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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

再来。

2019年04月23日(Tue) 07:26:46

やあ、こんばんは。
声をかけられた顔をあげた吸血鬼は、驚きと戸惑いをうかべた。
目のまえで無邪気に笑っているのは、半ズボン少年――つい先月まで日常的に血を吸っていた相手だった。

夕暮れ刻の公園で独りで遊んでいたところをつかまえて、首すじを吸い、失神させると、
ふくらはぎを咬んでハイソックスを咬み破りながらの吸血を愉しんだ。
彼が半ズボンの下に履いていた、紺地に白のラインが入ったハイソックスに、目を惹かれたからだった。
以来、2,3日に一度は念波で抗いがたく呼び寄せて、
首すじを咬んだりハイソックスの舌触りを愉しみながらの吸血に耽る日々がつづいた。
ハイソックスのふくらはぎに唇をなすりつけてくる吸血鬼に、
少年は「なんだかやらしいネ」と、彼の意図を見抜いたことを言ったけれど、
彼は少年の足許にいやらしく舌をぬめらせて、ハイソックスをふしだらにずり降ろすことに熱中した。
やがて彼らの関係は、母親の知るところになった。
帰宅してくる少年が、ハイソックスに血をつけていたり、素足のまま戻ってきたりすることに疑念を抱いた彼女は、
夕刻の公園に少年を迎えに行き、吸血の現場を目撃し、自身も難に遭った。
首すじを咬まれた彼女は、息子の前で失神した。
ひざ下丈のスカートの下に穿いていた肌色のストッキングは、
息子のハイソックスと同じあしらいを受けていたぶり抜かれ、ふしだらに剥ぎ降ろされていった。
そして、息子がすでに股間に受け容れてしまっていた一物を、スカートの奥に突き入れられて、
良家の主婦は一瞬にして吸血鬼の奴隷に堕ちていった。

事態を変えたのは、少年の兄だった。
正義の味方のスーパーマンのように現れた彼は、弄ばれる母親と弟のありさまに顔をしかめて、
一撃のもとに吸血鬼をやっつけた。
重い傷を負わされた吸血鬼は追い払われて、もう二度と彼の家族の前に姿を見せぬと誓わされた。

まじめな母と子とをたぶらかしたのは、確かによくなかったと、吸血鬼は恥じた。
彼にしては、珍しいことだった。
この街を離れるか、いっそこのまま飢え死にしてしまおうかと思い詰めたとき、
あの母子が不良の青年たちに道を阻まれているのを見た。
もともと、ひどく治安の悪い街だった。
吸血鬼は最後の力を振り絞って、”気”を投げた。
”気”は青年たちの乗るオートバイのタンクに命中し、誘爆を起こし、燃えあがった。
あわて騒ぐ彼らに襲いかかると、ひとりひとり首すじを咬んで、血を吸った。
心底から悪いやつの血はまずかったが、エネルギーにはなった。
吸血した後、どす黒い液体を吐き散らす吸血鬼を見て、駆け寄って来た少年が訊いた。
「なにをしているの」
こいつらの体にたまった毒を吸い取って、吐き出しているのだと吸血鬼はこたえた。
どうしようもないくらい悪いやつは、体内にこういうどす黒い粘液をため込んでいる。
それをすべて吸い出してしまえば、いちおうの真人間には戻ることができるのだと。

一か月後には彼らのだれもが改心して仕事を持ち、吸血鬼のところにお礼のあいさつに訪れた。
自分の彼女や妹、それに母親といった、”手土産”を持って――
彼らの血を片っ端から吸い取りながら、吸血鬼は、この街にもう少し長居するのも悪くない、と思った。
ほかの街に行っても、どうせ人を襲うわけだし、
相手が真面目な人間だったら、またぞろあの少年と母親のようなことになりかねないのだから――と。

この日もそうした手土産に、ありつくつもりだった。
相手は、かつての不良青年の一人の妹だった。
この種の若い女たちのなかでは、数少ない処女だったから、きょうも彼は舌なめずりをして、彼女の訪れを待ちかねていた。
あらわれた女をしゃぶりつくようにして抱きすくめて、いよいよ首すじに唇を吸いつけようとしたとき、女が苦しげにいった。
――逢うのはこれきりにして。好きな人ができたんです。彼に悪いから、もうここには来たくないんです。
以前なら、四の五の言われようが耳も買わずに、ずぶりと牙を埋め込んで、いうことを聞かせてしまうところだった。
けれども吸血鬼は脱力してしまって、昂ぶりを込めた牙をおずおずと引っ込めていた。
女はごめんなさい!と最敬礼をして、足早に立ち去っていった。

やあ、こんばんは。
あの少年が声をかけてきたのは、そんな失意の時だった。
あたりはそろそろ、闇に包まれようとしていた。
そっちこそ、どうしたんだ?もう遅いんだから、帰んなさい。
ご近所の口うるさい小父さんのようだと思いながら、吸血鬼はいった。
少年はいつものように半ズボン姿で、ねずみ色のハイソックスをひざ小僧のすぐ下まで引き伸ばして履いている。
肉づきのよいふくらはぎが描くなだらかなカーブに、吸血鬼は視線だけを吸いつけた。
「いいんだよ、咬んでも」
え?と、吸血鬼は訊き返した。
「ボクそのために、履いてきてあげたんだから」
このごろは、半ズボンもハイソックスも、流行りではないのだという。
だから学校にも履いて行く機会がないので、小父さんに会いに来るのに久しぶりに履いてきたのだと。
しかし・・・と、吸血鬼はおもった。
俺が少年の脚に唇を吸いつけるときには、欲情にまみれたよだれをたっぷりとしみ込ませてしまうときなのだと。
「わかっているよ、小父さん、やらしいものね」
少年はくすりと笑った。
「ほら、母さんも連れてきたよ」
たしかに――少年の背後には、あのときのご婦人が、奥ゆかしげな物腰で佇んでいる。

