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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

母さんに、好きな人ができた ~娘・加代子の手記~

2019年06月06日(Thu) 06:53:12

母さんに、好きな人ができた。
父さんがいなくなってからずっと、独りで看護婦していて、
家族の会話も人が少なくなった以上に、めっきり減った。
母はもちろん優しかったし、しっかり者で通っていたから、生活にはなんの不安も感じなかったけれど。
それでも話し声や笑い声がぐっと減ってしまったのは、私なりにかなりこたえていた。
うちはこのまま、先細りになってしまうのかも・・・ふとそんな予感がかすめて、ぞっとしたこともあった。
留守がちになった家のなかは冷え冷えとしていて、たまに顔を合わせても気まずい沈黙が漂うことが、少なくなかった。
そんなある日、母さんは珍しく、ウキウキとした顔をして病院から戻ってきた。
父がいなくなって以来、絶えてみないほどの明るさに、私までもがいままでのことを忘れたように快活になっていた。
その日は母さんは、自分がご機嫌な理由は決して口にしなかったけれど。
私はこの明るさがいつまでも続いてくれると良いなと思っていた。
男の人と逢っている――
なんとなくそう感じるようになったのは、それから数日後のことだった。
その日帰った母さんは、ハミングしながら晩御飯の支度をした。
こんなことも、絶えてなかったことだった。
数日前ご機嫌で家に帰ってきて以来、しばらくトーンダウンしていた母さんの明るさが、また華やぎを取り戻していた。
母さんに好きな人ができた――
私はちょっとだけ、複雑な気分だった。
父さんのことを忘れちゃったのだろうか?という想いもあった。
けれどももうひとつの想いは――口にするのも恥ずかしいけれど――母さんが私以外のひとに注目し始めたことが、娘として複雑な気分だったのだ。
家に二人きりでいたせいもあるかもしれないけれど・・・
それは私がまだまだ子供だ――ということを、自覚してしまったような気分だった。

そんな日々が続いてしばらく経ってから――
とうとう母さんから、決定的なことを聞いてしまった。
口火を切ったのは、母さんのほうだった。
「母さんに恋人ができたといったら、あなたどう思う?」
恋人――私がまだいちども口にしていない言葉を口にしたとき、母さんはちょっぴり照れくさそうにしていて、そんな母さんのことが可愛く思えた。
私は、えー?良いんじゃない?どんなひと?と訊いた。
母さんの恋人というひとの話を聞こうとしたとき、
私自身が同じ女性の目線になっていることに気がついた。
私も母さんと同じくらい、ウキウキとした気分になっていた。
けれども母さんが語り始めた「恋人」のイメージは、ちょっと変わっているなと思った。
たしかに――母さんは父さんのことを愛していたと思うから、ふつうの人に心を移すわけはないとは思っていた。
だから、相手の男のひとが、勤め先の病院のお医者様とか、患者さんとか、趣味のサークルの連れ合いをなくした退職者のおじいさんとか、そういうありきたりな人ではなかったことに、不思議な嬉しさを覚えていた。
吸血鬼だときいても、怖いという気がしなかった。
むしろ、母さんがその男のひとと、どこまで進んでいるの?とか、そんなほうに関心が移ってしまって、たいせつなことを切り出したはずの母さんを閉口させてしまっていた。
母さんがそのひとを家に招ばないのは、そのひとが吸血鬼で、
いちど家にあげてしまうと、あとはいつでも自由に我が家に出入りできるようになってしまって、
そのうち私の血まで狙うようになりかねないと、警戒してのことだった。
かりに母さんのことがどんなに好きでも、人の生き血を求める習性はどうにもならなくて、どうしてもそういうことになってしまう・・・と、母さんは私に説明した。
そのひとを家に招ばないのは、恋人の娘であっても見境なく襲われてしまうということに母親としての危機感を持ってのことだったと知って、私はむしろ嬉しい気がした。
そのひとを私から隠したくて招ばないわけでは、決してなかったからだ。
けれども母さんのなかでは、じょじょに考えが変わっていったようだった。
むしろ、「たいせつなカコちゃん(私のこと)の血だから、吸わせてあげたい」と思うようになったそうだ。
母親が吸血鬼の情婦となり、浮気相手の求めるままに娘の血を吸わせてしまう――
場合によってはそんなふうな、身の毛もよだつシチュエーションだったのかもしれないけれど。
私はむしろ母さんの気持ちを、納得づくで受け入れ始めていた。
だって、母さんは私ひとりの母さんだし、その母さんが自分の血を吸わせている相手に、たいせつなまな娘の血を与えたがっているのは、むしろ自然な気持ちだと感じるようになっていたからだ。

