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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

女装して訪問。

2019年05月23日(Thu) 07:16:40

「ヨウくん、ありがとうね。あのひとによろしく」
蒼白い顔をした母は申し訳なさそうに、ぼくにやさしく微笑んだ。
少し悲しげに見えたけど、反面うらやましそうでもあった。
「うん、だいじょうぶ」
そう答える声色がいつもより柔らかくなったのは。
きっと身に着けている母のよそ行きスーツのおかげだろう。
ふわりとしたブラウスの胸リボン。
キリっとしたジャケットのスーツにタイトスカート。
太ももや腰回り、足許に、ゆるりとまとわりつくパンティストッキング。
そう、ぼくは母の洋服を着て、母の代わりに吸血鬼に逢いに行く。

父がいなくなってから。
母が蒼白い顔をして勤務先から戻るようになって、
やがて仕事を辞めて、どこかに入り浸るように出かけて行って、
やがて妹を、いっしょに連れ出すようになった。
母親同様蒼白い顔で帰宅するようになった妹も、
まんざらイヤそうではなく母に連れられて出かけて行って、
やがて一人でも、ひっそりと訪問をつづけるようになった。
制服に合わせて履いていた白のハイソックスに、赤黒いシミをつけて家に戻るようになったのは。
母がパンストを伝線させたまま帰宅するようになったのと同じ経緯だった。

ああ、我が家の血は気に入られているんだな――薄ぼんやりとそう思っていた時に、
ぼくにもお招(よ)びがかかってきた。
母子三人、連れ立って歩くとき。
首すじにつけられた等間隔の咬み痕に、お互いさりげなく目線を交し合う。
それは、咬まれたものにしか目に入らない、魔性の刻印・・・

訪問先のお屋敷は、とても広い敷地の奥にうずくまっていて、
ぼくたち母子を飲み込むように、引き入れていく。
なん度か逢瀬を重ねたあと、いつもひとりの、同じ年ごろの女子と同じ待ち合わせ場所に居合わせるようになった。
呼び入れられる順番は、それぞれで、
お互い目線を交わし、黙礼しあって部屋に入っていく。
そして、ドア越しにかすかに漏れてくる吸血の音に、つぎはわが身と胸を震わせる。

着ている制服から、ぼくの学校の生徒だとはわかっていたけれど。
初めて校内で声を掛けられたのは、顔を合わせるようになってからひと月ほども経った頃のことだった。
「ヨウくん、ですよね・・・?」
声をかけてきた彼女の首すじには、鮮やかな咬み痕。
くっきり浮いた赤黒い痕に、日常のストレスが頭から離れた。
それ以来。ぼくたちは付き合うようになった。

お互い連れだってお屋敷に足を向け、
お互いドア越しに、もうひとりが吸血される気配に心を震わせて。
お互い吸血の名残につけられた首筋の咬み痕や、ハイソックスのシミに目を向けあって。
お互い、やがて恋しあうようになっていた。

ぼくたちはわかっている。
処女の生き血の吸い収めになるときに、吸血鬼は自分の犠牲者の純潔を手ずから散らすということを。
そして、セックス経験のあるご婦人を相手にするときには、男女の契りを交し合うことを礼儀だと思い込んでいることを。
ぼくたちはきっと、彼の意思に従いつづける。
そして、
結婚を控えた花嫁は、未来の花婿のまえで痴態をさらけ出し、
結婚を控えた花婿は、未来の花嫁の痴態に心震わせる。
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看護婦ですから。
次の記事
おそろいのライン入りハイソックス。

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