FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

結納を迎える。

2019年05月15日(Wed) 07:43:24

ふつう、結納まえにいちばんもめるのは、花嫁の父親のほうだという。
でも、わたしたちの結婚の場合には、逆だった――

彼女は少女のころから吸血鬼に血を吸われていた。
処女の生き血をたっぷり吸い取られた身体は、彼の牙に反応するようになっていて、
たとえ結婚した後でも、別離ということはあり得なかった。
「あのひとに血液を供給する手だてを、減らすわけにはいかないのです」
彼女のお父さんも、そういった。
そして彼自身も、自分の妻――彼女の母親――を、同じ吸血鬼に”進呈”していた。
彼女を家庭に迎えることは、わたしの実家を含め、吸血鬼の”ファミリー”となることを意味していた。
「そういうことなら、理解のある貴方を歓迎します」
お父さんは、そういった。

花婿としての権利は、侵害されないという。
その代わり、新婚初夜にはわたしの母が花嫁の身代わりになって血を吸われ、ひと晩愛され続けるという。
そして、ひと月の猶予期間を”蜜月”として許されたあとは、
わたしの新妻もまた、吸血鬼の情婦に加えられることになる。
わたしも、父も、自分の妻の貞操を彼に捧げなければならなかった。

わたしにいなやはなかったけれど、父が渋るのはとうぜんだった。
母は思い切ったことに、自分のほうから彼を訪ねて、咬まれてしまった。
吸血鬼に襲われた既婚の女性はほぼ例外なく、その場で貞操を奪われることになるはずが、
「お父さんと相談してからにしてくださいね」のひと言で、彼女はスカートの中を視られることなく帰宅した。
それからあとは、夫婦の会話――
「あの子の幸せのために、私は淫乱女房になりますから」と、さいごにそういわれたそうだ・・・

結納の席には、彼女とご両親は、一時間もまえに現れていた。
ふた組の家族は数時間歓談し、そのあいだ二人の母親は交代で、奥の間に呼び込まれていった。
ふすまの向こうでどういうことが行われているか、だれもが察していたけれど。
着物の襟を掻き合わせ、ほつれた髪を繕いながら戻ってくるお内儀たちを目で迎え入れると、
そのまま何事もなかったかのように、歓談をつづけるのだった。
前の記事
家族の権利と義務
次の記事
「サービスレディ」。

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3790-e0ebcd72