連れてきたその人は、思ったよりも若く、ほっそりとしていてハンサムだった。
あとでそのひとともっと親しくなったときそう言ったら、「ハンサムだといわれたことはいちどもない」と言っていたけれど――
吸血鬼が我が家の敷居をまたぐ――いよいよそのひとが家に来たときは、さすがの私も身構えてしまった。
そんな私の雰囲気を察したのか、母さんもそのひとも無理に近づこうとはしなかった。
意図的に距離を置こうと、隣の部屋からドア越しにあいさつを交わす失礼を、
むしろとうぜんのように受け入れてくれた。
初対面になるそのひととあたしとは、ぎごちない挨拶を交し合った。

ちりん、ちりぃーん・・・
お仏壇にあげられた線香の香りが廊下にまで漏れてきていた。
どうやらそのひとは、母さんとことに及ぶまえに、父さんのお仏壇にお線香をあげているらしかった。
細目に開いたふすまごしに窺うふたりはこちらに背中を見せていて、
身内の人がなき人の写真に向き合うときとまったく同じように、心を込めて額づいている。
良いひとなのだ――と、素直に思えた。
そうでもないわよ、と、あとで母さんはいった。
「要するにね、”これからあなたの奥さんをいただきますよ”っていう、けしからぬご挨拶だったのよ、きっと」
そういって、私が示したあのひとへの敬意に冷や水をあびせながらも、母さんは楽しそうに笑っていた。
お線香をあげたあと、母さんはそのひとに求められるままに首すじをゆだね、思う存分血を吸わせたのだった。
母さんの身に降りかかる吸血シーンを初めて目の当たりにした私は、つい目を離せなくなっていた。
そのひとは母さんの首すじを咬んで生き血を吸い上げ、
母さんがうっとりとしてその場に横たわってしまうと、こんどはスカートをたくし上げて太ももを吸った。
母さんの穿いていた肌色のストッキングを破りながら――
そのひとはもしかすると、母さんのストッキングも愉しんでいたのかもしれない。
脚に咬みつくまえに、まるで脚の輪郭をなぞるようにネチネチと、ストッキングをしわくちゃにしながら舐めまわしていたから。
日頃は厳しくて潔癖で、身なりもきちんとしていた母さんが、そのひとの前では従順で、身に着けた衣装に対するふしだらな仕打ちを唯々諾々と受け容れている――
好きになるということは、受け入れがたいことさえ許してしまうことなのだ――と、母さんの態度をみてそうおもった。
その日ふたりがしたのは別れ間際のキスだけで、そのものずばり・・・は、とうとうなかった。
キスにしても、そのときのキスが初体験だったと、あとで聞かされた。
けれども、お仏壇を前の献血行為は、あきらかにラブ・シーンと呼ぶべきものだと私は直感した。
ふたりとも、父さんのことを辱める意図は、まったくなかったと思う。
けじめを重んじる母さんは母さんなりに、新しい恋人ができたことを父さんに報告したかったのだろう。
もはやあなたの妻ではない――という意思表示をすることで、母さんなりにけじめをつけようとしたのかもしれなかった。
それは少し寂しいことだったけれど、仕方ないのかもしれないと思った。

