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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ピロー・トーク

2019年07月05日(Fri) 04:55:04

俺が劣情をあからさまにしても、いつも従順に応えてくれる昭代さんが、珍しく苦情を口にした。
遅い時間に戻ってきた昭代さんを、勤め帰りのスーツ姿のまま背後から襲って、羽交い絞めにしたときのこと。
夕暮れどきをすぎると、喉がからからになってくる。
そうすると俺は、学校帰りの加代子さんを真っ先に襲い、制服姿のまま押し倒して。
白や淡い空色のブラウスのえり首を血浸しにしながら、十代の処女の生き血に酔いしれる。
さんざん吸血を遂げて、彼女がウットリしてしまった時分に、こんどは昭代さんが帰宅してくる。
もちろん同じ経緯で、征服だ。
母娘で扱いが違うのはそれからあとのことで、昭代さんとはとうぜんのように、熱烈な情交が始まる。
苦情をいわれたのは、そのときのことだった。

「あなたはロリコンなの?」

唐突な言葉に俺は面食らい、思わず咬んでいた首すじから牙を引き抜くと、ちょっとだけ身を起こして昭代さんの顔を見た。
昭代さんも俺のことを、目線もそらさず見返してくる。
「どうして・・・?」
おろおろと俺が問うと、昭代さんはいった。
「だって、ひとの娘のことをあんなふうにしつっこく吸血するなんて・・・」
どうやら昭代さんは、加代子さんの女学生姿に夢中になってしゃぶりつく俺のことを、
ひっそりと帰宅した後しばらくのあいだ、見つめつづけていたらしい。
俺の好みに合わせて履いてくれた白のハイソックスに、両脚ともバラ色の飛沫を撥ねかしながら、
たっぷりと舌触りを愉しみ、ずり降ろしてゆくところを、
彼女は息をつめてのぞき見していたに違いない。

俺は応えた。「かも知れないな」
「あっさり白状するのね」
昭代さんは珍しく、チラと嫌悪感を表に出してこたえた。
けれども俺にはまだ先をつづける意思がある。やり取りの主導権を握りなおすために。
「けど、俺がロリコンなだけのやつだと、思うのかい?」
え・・・?
怪訝そうな顔をした昭代さんのふくらはぎに、俺はしつっこく唇を這わせた。
薄手のストッキングは、俺の好みに合わせて装ったもの。
サラサラとした触感は、退勤のとき彼女が新しいものの封を切ってわざわざ穿き替えたことを告げている。
俺は昭代さんに顔を見られまいと、ひたすら彼女の脚に熱中しながら、つぶやくようにいった。
――マザコンなのさ。

え・・・?
彼女はまたも、怪訝そうな囁きを洩らす。
けれども俺の言い草を肯定するでもなく否定するでもなく、
それでいて、足許を装う礼装に無作法なあしらいをくり返す俺のために、
ふるいつけた卑猥な唇の下に、無防備な下肢を曝しつづけていてくれた。

ひとしきり、俺が愉しむと。
「マザコン・・・だったんだ」
彼女はもういちど、つぶやいた。
その先を聞きたがっているようだった。
俺はいった。

俺がまだ真人間で、吸血鬼に日常的に血を吸わせていたころ。
家族全員が彼の支配を受け入れて、代わる代わる吸血に応じていて。
真っ先に襲われて犯されたお袋は、やがて親父のまえでもキャッキャとはしゃぎながら誘惑に応じていくようになって。
それを親父も俺も、別々のふすまのすき間から、熱っぽい目で覗きつづけていた。

俺があんたを襲うとき。
その時のことをよく、思い出すんだ。
あいつはお袋に、いまの俺がしているのと同じことをしていたんだ。
俺があんたの素肌に唇をふるいつけるとき。
ちょっぴり抗いながらも組み敷かれていくあんたを、ギュッと抱き返しながら胸や腰つきの肉づきを全身で受け止めていくとき。
俺はあんたのご主人の視線を、まるで俺がかつてお袋に注いだ視線と同じくらい、近しく感じるのだ。
あのときあいつは、こんなふうにお袋の血を愉しんでいたんだ。お袋の身体にのめり込んでいたんだ。
美味かっただろうな。愉しかっただろうな。って、思うんだ。
そしてあのときお袋を黙って差し出した親父の気持ちも、ありありとわかるようになるんだ。
親父は親友に、一番たいせつなものを与えることで、友情に報いていたのだと。
お袋はお袋で、自分がうっかり声をあげて快感を白状してしまうことを、親父が許すだけではなく愉しんでしまっていることを、
咎めながらも許し、許しながら悦んでしまっていたのだと。
だから俺は、だれも責めない。
そしてあんたのご主人も、あんたのことを責めていないし、俺のことも憎んでいない。
遠い昔と役割を入れ替わることで、俺はあんたのご主人や娘さんと、気分を同化させながら、こんな悪さをつづけているんだ。

「いったい何をしゃべっているの?」
昭代さんは呟いた。
「いいわよ、もっと吸って・・・あたし、娘の若さにちょっぴり、嫉妬していたのかも」
後半の白状は、声が決まり悪げに細くなっていた。
「嫉妬なんか、しないで良いのに」
俺は昭代さんの股間をまさぐりながら、囁いた。
彼女の秘所は、まだショーツとパンストにぴったりとガードされていた。
俺がパンストのうえから太ももを撫でまわし、それからブチブチと音を立てて引き裂くと、
今度は昭代さんが、自分のショーツを引き裂いた。
熱っぽい吶喊が、長時間つづいた――

昭代さんのご主人の霊魂が、まぐわう俺たちに熱っぽい視線を送りつづけているのを、背中にありありと感じる。
すまないね、ご主人。あんたの奥さんをもう少し、愉しませてもらうからね。
ふたりで悦びあっているところを視て、あんたも歓んでくれるのが、いまの俺には幸せだし、あんたの気持ちもよくわかっているのだから――


あとがき
ベッドのうえでの男女のやり取りのことを、”ピロー・トーク”というそうです。
そして、そのなかのいくばくかは、えてして相手への怨み言になるようです。
そうしたやり取りを交し合うのはきっと、仲が良く心が通い合っている証拠です。
柏木ワールドの世界の吸血鬼たちは、自分が襲って欲望を遂げる相手のことをただの獲物として扱うのではなく、
家族として恋人として受け止めているようです。
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