FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

分身の術。

2019年09月26日(Thu) 07:02:03

「いちどに大量の血液が必要になった。
 大勢でいくからそのつもりで」
吸血鬼から届いた連絡は、簡潔で残酷だった。
分身の術に心得のある”彼”は、いちどに複数の人間を襲うことができるのだ。
ふだんは顔色が悪くうっそりとした表情の”彼”は、いちど別れると顔を思い出せなくなるほど特徴のない顔だちの持ち主だった。

もともとわたしの取引先として家族に接近した”彼”は、さいしょに息子を襲い、
仲間に引き入れた息子の手引きで自宅に入り込むと、つづいて妻を襲った。
既婚の婦人を相手にするときには必ず、性交渉も遂げてゆくという”彼”の欲望に屈して、
妻は結婚して十数年守りつづけた貞操をむしり取られた。
いちど犯されてしまうともう、あとは夢中でしがみついたまま、
なん度も気前よく、許しつづけてしまっていた。
息子はそれを傍らで、失血した身を横たえながら、陶然と見入っていたという。
ふたりが男女の関係を結ぶのに、そう時間はかからなかった。

つぎに襲われたのが娘だった。
兄に連れ出された少女は制服姿のまま、”彼”の牙を享けた。
幸か不幸か、処女の生き血の貴重さを知る”彼”のおかげで、まだ純潔を保っているが。
それからいくばくもなく、若すぎる年頃で結婚相手の定まったいま、
未来の花婿の同意付きで、結婚前の身体を奪われることになっている。

さいごに吸われたのが、わたしだった。
もうどうなっても良い・・・と観念したわたしに、”彼”は終始紳士的に接した。
一夜明けるころには、妻は息子、娘が堕ちたのも無理はない・・・と思えるようになった。
家族はすぐに、平穏な日常を取り戻していた。

息子、妻、娘、わたしと、1人1人別々に吸われたものが。
きょうは同時に襲われるという。
常識的には、忌まわしい刻に違いないはずなのに。
ドキドキしてしまうのは、なぜだろう?
息子も、娘も、妻さえも。
同じ思いを抱いているらしい。
わざとらしい日常のやり取りを努めて重ねたけれど、そのうちだれもが黙りこくってしまって、
仲の良い家族は、約束の時間の約30分前を、ほとんど無言で過ごしていた。

インターホンが鳴った。
息子が起ちあがるとドアを開けて、さいしょに”彼”を家庭に引き込んだ時のように、”彼ら”をリビングへと引き入れた。
”彼ら”は無言で、めいめいに相手を選んで、距離を詰めてくる。
「きゃあっ」
さいしょに声をあげたのが、娘だった。
ブレザースタイルの洗練された制服姿を抱きすくめられて、真っ白なハイソックスの脚をすくめながら、
白ブラウスの襟首を早くも赤く染めている。
「ひいっ」
すぐ傍らで、妻が声をあげた。
そしてほとんど無抵抗のまま、じゅうたんの上にまろび臥した。
彼女が娼婦と化すのは、時間の問題だと思った。

気がつくと。
息子もわたしも、あお向けにされていた。
だれもが吸血鬼にのしかかられて、首すじを咬まれている気配が”彼ら”の背中越しにそれとわかった。
息子は、半ズボンから伸びた紺のハイソックスの脚を左右に拡げて、
娘も、白のハイソックスの脚をばたつかせて、
妻さえも、黒のストッキングに蒼白く滲ませた脛を、立膝にして。
めいめいに、しつような吸血に応じてしまっている。
やがてめいめいがめいめいに身体をひっくり返されて。
ストッキングやハイソックスの足許を、いたぶり尽くされてゆく。

「視たかったんだろう?家族が同時に吸われるところ」
わたしの上におおいかぶさっている”彼”が、耳元に囁いた。
思わず強く肯くわたしを、ぐいっと抱きすくめて。
鋭い二本の牙が首のつけ根を冒し、歪んだ劣情に淀んだ血潮を、ぐいいっと吸い上げる。

無上の快楽に目が眩んだわたしは、妻子を汚した男を、強く抱き返してしまっていた。


あとがき
個々に襲われる。
同時に襲われる。
家族で献血することを検討されているご主人。
貴男はどちら派でしょうか?
前の記事
妻が、女らしくなった理由(わけ)。
次の記事
夫の降伏(幸福)

コメント

最後の問いかけに、ハッとさせられました。
流石、柏木さんです。読み手の心を知っているかのよう。
自分なら、どっちかなー^^
by ゆい
URL
2019-09-27 金 01:50:54
編集
ゆいさん
貴女こそ。
いつも心に触れるコメントを、ありがとう☆
by 柏木
URL
2019-09-28 土 07:29:02
編集

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3851-f627355b