そのつぎにそのひとが現れたとき、そのひとは父さんの霊を招き寄せた。
なにかのトリックだなどとは、まったく思わなかった。
うっすらと輪郭が透けて見えるその姿は、間違いなく懐かしい姿だった。
家のなかで家族三人がふたたび揃う――そんな奇跡をくれたそのひとに、むしろ感謝したい気持ちだった。
父さんは母さんに恋人ができたことを「おめでとう」とよろこんでいた。
優しい父さんらしいなと思った。
もともと優しくて控えめだった父さんは、母さんが連れてきたそのひとにも穏やかに接した。
そして、そのひとのことを「よろこんで家庭に迎えたい」と告げて、「最愛の妻の貞操を差し上げます」とまで言ったのだ。
三人の合意はすぐにできた。だって、三人とも、同じようなことを考えていたのだから。
母さんは、父さんのことを決して忘れないと約束した。
だからだれとも再婚はしない、このひとともずっと、あなたの未亡人のままお付き合いをすると告げていた。
そして父さんも、母さんが自分の未亡人のままそのひとの恋人になることに同意した。
父さんも寂しくはなく、母さんは恋人を得、そのひとは人妻とのいけないラブ・ロマンスを愉しむ――という三者三様の幸せ。
私ももちろん、いなやはなかった。
母さんが父さんと決別してけじめをつけるのではなくて、ふたりの男性の間でうまく折り合いをつけようとしたこと、
父さんも母さんと同じように、吸血鬼だからといって分け隔てをしようとしなかったこと、
そしてお互いがお互いの立場を思いやり、それぞれの居場所を見出したことが、私をびっくりさせていた。
急転直下――といいたいくらい、話がすぐにまとまったからだ。
それからは注目の・・・いや、そこから先は、娘としては語るべきではないのだろう。
母さんは父さんのお仏壇のまえで、初めてそのひとに抱かれたのだから。
いや、正確には、さすがに父の前での情事にしり込みをした母さんは自室にそのひとを引き入れて結ばれて、
交し合った情熱の残り火にひかれるようにしてお仏壇の前に戻ってきて、ふたりが幸せに結ばれたことを、着崩れした喪服姿からあらわになった素肌を吸われながら報告したのだ。

私も、その日のうちに忘れられない体験をした。
母さんを抱いた直後、そのひとは二人で過ごした居間から出てきて、
母さんが失血で気を失ったすきに私を抱いたのだ。
処女の生き血が好きだというそのひとが、私のことを初手から犯したりはしないだろうと思ったし、事実私が処女を卒業したのは、もっとあとのことだった。
彼に抱きすくめられた私は、自分のなかですぐに決意がまとまったのを自覚した。
猿臂にまかれることを本能的に抗おうとした身体は、いつの間にか自律的にしゃんとしていて、自分でもびっくりするくらいはっきりと、お相手をさせていただきますと告げていた。

ふたりの情事を覗いていた後ろめたさもあって、私は罰ゲームを受け入れるいたずらっ子のような気分で、彼の行為を受け入れた。
やはり、結婚前の娘が、母親の情事をのぞき見するというのは、よくないことだと思っていた。
もっともあのひとに言わせれば、きみは貴重な体験をした、ということになるのだが。
いよいよ吸血されると自覚したら、ちょっとだけ脚がすくんだ。
怖かったので、テレビをつけてもいいかと訊いたら、もちろんかまわないと言ってくれた。
震える手でテレビのスイッチを入れた。
なにを放送していたのか、全く頭に入ってこなかった。
彼はそろそろと私の足許ににじり寄った。
事前に、母が脱がされたストッキングを見せられていたので、彼が私の履いているハイソックスが目当てなのだとすぐにわかった。
制服を汚すのを避けて、私は私服を着ていた。
血浸しになってしまうことを考えたら、もちろん着古した服を着たほうが賢明だったのだろうけれど、
私はそうする気にはならなかった。
たいせつな初体験の記憶は、きちんとした服と一緒にとどめておきたかったから。
咬み破られてしまうと知りながらも、ハイソックスも真新しいのをおろしていた。
へんに節約を考えて、履き古しを脚に通してお相手することで、恥を掻いてしまいそうな気がした。
私の予感は正しかった。
彼は舌なめずりをくり返しながら、ハイソックス越しに舌をふるいつけてきて、
しなやかなナイロン生地の感触を愉しむように、しばらくのあいだ真新しいハイソックスに唾液をすり込むことに熱中したのだから。
私の履いている白のハイソックスを咬み破りながら、そのひとは初めて私の血を吸い上げた。

十代の若い血液が彼を愉しませたことには、多少自信があった。
母さんが情事のあとに覚えていた貧血よりもずっと思い貧血が、その確信を裏づけた。
うっかり吸い過ぎたことを悔いて、あのひとは終始私の背中をさすりながら、親身に介抱してくれた。
初体験を愉しんだばかりの母さんのあと、私まで交えてしまったことを、ちょっとだけ後ろめたく思ったけれど、
やがて起き出してきた母さんは、むしろあのひとと私とのことを祝ってくれた。
このひとの干からびていた血管のなかを、母さんの血とあなたの血とが、仲良く織り交ざってめぐっているのよ――
母さんはそういって、満足そうに目を細めた。
そして、あなたも大きくなったわね、と、優しく笑った。
まるで、初潮を迎えたときみたいに――
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