淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
若妻の母の訪問。
2019年04月18日(Thu) 07:58:57
おばあちゃんになる前に、抱かれに来ました。
そういってにこやかにほほ笑むのは、あの若妻さんのお母さん。
傍らで肩をすくめる若妻さんと、同じ色合いのほほ笑みだった。
血は争えない、母娘なのだとだれもが思った。
そして、娘の魅力は母親譲りなのだと、だれもが認めないわけにはいかなかった。
「うば桜でごめんね」という娘に、「こら」と軽く咎めると、お母さんはこちらのほうをふり返って、いった。
もうあと少しで、還暦なのですよ。
この齢で主人以外の殿方とお付き合いするなんて、思ってもいませんでした。
お母さんの意図は、だれもが承知している。
妊娠した若妻さんの身代わりを、これから勤めてくれるというのだった。
わざわざ選んで着込んできたという純白のスーツは、とても奥ゆかしく、男どもの目に映えた。
しとやかにまとわれたストッキングに、だれもが目を輝かせた。
行儀よく正座をしたひざ小僧は、きめ細かく織りなすナイロン生地の、淡い光沢に包まれていた。
正座をしたときひざ小僧が覗く丈のスカートを、このご婦人は一着だけ持ち合わせていて、
わざわざそのために、きょうの装いを択んだのだった。
2時間後。
乱れ髪になり、よそ行きのスーツを着崩れさせながらも、
お母さんは鶴のようにしゃんと背すじを伸ばして、お気が済みましたか?と訊いて来た。
そしてだれもがまちまちな顔で肯くと、「ふつつかでした」と丁寧に頭をさげた。
主人には、だまっていてくださいね。
傷つくとかわいそうだから――
娘の手伝いという名目で、時折当地に伺います。
もちろんそのためもあるものですから、二六時中というわけにはまいりませんけれど、
出来る限りのお相手をいたしますから、そのあいだ娘は見逃してあげてくださいね。
だれもが表情を改め、少年のように神妙に頷き返していた。
どこまでも奥ゆかしい、心優しいお母さんだった。
- 前の記事
- 譲歩。
- 次の記事
- 若妻の訪問。
- トラックバック
- http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3771-6477dec9