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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

黒の日。

2019年09月08日(Sun) 06:05:45

黒の日。
それは表向き円満な家庭に、妖しい蔭のさす日のこと。
日頃仲のよろしくない嫁と姑は、意味深な含み笑いを交し合って、席を起つ。
父親と息子は、そんな妻たちをなにも言わずに見送って、ちょっとだけ目を合わせ、そして目線をそらす。

しばらくして現れた女ふたりの装いは、申し合わせたような黒一色ののブラックフォーマル。
「アラ、派手じゃない?」
姑は嫁の足許をひと目みて、嫁の若さをちょっとだけ咎めた。
嫁は漆黒の重たいスカートの下に、網タイツを穿いていた。
「アラ、お葬式じゃないんだし、良いじゃないですか?」
口許に滲ませた白い歯が淫蕩に輝くのを、若い夫は見逃さなかった。
「困った方ネ」
と言いながら、姑もそれ以上の追及はしなかった。
いつにないあきらめの良さは、きょうが「黒の日」だからに違いない――と、夫ふたりは思った。
「お義母さまはいつも、地味めなんですね」
姑の足許は、無地の黒ストッキングに淑やかに染められている。
薄地のストッキング蒼白く透けたふくらはぎがなまめかしかったが、だれもがそのことは口にしなかった。
「こういうほうが・・・そそるのよ」
控えめに口にされたさいごのひと言が、皆の鼓膜にしみ込んだ。
ひっそりとした語調が却って、言葉の裏側に潜む淫らなものを惹きたてていた。

「では、まいりましょうか」
嫁に告げる姑に、
「お願いします」
嫁はいつになくしおらしく、頭を垂れる。
いそいそと玄関口でパンプスをつま先に通す妻たちを、男ふたりはひっそりと見送った。

妻たちが赴こうとしているのは、「法事」と称された、吸血鬼たちの宴。
女たちの身体をめぐる血潮は美酒のように扱われ、
淑やかに秘めつづけていた貞操を娼婦のようにあしらわれる。
そんなまがまがしい行事が、いつの間にか日常の習慣と化してしまったこの街で。
妻たちを責めるものも、夫たちを嘲るものも、絶えて姿をひそめている。


あとがき
嫁と姑が申し合わせたように、黒一色の装いで出かけてゆく。
なんの変哲もない法事の朝の風景の裏に、淫らな想像を重ねてみました。
9月6日は「黒の日」だそうです。
知人に言われて知ったのがつい昨日のこと。
前作をあっぷしたらむらむらと構想が湧いてきて、思わず走り書きしてしまいました。
(^^ゞ
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嫁も姑も、堕ちてゆく。

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