わい雑な明るさに満ち溢れたわが家のなかに、リエさんの姿があった。
リエさんはぼくの幼なじみで、近々結婚することになっている。
ぼくの家には子供のころから遊びに来ているので、当然、吸血鬼の小父さんたちとも顔なじみだ。
彼らの正体を知ったのは年頃になってからだったけれど、
ぼくの家によく遊びに来る理由が、母さんをまわしに来ていることだと聞かされた後でも、
もともと昔から知っているどうしだったので、彼女が彼らを避けたり嫌ったりすることはなかった。
(もちろん結婚前の娘としてある程度の警戒はしていたけれど)
「エ?吸血鬼だったんですか?びっくり~」
そんなていどのかんじだった。
ぼくたちの街はとっくの昔に吸血鬼と人間とが共存して暮らすようになっていたし、
リエさんのお父さんももの分かりのよい人だったから、
彼女のお母さんもまだだいぶ若いうちに彼らにモノにされてしまっていて、
うちに出入りしている5人衆の吸血鬼に、まわされちゃっていた。
「ユウくんのお母さんと仲良しの小父さんたちが、うちの母とも仲良くなってくれて、嬉しい♪」
彼女の感想は、そのていどの能天気なものだった。
天真爛漫な彼女の性格は小父さんたちにも気に入られていて、ぼくの友だちの中でも以前から別格扱いだった。
まして、恋人となり結婚相手となる過程では、しばしばたちの良くないアドバイスをくれたし、それが善意の応援のあらわれだということも、ぼくはよく承知していた。
だから、彼女を招いてのわが家に、彼らが彼女の顔を見たさに集まって、わい雑な明るさをかもし出すのも、もっともというものだった。
「オイ、夕太。いまのうちにしっかり、リエさんに穴をあけとけよ。いずれ、だれの嫁だかわからないくらいに人気者になっちゃうんだからな」
そんな露骨な冗談にも、リエさんは声をたてて笑い興じるのだった。
やがてぼくたちは結婚し、処女と童貞で新婚初夜を迎えた。
一週間の新婚旅行から帰ると、彼らへの”手土産”は、「新妻の貞操」――。
ほろ苦い現実を受けいれるため、ぼくは事情をリエさんに話して聞かせた。
「そのつもりでいたからだいじょうぶ」
とウィンクで返す彼女に、ちょっぴり想いはフクザツだったけれど。
それでも、あの5人に吸血されまわされてしまうという運命を、彼女がごくにこやかに受け止めてくれたことに、ぼくは大いなる安堵と満足とを感じていた。
「リエさんを真っ先に抱かせてくれ」
そう囁いてきたのは、一座の中でも比較的年配の、顔色の悪い男だった。
サキオと呼ばれるその小父さんは、母さんといちばん親しいようすだったが、
あるときひっそりと言われたことがある。
「お前の本当の父親は、わたしだ」と――。
彼は吸血鬼のなかでは半吸血鬼と呼ばれる存在で、もとはこの街のふつうの住人だった のが、街が受け入れた吸血鬼に血を吸い取られて彼らの仲間になった人物。
輪姦マニアの彼らのなかでは唯一の妻帯者で、サキオさんが初めて輪姦を経験したのは、ほかならぬ自分の奥さんだったという。
つまり、半吸血鬼となったお祝いの宴に、自分の奥さんを差し出したというわけだ。
彼はぼくのことを初めて咬んだ吸血鬼だったけれど。
ぼくは彼の言を、素直に信じた。
彼こそが、ぼくのほんとうのお父さん。
だから、自分の嫁を真っ先に捧げることが、親孝行なのだと。
彼にしてみれば。
自分の妻をまわした男たちに、息子の嫁まで獲物として与えることになるはず。
そこには独特の、マゾヒスティックな歓びがあるのだろう
リエちゃんが処女のうちから、じつはたっぷりと吸い取らせていただいていたのさ。
きみのお嫁さんは、とっくの昔からわしらの共有財産というわけだ。
「お母さんからは、抱かれてらっしゃい、すごいわよって言われてきました」
直前までそんなことを言っていたリエさんだったけれど。
いよいよコトに及ぶ・・・というだんになると、にわかに恥ずかしがって、
夫婦の寝室のふすまを開けたままサキオさんにのしかかられると、
「夕太、視ちゃダメ~!」
と、両手で顔を覆って絶叫していた。
もちろんそんなことが許されるはずもなく、
記念すべき新妻の貞操喪失シーンはみんなの記憶に残るよう、ふすまを開け放ったままの状態で、
夫であるぼくを含めた5人の男たちにも共有された。
次から次へと、順々にソファから起ちあがる男たち。
だれもが全裸で、あそこをビンビンに振り立てて、リエさんに挑みかかっていった。
さいしょのうちこそぼくの前であるのを気にして、なんとか貞操を守ろうと腕を突っ張ったりして抵抗していたリエさんも、
二人め以降になるともう、ほとんど無抵抗に受け容れてゆく。
ぼくはふと思った。そして、サキオさんに囁いた。
「リエさん、吸血されるの初めてじゃないよね?」
「わかるかね?」
サキオさんは、にやっと笑った。
実はまだ彼女が女子高生のうちから、制服姿に目のくらんだ彼らは自分たちの邸のなかに彼女を引きずり込んで、処女の生き血をたんのうしていたという。
「えっ、じゃあもうとっくに、寝取られていたの??」
「でもちゃんと、新婚初夜には処女だっただろう?」
「それはそうだけど」
彼らはリエさんがぼくの未来の花嫁なことを尊重してくれていて、犯すことはなかったけれど。
やっぱり処女の生き血には目のない、ただの吸血鬼だったのだ。
リエさんは制服姿のまましばしば彼らの住処に連れ込まれて、素肌を吸われ舐められながら、きゃあきゃあはしゃぎながら、生き血を吸い取られていったという。
不思議に、怒りは沸いてこなかった。
むしろ、リエさんが処女の生き血をたっぷりと彼らに愉しませることで、
わが家の嫁としての務めを果たそうとしてくれたことに対する感謝の気持ちがわいてきた。
「さあ、婿さんも加わるぞ~」
傍らでサキオさんが声をあげる。
「エエ~ッ!?」
いちばんだれよりも大声をあげたのは、ほかでもないリエさんだった。
みんなの前での夫婦エッチは想定外。
リエさんはのしかかってゆくぼくに目いっぱい抵抗して、すぐにねじ伏せられて、征服された。
周りじゅうの拍手などもう耳にも入らずに、ぼくは嫉妬心のかきたてるいびつでエッチな感情の虜になって、なん度もなん度も彼女を愛し抜いてしまっていた。
あとがき
多分ここに出てくる夕太くんは、17日にあっぷした「貞淑だったはずのお隣のご夫婦も・・・」で生まれた息子さんだと思います。
(^^)
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