すでに彼らの体内から、吸血鬼の毒は抜けきったはずだ。
彼の唾液のもつたぶらかす力は、せいぜい一週間しか、もたないはずだった。
「だいじょうぶですよ、お気遣いなさらなくても――主人にも話してきましたから」
母親もまた、ほほ笑んでいった。
セックスの経験のあるご婦人を襲うとき、人間の男女と同じ交わりを結ぶのがつねだった。
そうすることが、相手のご婦人に対する礼儀なのだと、思い込んでいた。
吸血鬼に襲われていた当時、彼女は自分の夫に自分が受けた不名誉、自分が繰り返した裏切り行為を告げることをためらい、唇をかんでいたはずだった。
どうしても小父さんに血をあげたい――そんな言い張る少年の主張を容れざるを得ないと感じたとき、
彼女の背後にいた夫がいった。
「この子ひとりでは心配だから、きみもついていっておやりなさい。無事に戻ってこれるのなら、それだけで良いから」と。
そして、吸血鬼に逢っているあいだは、この家の主婦だということは忘れていてもかまわないから、と、つけ加えた。

「ほら、遠慮するなって」
少年親しげに笑いかけると、ねずみ色のハイソックスを引き伸ばして、吸血鬼の目のまえに片脚を差し出した。
真新しいハイソックスに流れる太めのリブが、街灯の光を受けてくっきりと浮き上がっている。
なまめかしい妖しさに魅かれるように、吸血鬼は少年の足許にひれ伏すようにしてかがみ込み、唇を塗りつけた。
「やっぱ、やらしいね」
少年が白い歯をみせたときには、ねずみ色のハイソックスは、吸血鬼の淫らな唾液でぐしょ濡れに濡れそぼり、
ふくらはぎにキリッと流れた太めのリブは、ふしだらによじれ、折れ曲がっていた。
街灯に輝く白い太ももや、首すじにまで牙を埋めて、吸血鬼は少年の血をしんそこ美味そうに味わった。

息子が夢見心地な顔つきになってベンチに寝そべってしまうと、こんどは母親の番だった。
「さ、どうぞ、お気の済むように」
そっと差し伸べられたふくらはぎは、ひざ下丈のスカートの下に慎み深く隠されていたが、
肌色のストッキングの丈の長さが、すくなくとも少年のハイソックスよりもあることを示していた。
ご婦人の足許に接吻をするときには、ちょっとだけ控えめに唇を吸いつけたつもりだったが――
吸着させるときに不覚にも洩らしたチュッという音は、間違いなく彼女の耳にも届いていた。
うろたえて戸惑っているのが、唇を通して伝わる彼女の身じろぎでそれと知れたから。
ストッキングの上から這わされた魔性の唇からは、淫らな唾液が分泌されて、
良家の人妻の無防備な素肌を、侵蝕してゆく――
夫人は限りなくうろたえ、恥じらった。
少年が薄眼をあけて見つめる前で押し倒されて、スカートをまくり上げられるときも、
行儀悪く半脱ぎになったストッキングをまだ足許に残しながらのセックスに、
彼女はうろたえ、恥じらいつづけた。

母親と弟が自分の意思で再び吸血鬼の友だちとなったことは、少年の兄を再び激昂させることにはつながらなかった。
むしろ彼は、逆の行動をとった。
彼は弟が血を吸われた翌日の夕暮れ刻に、吸血鬼のいる公園を訪れて、いった。

さいきん、この街から悪いやつがいなくなった。
俺は悪いやつをこらしめることしか考えていなかったが、あんたは自分の能力を善用して、悪いやつをふつうのやつに変えてしまったんだな。
紹介するよ、俺の恋人だ。将来結婚することになっている。
時々連れてきてやるけれど、あんまり失礼な態度を取らないでくれよな。
なにかあったら、彼女から聞いて、ぶん殴りに来るからな。
彼女が気に入ったら、自分で来ることもあるだろう。
忙しい仕事をしているひとだから、貧血にならない程度で手かげんしてくれよ――

そう、正義の味方のスーパーマンは、吸血鬼に自分の恋人を紹介してしまったのだ。
少年の兄の”手土産”に、吸血鬼が満足したのはいうまでもない。
彼の恋人は真面目な女性で、まだ処女だった。
ふたりは結婚前に結ばれたけれど、それからも恋人は自分の意思で、夕暮れの公園にやって来た。
セックス経験のあるご婦人と時間を共にするときに彼がどういうことをするのかを、スーパーマンは知っていたはずなのだが、
どうやら吸血鬼がスーパーマンにぶん殴られたといううわさは聞こえてこなかった。
彼女が黙っていたのか、彼氏が許していたのか――
たぶんその、両方だったのだろう。


あとがき

最初は抵抗しながらも吸血鬼の意のままにされてしまった人たちが、
呪縛が解けたはずの時期になって、もう襲われなくてもよいいはずなのに、
自分を襲っていい思いをしていた相手のことを気づかって、ふたたび訪れて意のままにされてゆく。
こんどはお互いに、気づかい合い、愉しみ合いながら――

どういうわけか、惹かれるプロットです。
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