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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

法事帰りのご婦人たち

2019年09月22日(Sun) 15:41:46

法事が良いのだ、と、彼はいった。
お弔いだと、悲しみの度合いが大きすぎて、十分楽しむことができないから と。
エッチなビデオなどで、通夜の席で乱れる未亡人なんてやっているが、多くの場合あれはうそだ ともうそぶいた。
そういいながら彼は、法事帰りのご婦人たちの、黒のストッキングに包まれた足許を盗みるのも忘れない。
そのうちのひとりが、足許に注がれる視線を見とがめて、こちらに歩み寄ってきた。
すっかり白くなった髪をきちんとセットした、老婦人。
躊躇いがちに書けてきた言葉は、
「あの・・・喉渇いていらっしゃるのですか?」
少々ならお相手しますよ・・・という老婦人の善意を、彼は鄭重に断った。
「それよりも貴女、少しお疲れのようですな。ご自宅に戻られたらすぐに、砂糖水を飲まれると良い」
お気をつけて・・・と慇懃に頭を垂れる彼に、
老婦人もまた善意を漂わせた気品ある目鼻立ちに、いっそうおだやかな色をたたえて、ごきげにょう、と声を送った。

しばらくして通りかかったのは、40代くらいの落ち着いたマダム。
「あの…先日は見逃していただいて助かりました」
どうやら獲物を狩りに出かけた公園で出くわした彼女を、体調が悪そうだからといって襲わずに帰宅を促してやったらしい。
どうにも律儀なやつだ。
マダムはその折の好意を恩義に感じていて、わざわざ遠い縁戚の法事に出向いてきたのだと告げた。
「きょうは身体の調子がよろしいので、少しならお相手できますわよ」
マダムの善意を、彼は断らなかった。
「きょうは”本命”がいるから、ご主人に必要以上の迷惑はかけませんよ」
と言い添えた。
ご主人同伴だろうが何だろうが、ふだんなら見境なく、襲ったご婦人の貞操を奪って悦に入るやつなのに。
彼女は同伴のご主人のところに戻って二言三言囁くと、
ご主人は遠目にこちらに軽く会釈を送ってきて、
それからこちらに背中を向けたベンチに腰かけて、煙草を取り出しはじめた。

「すまないですね・・・じゃあちょっとだけ」
喪服のスカートのすそを心持ちたくし上げたマダムの足許に、彼は唇を近づける。
薄いナイロン生地ごしに清楚に浮いた白い脛に、脂ぎった唇が、ぬるりと這わされた。

ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
吸血されるあいだじゅう、マダムは目を瞑っていた。
放された唇のあとは、鮮やかな伝線がひとすじ、スカートの奥にまで這い込んでいる。
「主人は侮辱だと憤慨するでしょうけど・・・これくらいのことはおおめにみてもらいますからね」
マダムはイタズラっぽく笑うと、さっきからじりじりしているご主人の後ろ姿へとパンプスの脚を駆け寄らせていく。
立ち去る夫婦連れのご主人のほうが、破れたストッキングを穿いた同伴者の足許を始終気にかけ続けているのを遠目に見送りながら。
彼は口許を拭うとうそぶいた。
「どうやら、本命がご来臨のようだ」
微かな足音だけで、それが聞き分けられるのだ。
わたしにはとうてい、その足音が妻のものだと聞き分けることなどできない・・・

曲がり角から現れた喪服姿は、まさしくわたしの妻――
わたしとはあえて視線を合わせることなく、彼に向って礼儀正しくお辞儀をし、彼もまたそれに劣らぬほど恭しく会釈を返してゆく。
そろそろわたしの立ち去るべきときがきた。
そう思って腰を浮かそうとすると彼は、
「どこへ行くつもりかね」
と訊いた。
「きょうの法事には、見届け役が必要なのだと、察しをつけてもらいたかったな」
彼はイタズラっぽく、にんまりと笑んだ。
そして、あくまでもわたしとは目を合わせようとしない妻の腕をとって、お寺の本堂へと足を向ける。
どうやらきょうもまた、わたしは目の前で犯される妻の、貞操の喪を弔うことになりそうだ。
まだ咬み破られていない妻の黒ストッキングが、いっそうなまめかしく、わたしの網膜を彩った。
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