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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

鉦の音

2019年07月21日(Sun) 06:10:51

ちりぃーん・・・

澄んだ鉦の音がしんとしたわたしの居所に鳴り響く。
この音を耳にするとわれに返り、気持ちが落ち着いて、癒されたような気分になる。
妻はそれと知りながら、きょうも鉦を鳴らしてくれる。
傍らにいるあの男もまた、恭しくわたしの写真の前に額づいて、彼女に倣い

ちりぃーん・・・

黙々と鉦を鳴らす。
どうやらこの男がわたしにみせる敬意は、ほんものらしい。
冥界からこの世を眺めると、そんなことまでわかってしまう。

そういえば。
わたしの生前から妻と交際していた男たちも、
ここを訪れるときには神妙に鉦を鳴らして――あとはなすべきことをし遂げてゆく。

そしてこの男も・・・あろうことかわたしの写真のまえで、妻を組み敷いていこうとする。
「あ・・・いけません。さすがにここでは」
妻はいちおうの抵抗を試みるが、
首すじに這わされた唇に隠れた牙に皮膚を破られてしまうと、
喪服のブラウスの襟首の奥に、血潮のしずくを忍び込ませ、低い呻きを洩らした。
しつような吸血に熟れた生き血で応えつづけて・・・
悩ましげにまつ毛を震わせながら、血を啜り取られてゆく。

きょうは月一度の命日。
喪服を脱いだ妻は日頃は色鮮やかなワンピースで装っているが、
この日ばかりはわたしのために、黒一色の喪服を着込む。
そしてわたしの写真のまえで、吸血鬼の餌食に堕ちてゆく――
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コメント

死してなお
妻を寝取られるというのは
どのようなお気持ちなのでしょうか

妻の側の気持ちはわたくしには
痛いほどわかりますけれど・・・

待ってはいけない人を
待ってしまう

月に一度の命日だから
本当に待っているのは
あなたなのにって
心の底で儚い言い訳を
繰り返しつつ
by 加納 祥子
URL
2019-08-12 月 10:57:38
編集
祥子さま
久しぶりのご来臨、嬉しくお迎えいたします☆

敬称まで、つい「さま」になってしまいました。
(^^ゞ

「寝取られる」という行為も、いちようではありません。
たんなる裏切り行為の場合もあれば、このお話のように夫婦で不倫を愉しんでいるケースもあります。
同じ夫であっても、シチュの違いで受け入れられる関係・許容できない関係があると思います。
このお話の場合では、「同じ女性を愛するようになった男性に、夫が妻をプレゼントする」というような、妻に対してもも間男に対しても、夫の愛情が介在していると思います。


今回の一連のお話は、5月ころから始まってまだ完結しておりません。
このお話のどのあたりかに描いたのですが、
このご夫婦は幽明境を異にしてからも愛し合っており、
むしろそういう関係になってからの方が愛情をより露わに表しているようです。

奥方のほうは、「あなたを忘れていない人がこの世に一人はいたほうが良いから、ずっとあなたの妻でいてあげる」といい、
ご主人のほうは、「ぼくの生前にきみが愉しんだ浮気を含めて、きみのすべてを許している」といっています。

奥方の立場はすでに未亡人ですから、すでに自由の身であるはずなのですが、
それでもこのお二人のあいだには、切っても切れないご縁がつづいているようです。
いまの奥方の婚外恋愛すら、ご夫婦で愉しまれていらっしゃるようですね。
by 柏木
URL
2019-08-14 水 06:41:50
編集

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