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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

犯すもの 犯されるもの

2019年10月05日(Sat) 21:34:05

6畳間の薄暗がりのなか。
切迫した声にならない声、うめきにならないうめきが立ち込めていた。
それらがいっしょくたになって、激しい息遣いのままセイセイという吐息ばかりが耳についた。

6畳間に7人は狭すぎる。そう思った。
わたしは長女を、相棒はその母親を畳の上に抑えつけていた。
腕づくで肩を抑えつけ、首すじにかじりつくようにして、まだ生え切らない牙でガブリと食いついていた。
じゅるじゅると汚い音を立てて啜りあげた血は、うどんみりとした温もりを帯びていて、持ち主の熱情を伝えてきた。
十代の少女の健康で清冽な血潮が、いまわたしの干からびた血管を廻りはじめている。
傍らでは相棒が、わたしと同じ経緯で(何しろやり方は彼が教えたものだから)、その母親のうなじを抉っていた。
ゴクゴクと大げさな音をたてて貪っているのは、「お前も遠慮なく飲(や)るが良い」と伝えたくて、わざと聞こえよがしにしているのだろう。
そんなことさえわかるほど、彼とわたしとは通じ合っていた。

娘の父親で母親の夫である男は、押し入ってきた招かれざる来客に不意を突かれて、真っ先に首すじを抉られていた。
相棒の仲間2人がかりだったから、かなうはずがなかった。
身じろぎひとつできないほどの失血に侵されながらも、まだまだとばかりに、緩慢に血を吸い取られつづけている。
この薄暗い6畳間で息を弾ませ合っているのは、
妻と彼女を犯しているわたしの相棒、
娘と彼女を愉しんでいるわたし自身、
それに夫と彼を襲う二人組。その7人だった。

彼が自分の負傷以上に、妻や娘の運命を気にしていることは間違いなかったし、
わたしも道場を覚えていた。
つい最近、彼の立場を体験したばかりだったから。
少し過激すぎるのでは・・・?
言いかけたわたしを察するように、相棒はいった。
「じきに慣れるって」
たしかに・・・現に慣れ切ってしまっている自分にしょうしょう赤面しながら、わたしはもう一口、少女の血潮を吸い上げていた。

「血を摂れれば文句はない、死なせはしないから」
だんなを脅しつけている仲間が、こちらにも聞こえる声でそう告げた。
襲われている2人の女にも聞こえる声だった。
「代わるぞ」
相棒がいった。
「OK」
わたしもこたえた。
2人は同時に犠牲者の上から起きあがり、獲物を取り替えてのしかかった。
娘の絶望したようなうめきが、哀切に響いた。
「奥さん失礼、少しの辛抱です」
娘とは初対面だったが、妻のほうとは面識があった。
だって、襲った家は勤め先の同僚の家庭だったから。
奥さんはわたしの正体に気づくと、アッと声をあげた。
抗おうとした腕は重く、彼女の意思を反映しなかった。
着乱れたロングスカートを太ももまでせり上げて、むき出しの太ももを重ね合わせる。
もはや、血よりもそちらのほうが、目当てになりつつあった。
相棒も、同じことを考えているらしい。
娘の歯ぎしりが、悔し気に響いた。
逆立つほどに勃った一物が、奥さんの太ももをすべった。
ぬるりとした粘液が、奥さんの素肌に這っているのを感じた。
いちど男の一物を受け容れてしまった局部は濡れていて――奥さんの名誉のためにいえば、それは好色だからではない。意思に反して冒されるとき、不慮の負傷から守るための本能に過ぎない――猛り立ったわたしの一物も、すんなりと収まった。
突き入れたものが秘所の火照りに包まれるのを感じながら、わたしはぎごちなく妻以外の女との行為に入り込んだ。
擦れ合う太ももの間に、先着した相棒の粘液を感じた。
この粘液が一週間前、妻の秘所を犯した。
いまはわたしも、妻を犯した男と同じ愉悦を、愉しみ合ってしまっている――
サディスティックな振る舞いに、マゾヒスティックな歓びが重なり合って、わたしは激しく射精した。



いつもの家族のだんらんを踏みにじられた瞬間の記憶は、塗り替えられてしまったようにあいまいになっている。
そのときわたしは真っ先に襲われて、二人の吸血鬼に抑えつけられて、左右の首すじを咬まれていた。
ジュジュッとほとび出る血潮がシャツを生温かく濡らすのを、なんとなく憶えている。
その場に昏倒したわたしに、ほかの二人もズボンのうえから脚に食いついてきた。
じゅうたんの上で磔にされたようになって、わたしは体内をめぐる血液の大半を、この瞬間に摂取された。

