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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

灯りの落ちた家

2006年07月23日(Sun) 23:55:58

月に何軒となく、増えてゆく・・・
夜も灯りの点らない家。
住人たちが血を吸われ、生命の灯をとうに消した家。
それでも以前とおなじように。
家の主たちはその家に住みつづけている。

仲良しだったヒデキの家が。
週末から灯りを落としている。
さいごに会ったのは、金曜日。
下校の道でさよならをいうときに。
ここ数日具合を悪くしたのか、ちょっと蒼くなった顔色をしていて。
返してきた寂しそうな笑みに、薄ら寒いものを覚えたけれど。
昨日の夜家族で通りかかったとき。
いつもこうこうと室内を照らしている灯りが、
蛍火のような蒼白さを帯びて揺らいでいた。
「あっ」
すべてを察して、ボクは涙声になっていた。

学校帰りの途中だった。
「ごめんよ」
ヒデキはさいごに会ったときよりも、いっそう頬を蒼くしていた。
あとの言葉を口にするまいとして、
さいごの理性が口許をかたくなに引き締めていたけれど。
なにを言いたいのか、ボクにはすぐにわかっていた。
血をくれないか。喉、渇いちゃったんだ。
ボクはすすんで、ヒデキのあとについていった。
「姉さんも、欲しがっているんだ。いいよね?」
笑んでいるつもりなのか、
蒼い唇から滲んだ前歯の白さに、
ただ惹きつけられたように、魅入ってしまっていた。

「怪我をしたのね?」
母さんは、そういって。
うなじの傷をさりげなく、包帯でくるんでくれた。
包帯の下、じくじくとした疼きを我慢していると。
父さんは僕の肩を優しく抱いて。
「ヒデキとは、生まれたすぐからの仲良しだったんだよね」
そうして、母さんのほうを振り返って。
「家族ぐるみの付き合いだったけど。マサヨさんも、ケイタのやつも。サユリちゃんも。
 ・・・みんなあちら側に行っちまったようだね」
ふだんと変わらない、さりげない口調に。
母さんも、笑みを含んで応えている。

灯りの消えたヒデキの家の玄関に。
影が三つ、寄り添うように伸びている。
今晩は。おかげんいかが?お見舞いに来たんですよ。
お薬に、暖かい生き血はどうですか?
ギイ・・・
開いた扉の彼方は、いちめんの闇―――。
けれどもボクも、父さんも。母さんまでも。
怖がることなく、入ってゆく。
そう。ひとりでに、闇に吸い込まれてゆくように。
お邪魔しますね。
母さんがいつものように、ストッキングのつま先を板の間に滑らせる。
足首をつかまれて。
ふくらはぎを吸われて。
いいんですよね?あなた・・・
ヒデキのお父さんに組み伏せられるまえ。
父さんに向けた母さんの笑みは、ちょっぴり悪戯っぽかった。

父さんは、ヒデキの母さんと。闇の彼方―――。
母さんとはべつべつの方角へと消えていた。
子供は、子供どうし。
仲良くしようね。
薄闇ごしに浮かび上がるサユリ姉さんの白いセーラー服が、
いつもよりずっと、眩しく映った。
ひとりでふたりに与えていたら。
きっと、うちでいちばん早く灯りを落とすのはボクの部屋だろうか。
冷たく濡れた、サユリ姉さんの唇が。
うなじに、柔らかく貼りついて。
ちゅ、ちゅ・・・っ。
玉子の黄身を吸い出すようにして。
ボクの血を、吸い取ってゆく。
血が抜けてゆく感触がひどくくすぐったくって。
ボクはクスクス笑いながら、
太ももに吸いついてくるヒデキの唇に、
やっぱりドキドキしながら脚を伸べてやってしまっている。

・・・ア・・・
母さんの消えた方角だった。
喉に詰まったような。ひどくせつじつな呻き・・・
見慣れた濃紺のスカートがまくれあがるのが闇に透けて見えたのは。
錯覚・・・だろうか?
仲良しの姉弟はにんまりと顔を見合わせて。
してるね。
うん・・・
申し合わせたように、愉しげに笑みあって。
ねぇ。わかる?お母さん・・・うちのパパのお嫁さんになっているんだよ。
賢しげに尖らせた口許が、闇夜に濡れて輝いていた。
まね・・・してみない?うちの姉さんで。
ヒデキはそういって、ボクのわき腹を軽く突っついている。
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ちょっとご無沙汰でした。

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