抱かれることで昂奮を覚える夫がいることは、知っています。
 女の私にはよく理解できないけれど、どなたも無類の愛妻家のようですね」
とまで、いってくれた。
怜子と彼氏とは従兄妹どうしだったから、S夫人にとって彼氏は甥にあたる。
ヒロシがS夫人と仲が良かったことが、怜子とヒロシとの関係を長引かせてしまったのかも――
そう呟いて悔やんだS夫人は、いつになく酔っていた。
今夜はもう帰りましょうというわたしに、S夫人は素直にしたがった。

玄関先で別れようとすると、夫人はいった。
「あの子は今、ヒロシと逢っているんでしょう?」
「エエ、たぶんそうだと思います」
「ご自宅で?」
「さあ、今夜はどうでしょう、映画を見て帰ると言っていましたから、ホテルかもしれません」
「まあ、どっちでもいいわ」
夫人は少し蓮っ葉な口調でひとりごちると、いった。
「あがっていきなさい、お宅のお母さまにも私、申し訳ないから」
唐突に母の名が出たためか、わたしは素直に夫人の言に随った。

S家のリビングは、いつもながら落ち着いた雰囲気だった。
深夜に訪れたのは初めてだが、広い窓から陽の光がふんだんに注がれる日中とは違って、
暖色の照明だけが支配する空間だった。
「化粧直してくるわね」
夫人はそう言い残して、座を起った。
向かい合わせのソファに、長々と衣類がひとつ、掛けられていた。
よく見ると、黒のスリップだった。
夫人が日ごろ身に着けているものだろうか。
長々と伸びる優雅なレエス入りのスリップが夫人のしなやかな肢体を包むところを想像して、
わたしはちょっとのあいだかすかな陶酔をおぼえた。
夫人の化粧直しは、やけに時間がかかっていた。
十数分も待たされただろうか、ふたたび姿を現した夫人を見て、わたしは息をのんだ。
夫人は、いつもの黒のワンピースから濃い紫のスーツに着替えていた。
ひざ丈のスカートから覗く格好の良い脚は、薄地の黒のストッキングに艶めかしく縁どられていて、齢を忘れさせた。
「娘のおわびに、ひと晩私が貴方専属の娼婦をつとめます。お義父さんのことは気になさらないで」
間近に顔を近寄せた彼女の口許からは、刷きなおしたルージュの芳香が、ほのかに漂っていた。

どうやって振る舞ったものか、よく憶えていない。
けれども、わたしの意思に反して、わたしの掌は、
義母の着ていた漆黒のブラウスの胸を揉みしだき、
ストッキングに包まれたひざ小僧を撫でさすり、
豊かな太ももの肉感をたっぷりと感じながら、その掌をスカートの奥へとすべらせていった。
脂粉の芳香に包まれた濃密な接吻はすべてを忘れさせ、
目のまえにいる女性が夫人なのか怜子なのかさえ、定かではなくなっていった。
ふたりの身体はソファからすべり落ち、わたしはじゅうたんのうえにS夫人を組み敷いた。

あらわにしてしまった熱情に、夫人はよく応えてくれた。
「主人のことは気になさらないで」
くり返し言われるたびに、同じ屋根の下にいるはずの義父の存在を思い出したが、
却ってそのことが刺激を生み、わたしの股間を昂らせた。
「怜子も今ごろ、愉しんでるわね。あなたも愉しむ権利がある。それに私も・・・」
夫人はうわ言のように口走った。
「今夜は母娘で娼婦に堕ちるわ」とも、口走った。
なん度めかの吶喊を受け入れた後、夫人がふと口にした言葉に、わたしはぎくりとした。
「じつは主人も、愉しんでるの」
え?と身を起こしかけたわたしを夫人は制すると、
「いいの、あなたはあなたの役目を果たして」
夫人は巧みに腰をくねらせてわたしを誘い、さらなる吶喊を快感たっぷりに受け容れた。

血は繋がっていないけど、主人と貴方は似てるわ・・・
貴方と夜の帰りが遅くなると、よく言われたの――ホテルに寄ってくればよかったのにって。
怜子とヒロシができちゃったとき、私は母親として二人の関係を止めようとした。
でも二人きりでヒロシと会ったのがよくなかった。
その場で私はヒロシに犯されて、主人に隠れて関係を続けたの。
あの子とヒロシが離れることになるならと思ってしたことだけど、そうはならなかった。
ヒロシは母娘とも、自分の奴隷にしたのよ。
でも主人は、私を怒らなかった。別れなかった。
それで知ったの。妻をそんなふうに愛する男性がいることを。
あなたも主人と同類ね。あの子のためにも、ヒロシのためにもよかったわ。
お願いだから、これからもふたりが逢うのを許してあげてね。
そして、身の置き所がなくなったときには、私のところに来て頂戴ね。

以来、しげしげと義母のもとを訪れるようになったわたしを、怜子は怪しんだが、
ある時点からは納得したらしく、わたしが怜子の実家を訪れるのを歓迎するようになった。
義父もまた、わたしのことを歓迎するようになった。
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