下の娘は、お目当てにしていたやつがいたらしい。
いち早くリビングから連れ出されて、勉強部屋にあがっていく足音だけを残して娘の姿は消えた。
妻には年配の吸血鬼が、長女にはわたしと同じ年恰好のやつが、同時に首すじめがけて襲いかかった。
飢えた吸血鬼を前に、わたしたちは狩られる獲物に過ぎなかった。
灯りは消され、廊下から漏れる照明だけの薄暗さの中で、
わたしも、妻も、長女も、等しくねじ伏せられて、
三つの身体からは生き血を吸い上げられる音が、チュウチュウとあがった。

彼らは、獲物を取り替え合った。
妻を咬んだやつは長女のうえにまたがり、長女のうえにいたやつは妻を襲った。
わたしに取り付いて血を啜り取ったやつらは、やがて美味しいほうの獲物の分け前を主張しはじめて、
しまいには乱交の場のような息苦しいものになった。

「あんただったのか」
わたしはあきれた。
さいしょに長女を咬んだ、わたしと同じ年恰好のやつは、勤め先の同僚だった。
いつも半病人のように顔色がわるく、事務所の一番隅の机にうずくまるようにへばりついていた。
「息の合っていることだな」
わたしは精いっぱいの皮肉を口にした。
もちろん、妻と娘を取り替え合ったときのことである。
「同じ女を愛し合っていますので」
男のこたえに、わたしは絶句した。

彼が家族もろとも襲われたのは、先週のことだという。
彼の妻を最初に襲ったのは、いま目の前でわたしの妻を汚した男だった。
「あいつ、人妻が好みなんです。熟女の血はひと味違うというのが口ぐせで・・・
 もちろん家内を姦(や)られたときには、腹も立ったし悲しかったはずなのですが。
 いつの間にか記憶があいまいになってしまって、
 いまでは彼を家内の交際相手として受け容れています。
 気を利かせて座をはずしてやる時もありますが、
 わたしの目の前で見せつけたいみたいな願望があるらしく、そんなときには居合わせるようにしているんです。
 貴男も慣れれば、愉しめてしまいますよ」

まさか・・・
半信半疑のまなざしを向けると、男は白い歯をみせて笑った。
なんのてらいもない笑いだった。
妻や娘を汚されたわたしをあざ笑う嗤いではなかった。
むしろ、同じ経験をした連帯感を、わたしに対して感じているようだった。

ふと見ると、妻が腰を動かし始めていた。
正気を喪って、小娘みたいにはしゃぎながら、
「イヤですわ、主人のまえですわ・・・」
と、言葉では拒みながらも身体は受け容れはじめている。
その言葉すら――
淑女のたしなみとしてではなく、情夫をそそらせるために発していることが明らかだった。
わたしは思わず、妻の両肩を抑えつけていた。
「あ!」
わたしの振舞いに驚いた妻の目が、一瞬見開かれた。
けれども彼女の昂りは止まらなかった。
「イヤですわ、いけませんわ、あなた、いけないわよ・・・こんなこと・・・」
きちんとセットした髪を振り乱し、淑やかに腰にまとったロングスカートをふしだらにたくし上げ、
清楚に彩ったストッキングの脚を、下品な大またに開いて、
妻はどこまでも、堕ちていった。
わたしもどこまでも、堕ちていった。

目のまえで妻を犯したあいつの気持ちが、すこしだけ分かる。
ちく生、ひとの女房を愉しみやがって。
そう思いながらも、
ちく生、わたしよりも上手によがり狂わせやがって。
そんな思いも湧いてきて、
こんどはあいつと一緒に、だれかの家に忍び込んでみようか?
そんな気分にさえ、なってくる。
彼もまたきっと、かつて妻を襲われたときのことを思い出して、
自分が襲った家庭の世帯主のことを気遣いながら、その妻や娘を無遠慮にあしらっていくのだろう。
そしてわたしも、彼と同じ道を歩きはじめてしまうのだろう・・・


あとがき
衝動的にキーをたたいたら、珍しくバイオレンスなモノができあがってしまいました。
(^^ゞ
犯すほうは、犯されるほうの切なさを思いやり、
犯されるほうは、かつては彼もいまの自分と同じ立場だったことを思い出しながら、受難を受け容れていく。
しまいには、こんどは別のご家庭にお邪魔して、その家の妻や娘を並んで犯す。
うまく表現できないのですが、そんなイメージを描きたくてキーをたたきました。

女性の意思があまり表に現れていませんね。
ほんとうは、そこまで描き込まなければ、片手落ちというものです。反省。
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