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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

心まで許してしまったのは、いつ?

2019年05月27日(Mon) 07:49:51

――ところで、彼に心を許したのは、いつのことだったのかね?
「そんなこと訊いて、どうなさるの?」
――少しは嫉妬してみたくなったのでね。
「変わったひと」と笑いながらも、昭代さんは夫の求めに応じていった。
それは俺にとっても、彼女の心中を知ることのできる、得難い話だった。

「さいしょのときからです。出勤の途中でヘンなこと言われて、とても気になって。
 でもだんだん心配になってきちゃって。
 看護婦の職業柄ですね。そこまでは、私も正常だったんですよ。
 でもこの人の待っている公園に脚を向けたときには、もう、少しはおかしくなっていたのかもしれない。
 首すじを咬まれて血を吸われて、そこまでは気持ちを強く持っていました。
 死んでしまうかもしれないと思っていたし。
 でもしばらく吸われつづけているうちに、このひとのしていることは愛情のこもった行為なのだと気がついて。
 それからは、夢中になって吸わせていたの。
 セックスもしたがっているって、わかっていたけれど。
 そこまで許す気はなかったんです。
 まだ明るいうちから、路上に等しい場所でなんて、あまりに非常識でしょう?
 でも、ストッキングを破らせてしまった時にはもう、もうだめだと思いましたわ。
――だいぶ、恥ずかしがりながら破らせていたね。
「視ていらしたの?助けてくださればよいのに」
――ぼくはぼくなりに、きみが出逢った男がきみにふさわしいパートナーかどうか、気にしていたのだ。
そう、たしかに昭代さんを襲っているときは、だれかに視られているという感覚が、常に付きまとっていた。
「もちろん、さいしょは厭々でしたよ。勤め帰りの装いを辱められるわけですから。
 このひとは私を侮辱するのが楽しいのか?って思いました。
 でもどういうわけか、応じてしまった。
 厭々応じることがこのひとを愉しませるというのなら、
 お相手すると決めた以上は愉しませてあげるのが務めだと思ってしまいましたの。
 だから、つぎに逢うときからは、ストッキングの穿き替えを携えるようにしました。
 伝線したストッキングのまま街を歩くのは、公衆の面前で恥を掻くようなものでしょう?
 もっとも――穿き替えは一足では足りなくて、2~3足用意しておくべきだとわかりました。
 このひと、助平ですから」
――ははは・・・
愛人のことをはにかみながら助平だと口にしたとき、ご主人は愉快そうに笑った。

――貴男のおかげで、わたしにも出番ができて、想いの丈を家内につたえることができた。
感謝します。
お礼に貴男には、最愛の家内の貞操をプレゼントしましょう。
貴男がご自分の力で獲たものを、わたしから差し上げる――というのは僭越でしょうか?
≪イイエ、そんなことはありません。ありがたく頂戴します≫
俺は神妙な顔つきになって、ご主人に頭を下げた。
「あなた、ありがとう。背中を押してくださって、妻として感謝します♪」
――未亡人には、引導を渡してやらないとね。
すでにこの世のものではないご主人にそういわれて、俺たちは声をあげて笑った。
傍らで聞き入っていた加代子さんまで、笑っていた。
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