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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

母さんのコスプレ ~娘・加代子の手記~

2019年06月06日(Thu) 07:00:55

きょうから喪服を脱ごうかな。
母さんが言った。
いいんじゃない、明るい服のほうがひきたつよ。
あたしはこたえた。
喪服を脱ぐってことはね、
父さんの未亡人として生きるのをやめて、
あのひとの恋人として生きるっていうことなのよ。
母さんは言った。
いいんじゃない?
でも母さんは未亡人なんだから、たまには喪服を着たほうがいいんじゃない?
そう、父さんを弔うためよりも――
むしろあのひとのために、着てあげたら。
母さんは、うふっと笑った。
あなたも言うわね、大人をからかうもんじゃないわ・・・と言いながら、
まんざらでもないのがよくわかった。
母娘ふたりであのひとに血を吸われるようになってから、母さんはわかりやすい存在になっていた。
私が大人になったのか。
母さんがわかりやすくなったのか。
それはいまでも、よくわからない。

母さんが、あたしの学校の制服を買ってきた。
自分用に着るのだという。
それはなにより・・・と私はいって、初めて着るのを手伝ってあげた。
姿見のなかの母さんは、まるでいつもの母さんとはちがっていて、
女学生の昔に戻ったみたいにみえた。
勤めに出るときにいつもキリキリと頭の上に巻いてしまう髪の毛を、
お嬢さんみたいに肩に流していたのが、よけいにパンチ力を発揮したのだ。
こんど、おそろいの制服で、ふたりで吸われてみようね、と囁かれて。
それ、面白そう・・・!って、思ってしまった。
一瞬、母さんのことが同級生のように思えてしまった。
そして数日後、
私たちは父さんのお仏壇のまえで、おそろいのスカートのすそを血で浸しながら、
齢の順に生き血を吸い取られていった。
そうされているあいだ、ふたりはあお向けに横たわりながら、
本当の同級生のように、手と手をつなぎあっていた。

母さんは、白のストッキングも、好んで穿いた。
それは、勤務先で脚に通しているのと同じものだった。
堅物の母さんは夏でも厚手のタイツを履いていることが多かったけれど。
あのひとを満足させるために喪服のスカートから覗くストッキングが肌の透けるものになってからは、
勤務先でも脛が透けるストッキングを穿くようになっていた。
そもそも、どういう風の吹き回しだったのだろう?
あのひとと出逢ったあの日にかぎって、母はスカートの下に肌色の透けるストッキングを穿いていたのだ。
タイツだったとしても、目に留めたよ――あのひとはきっと、そういうに違いないけれど。
母さんはいまや、あのひとを悦ばせるためにだけ装う。
白のタイツは全部、あのひとのために咬み破らせてしまっていて、もう冬場までお目にかかることはないだろう。
いまではもっぱら、勤務先に穿いていくのは薄地のストッキング。
勤務中に脚に通しているストッキングを破りたがるあのひとのため、思うままに破らせてしまっている。
けれども白衣はあまり、着たがらない。
手術のときのことを思い出してしまうから。
だからあのひとも、彼女に白衣姿を強要したりはしない。
けれども白のストッキングは好物で、
きみの天職を辱めているわけではない――とか囁きながらも、
ふらちなイタズラをネチネチとつづけ、白く濁ったよだれをぬらぬらとしみ込ませてゆく。
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